AISASとは?WEBマーケティングに必要不可欠な消費行動を解説
2022年03月31日
AISASは消費者行動を理解する上で理解しておきたいフレームワークです。
消費者行動を理解することで、自社製品のプロモーション促進やカスタマージャーニーの作成に活用することができます。
本記事ではAISASモデルの基本と具体例、AISASの次のフレームワーク「Dual AISAS」を解説します。
AISASとは?
- AISASとは
- 消費行動プロセスを説明するモデルの一つで、Attention(認知・注意)、Interest(興味・関心)、Search(検索)、Action(行動)、Share(共有)の頭文字を取ったもの。株式会社電通が2004年に提唱した理論。
AISASが提唱される以前は、企業から消費者への一方通行の情報発信がされていましたが、インターネットの流通、SNSの活性化に伴い、企業と消費者との相互的なコミュニケーションが実現しました。
また、コミュニケーションの変化に応じ、マーケティングにおいても双方向のコミュニケーションを考慮した施策が必要となりました。
このような状況において生み出されたのがAISASという消費者行動プロセスのモデルです。
例えば、私たちが商品を購入する際、商品の口コミを調べてから実際に購入するというケースは増えています。
そして、商品購入後、商品を気に入れば商品ページに評価を記入したり、SNSを通じて「この商品が良かった」ということを他者に共有するといった流れがあります。
上記を抽象化してまとめると下記のようになり、この項目がそのままAISASモデルの項目となっています。
- Attention:商品やサービスを知る
- Interest:自身にとってベネフィットのある商品だと知る
- Search:ネットを通じて調べてみる
- Action:評判がよければ購入する
- Share:商品について周囲に共有する
企業は上記の消費プロセスを理解し、マーケティングへ活用することが必要となりました。
※AISAS®は、株式会社電通の登録商標です。
AISASは消費行動モデルの一つ
AISASは、SNSによる顧客と企業とのインタラクティブな情報交換の中で作成されたモデルですが、あくまでも消費行動モデルの一つでしかないことには留意しておく必要があります。
AISASモデルにおいては、アクティブな顧客が検索をし、購入することが消費行動プロセスの中に織り込まれていますが、「to Bビジネスにおいて担当者が稟議を上げる上で必要となる他製品との論理的な比較・検討」や「物が溢れる中で顧客に訴求するために必要となる、影響力や共感性」などは考慮されていません。
このため、顧客の消費行動をより細かく設定し、深く理解するためにはAISASモデル以外の消費行動モデルを検討することも必要です。
◆AISAS以外の消費行動モデル例
- AIDMA:インターネット普及前の購入モデル
- AMTUL:顧客のLTVに注目したモデル
- AIDEES:顧客のファン化を消費行動に加えたモデル
- AISCEAS:比較・検討段階を考慮したモデル
- AISA:ソーシャルメディア上の情報を重視したモデル
- VISAS:口コミを起点にしたモデル
- SIPS:共感を起点にしたモデル
- DECAX:消費者側の視点に立ったモデル
この中で、マーケティングの施策を検討する上でよく説明されるのが、汎用性の高いAIDMAとAISASです。両者の違いについては次で詳しく解説をします。
AIDMAからAISASへと変化した理由
- AIDMAとは
- 消費行動プロセスを説明するモデルの一つで、Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(行動)の頭文字を取ったもの。顧客の商品購入までのフェーズに焦点を当てたもの。
AIDMAは1924年に広告のスペシャリスト、サミュエル・ローランド・ホールが著書「Retail Advertising and Selling」で提唱した消費行動モデルで、AISASが提唱されるまでマーケティングの基本として使用されていました。
各項目を具体的に説明すると以下のようになります。
- Attention:広告、DM、訪問で商品を知る
- Interest:顧客が商品について興味をもつ
- Desire:顧客が商品を欲しいと思う
- Memory:商品を欲しいと思う気持ちが心に刻まれる
- Action:お店で商品を購入する
ADIMAはインターネットが普及していない時代の消費行動モデルのため、商品を強く欲しいと思った顧客が、その後店舗を訪れた際に商品を思い起こす必要があります。このため、顧客が商品を熱望し、その後商品を顧客の記憶に残す必要がありました。
AIDMAとAISASの違いは以下の3点です。
- 検索行動があるか
- 記憶に留めておく必要があるか
- 商品購入後までスポットを当てているか(シェアを行っているか)
インターネットの普及により、AIDMAが提唱された際には難しかった、顧客からの商品検索、検索してからのネットショッピングでの購入、商品購入後のレビュー投稿などが簡便になりました。
上記グラフのとおり、2001年のインターネット普及率46.3%に対し、AISASモデルが提唱された2004年には普及率66.0%となっており、インターネット利用者が増加していることがわかります。
このように、AIDMAからAISASへの変化は、消費者がインターネットを通じ検索をするようになったことが背景にあげられます。
ただし現在、全ての消費者行動をAISASモデルで考えるべきかと言われるとそうではありません。商品によっては、現在もAIDMAモデルは有用であると頭に留めておくとよいでしょう。
AISASモデルを例から理解する
AISASモデルを詳しく理解するために、ここでは「商品A」がAISASモデルを通じて世の中に浸透していく様子を説明していきます。なお、それぞれのプロセスにおいて、企業活動を最適化するためのポイントは以下のとおりです。
AISASプロセス | Attention | Interest | Search | Action | Share |
---|---|---|---|---|---|
ポイント | ターゲットを明確化し、他商品との差別化を図る | ターゲットの興味を引くキャッチコピー、ベネフィットを提供する | SEO、SEMを行う | 購入が容易にできるWEBサイトを構築する | 顧客満足度を向上させる |
Attention
Attentionは商品やサービスを知る段階です。現在、顧客が商品を認知するのはWEB広告やCM、新聞などの媒体となります。Attention→Interestとフェーズを移行させるためには、ターゲットを明確化し、他社商品との差別化を図ることが重要です。
<例>商品Aの場合
「商品A」のターゲットは20代のOL。予算の都合上マスマーケティングは難しいと判断したため、SNSの中でも20代女性の利用割合の高いインスタグラム広告を活用した。
Interest
Interestは顧客が自身にとってベネフィットのある商品だと認知する段階です。例え商品をCMやWEB広告で目にしたとしても、ターゲットの悩みを解決するベネフィットがなければ顧客の興味を引くことはできません。
顧客の興味を引くためには、以下を考える必要があります。
- の悩みを解決するコピーの検討
- 顧客の目をひくアイキャッチの採用
- 共感できるストーリー性
<例>商品Aの場合
商品Aが顧客の興味を引くために、想定されるターゲットが抱くインサイトに踏み込んだキャッチコピーを採用した。
Search
Searchは顧客が検索行動を実施する段階です。信頼できる口コミや商品情報を集めるために顧客は検索エンジン、SNSを使用します。商品の販売者は、SEO対策を実施する、あるいはSNS上での口コミを集めるなどの施策が必要です。
<例>商品Aの場合
商品Aのターゲット層は20代女性のOL。商品AのターゲットはSNSを通じて口コミを収集することがわかったため、SNSのアカウントを運用。SNS上で口コミを集めるための施策を打ち出した。
Action
Actionは購入の段階です。購入意欲があるのに、購入場所が見つからないといった顧客の離脱を防ぐために、商品販売者は消費者が容易に商品購入できるランディングページ、ホームページを用意する必要があります。
なお、見落としがちですが商品を購入するための決済方法まで最適化しておくと、Action段階の顧客の離脱を防ぐことができます。
<例>商品Aの場合
商品Aのターゲット層は、ネットで検索して商品購入先を探すことがわかった。このため、ランディングページを作成し、クレジットカード決済がすぐにできるユーザビリティの高いページを作成した。
Share
Shareは商品を購入した顧客が口コミを残すポイントです。当然ながら、口コミが増えるほど、顧客がSearch段階で得ることができる情報の幅が広がるため、商品への権威性は高まります。
口コミを増やすための施策としては、ある媒体で口コミを投稿してくれたら商品を2つプレゼント、などの企画が挙げられます。
<例>商品Aの場合
商品Aを購入したターゲットから口コミを獲得するために、商品のパッケージはSNS栄えしやすいものを心がけた。また、口コミ投稿をしてくれた方には、別途プレゼントを渡すことにした。
AISASはカスタマージャーニーの作成に活用できる
カスタマージャーニーとは顧客が商品を購入するための行動を可視化したものです。AIDMAやAISASは消費者行動をモデル化しているため、カスタマージャーニーと似てはいますが、全く同じものではありません。
その違いはターゲットの粒度の違いにあります。カスタマージャーニーが具体的なペルソナまで落とし込んだ消費者行動を「見える化」するのに対し、AISASはあくまでも抽象化した顧客の消費行動です。
このため、AIDMA、AISASを元にしたモデルで、カスタマージャーニーを作成することが一般的な活用の仕方となります。
上記は簡便なカスタマージャーニー例ですが、AISASモデルを元に、「認知段階」「感情段階」「行動段階」の3段階に分けて顧客とのタッチポイントを考えることで、どの部分に自社のリソースを割けばいいのかがわかるようになります。
AISASを活用する際の注意点
AISASはインターネット時代の顧客行動モデルです。このため、SNSを介した口コミの拡散(Share)が新たな顧客の検索活動に貢献します。
ここで注意が必要なのは、商品に対する悪いレビューです。
ターゲットを設定する現在のマーケティングにおいては、想定顧客から外れた顧客の商品購入も想定されるため、ネガティブな口コミが発生するのは仕方ありません。
しかし、顧客の悪い口コミを放置しておくと、検索者が商品に対してネガティブな感情を抱いたままとなるため、悪い口コミに対してレスポンスをするなどの対策をしておくようにしましょう。
AISASの活用事例
ここからはAISASが活用された事例について解説します。
カフェチェーン店の事例
あるカフェチェーンA社では、CMやインターネット広告を使用せずに顧客を獲得することに成功しています。AISASを活用することで、本来は広告が届かない層にまでアプローチができているのが要因です。
- A:SNSで友人がA社の飲み物を投稿する
- I:SNSの公式アカウント・ホームページ・店頭での試飲により顧客の興味をひく
- S:SNSのハッシュタグ#検索などを利用して顧客が新商品の評判を調べる
- A:A社店舗に行き飲み物を購入する
- S:飲み物を購入した顧客がSNSに商品をアップする
「映える」商品を開発するA社では、このようにAISASを活用することで、自動的に顧客が顧客を呼び込む仕組みづくりを創出しました。
音楽ユニットの事例
ある音楽ユニットAは「歌ってみた」という、自身の曲を他者が歌うことを許可することで共感(Share)の輪を広げ、認知度を向上させました。具体的に音楽ユニットAの認知活動をAISASに落とし込むと以下のようになります。
- A:Tik Tok、Youtubeを利用した拡散により認知度を向上させる
- I:「歌ってみた」でバズりたいと考える歌い手の注目を喚起する
- S:人気サブスクリプションサービスで検索する
- A:サブスクリプションサービス、Youtubeなどで容易に曲を聞くことができる
- S:「歌ってみた」でYoutube、Tik tokでシェアされる
認知度を向上させるためのタッチポイントをSNS媒体にすることで、費用をかけずに拡散に成功した事例です。
AISASの次の消費者行動「Dual AISAS」
- Dual AISASとは
- AISASモデルを「商品を買いたい人のAISAS」と「商品を広めたい人のAISAS」とに分けて、広まったはずのプロモーションが購買を生まない現象の理由を明確化したモデル。「広めたい」顧客と「買いたい」顧客との消費行動を分けた消費行動モデル。
AISASモデルで考えると、商品のプロモーションが促進し、認知度が高まるほどセールスへと結びつくはずですが、そうではない事例が発生しています。
その原因は、商品を購入したいのではなく、商品をコミュニケーションとしてシェアする層がいることです。例えば、面白い商品がプロモーションされた際、商品・サービスを利用しなくともSNS上で商品がバズることがあります。
これは、商品・サービスを一種のコミュニケーションツールとして活用する人がいることが原因です。こうした「商品を広めたい人(コミュニケーション心理層)」に着眼し、商品を買いたい人へと転換するActivateが必要だとDual Aisasでは説明されています。
具体的には、商品を実際に購入した人の使用体験などをコミュニケーション心理層へシェアする。既存顧客が購入した理由を明示するなどの対策が挙げられます。
まとめ
AISASはWEB時代の消費行動を示すモデルとして広く活用されています。
しかし、全ての商品販売にAISASが活用できるわけではなく、自社の商品の顧客層によってはAIDMAなどAISASモデル以外を活用する方が効果が出る可能性もあります。
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