【自主調査】日本のカーボンニュートラルの現状は?電動自動車の保有率は未だ2割以下

2023年05月19日

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カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする取り組みのことです。現在、日本を含む120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、達成に向けて取り組みが行われています。

この記事では、カーボンニュートラルへの取り組みの現状を、2023年1月に行われた電動自動車の普及率に関する調査の結果とともに解説します。結論から言えば、日本においてはカーボンニュートラルにむけて多岐にわたる取り組みを行っている一方で、不安要素や改善余地もあり、目標達成のための取り組みにはビジネスチャンスがあると思われます。

環境問題に対する関心がある方や、自社が排出する二酸化炭素の量を把握し減らしたい方、カーボンニュートラルなエネルギーや製品の普及の現状を知りたい方は、ぜひご覧ください。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする取り組み

2020年10月に、政府は将来の世代も安心して生活できる持続可能な社会を作るため、2050年までに温室効果ガスの排出をほぼゼロにする「カーボンニュートラル(ゼロエミッション)」を目指すことを宣言しました。

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引用:環境省脱炭素ポータル「カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を減らし、植林や森林管理などによって吸収量を増やすことで、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体としてゼロにする取り組みを意味します。

現在、日本を含む120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、2015年にパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として、以下に合意しました。

 

  • 世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(2℃目標)
  • 今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

 

カーボンニュートラルを目指す理由

気象庁の調査によると、2020年時点で、日本の平均気温は工業化以前(1850~1900年)の気温と比較して約1.5℃上昇しています。

image02_日本の年平均気温偏差.png

引用:気象庁「日本の年平均気温偏差(℃)

このまま温室効果ガスの排出が続けば、さらなる気温上昇が予想され、農業や林業、漁業、水資源、自然の生態系、自然災害、健康、産業や経済活動など多方面で影響が出る可能性があります。

カーボンニュートラルを目指し、企業や国家が二酸化炭素排出の抑制や吸収に取り組むことで、地球温暖化を食い止め、環境への影響を最小限に抑える狙いがあります。具体的には、再生可能エネルギーの利用や省エネルギーへの取り組み、森林や海洋などの環境に対する保全や再生などが求められています。

カーボンニュートラルへの取り組みの現状

カーボンニュートラルの実現に向けて、多岐にわたる取り組みが推進されています。環境省の「2020年度における地球温暖化対策計画の進捗状況」によれば、2030年度の削減率目標がマイナス46%のところ、2020年度の削減率はマイナス22%でした。ちなみに温室効果ガスの排出量で最も多かったのは、第1位で産業、第2位で運輸、第3位で業務その他であることも明らかになりました。

image03_2030年度目標に向けた進捗.png

引用:環境省脱炭素ポータル「2020年度における地球温暖化対策計画の進捗状況

2020年度の実績は、新型コロナウィルスの影響で全体的に良好でしたが、アフターコロナにおいては経済復活により削減率が停滞する可能性もあり、さらなる施策が必要となると想定されます。

運輸部門におけるカーボンニュートラルの進捗には課題

例えば、運輸部門において、環境省は「Let’s ゼロドラ!」という取り組みを行っています。

ゼロドラとは「ゼロカーボン・ドライブ」の略で、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)などの環境にやさしい車を活用したドライブのことで、カーボンニュートラル推進のための重要施策の1つです。

image04_Let_s ゼロドラ!.png

引用:環境省「Let’s ゼロドラ!

具体的には、以下のような支援を行っています。

 

  • 再生可能エネルギー100%電力の使用に挑戦する個人・地方公共団体・中小企業等を対象に、電動自動車等の購入時に最大80万円の補助金を支給
  • 「ゼロカーボン・パーク」という、電気自動車(EV)に対応している10の国立公園と2つの国民公園で、駐車料金を無料化(一部割引)

 

しかし、取り組みに反して、電動自動車の導入は好調とはいえません。

GMO Researchが2023年1月に759名を対象として実施した調査によれば、現在の電動自動車の保有率は2割以下であり、バイクについても同様の傾向が見られました。また車を購入する予定の約半数が化石燃料車を選択するなど、電動自動車の購入意向は弱いことが明らかになっています。

※ここでの電動自動車とは、「電気自動車/燃料電池車」と「ハイブリッド車/プラグインハイブリッド車」の数値を合算した保有率を指す

なぜ導入が進まないのか調査結果を見てみると、2つの課題が浮かび上がりました。

 

    1. ガソリン車との価格差の是正
    2. 充電の簡便性の向上

 

カーボンニュートラルのような世界規模で求められる取り組みにおいても、消費者のインサイトを正しく捉え、求められる商品・サービスを打ち出してゆくことの重要性は変わりません。アフターコロナで見込まれる経済復活といった課題を越えて目標を達成するために、電動車の導入を阻む課題やニーズをより詳しく見てみましょう。

「2023年1月 日本のカーボンニュートラル最新状況」調査結果

image05_2023年1月|日本のカーボンニュートラル最新状況.png

◆調査概要

詳細:https://gmo-research.ai/download_file/3009/0

調査方法:Z.com Engagement Labでオンラインアンケート

調査期間:2023年1月10日~1月12日

有効回答:759件

調査対象:16歳~60歳の日本国民

自動車・バイクの保有・購入予定の実態|脱化石燃料車の動きは弱い

2023年現在の自動車保有者の8割以上は、ガソリンやディーゼルなどの化石燃料車を保有しており、ハイブリッド/プラグインハイブリッド車の 保有率は16%、電気/燃料電池車の保有率は2%に過ぎません。

image06_現在、保有している車のタイプはどれですか.png

また、将来、購入を計画している車のタイプは、ハイブリッド/プラグインハイブリッド車が最も多く、車の購入予定者の63%が選択、また電気/燃料電池車も2割を超えているものの、一方で、化石燃料車の購入を予定している人も49%と全体のほぼ半数にのぼり、脱化石燃料車の動きは弱いといえます。

image07_購入予定の車のタイプはどれですか.png

バイクも自動車同様、ガソリン車が主流で、電動車保有、電動車購入予定のいずれもが自動車よりも低い水準であることが明らかになっています。

image08_バイクの将来の購入タイプ.png

バイクの将来の購入タイプにおいても、化石燃料車を想定している人の割合が自動車よりも高く、脱化石燃料化がより困難な状況といえます。バイクの方が自動車よりも脱化石燃料化が困難な理由として、自動車購入者と比べてバイク購入者は、燃費や消費電力よりも外見、デザインを重視する傾向にある点が考えられます。

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電動車を購入しない理由|コストパフォーマンス・簡便性

電動車を購入しない理由として最も多くの人が挙げた点は、「高価格」「充電が不便」で、それぞれ4割以上の人がデメリットとして捉えています。次いで、「バッテリー切れや航続距離に対する不安」「高い維持管理費用」が続きました。

image10_電動バイクを購入しなかった、検討しなかった理由.png

電動自動車購入を阻む2つの課題

これらの調査結果から、電動自動車購入を推進するためには以下の2つの課題の解消が求められます。

 

    1. ガソリン車との価格差の是正
    2. 充電の簡便性の向上

 

1.ガソリン車との価格差の是正

電動車に求めることとして「ガソリン代よりも安価なEVの充電費用」、「EVのコストパフォーマンスの良さ」が上位に挙がっていることから、本体価格や維持管理費用が購入に対する一番大きなハードルとなっていることが明らかです。

Q.自動車を購入する際、次の各要素は、電気自動車(EV)を購入する意欲をどの程度高めると思いますか?

image11_ガソリン車との価格差の是正1.png

「EVバイクの充電費用」の低額化や「コストパフォーマンスの良さ」も半数以上のバイク購入予定者が期待する内容となっており、価格面での改善が効果のある普及策と考えられます。

Q.バイクを買うとき、次の各要素は、電動バイクを購入する意欲をどの程度高めると思いますか?

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国や自治体で、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金制度や税優遇制度が設けられてはいるものの、購入に向けた動機付けとしては充分とはいえません。電動車購入時のガソリン車との車両価格差を埋め、維持管理費用の低額化をもたらすことが求められます。

2.充電の簡便性の向上

「家庭や充電スタンドでのバッテリー充電や交換の簡便性」を高めることも、購入意欲を高める要素の1つです。

Q.自動車を購入する際、次の各要素は、電気自動車(EV)を購入する意欲をどの程度高めると思いますか?(再掲)

image13_充電の簡便性の向上.png

バッテリーや充電スタンドの性能改善も必要ながら、各施設や駐車場に充電スタンドを増やしたり使いやすくすることも求められています。国や自治体だけでなく、自動車産業に関わる企業や、駐車場の経営者などでも参画のチャンスがあるでしょう。

まとめ|電動自動車推進は経済的なメリットになる

今後より一層、世界中で再生可能エネルギーの利用が拡大したり、カーボンニュートラルの認証制度が普及したりすることによって、温室効果ガスの排出量の削減が国家や企業にとって経済的なメリットにつながると予想されます。

特に自動車製造や運輸、施設経営などに関わる方にとっては、消費者のインサイトを正しく捉えながら電動自動車に向けた施策も取り入れていくことで、カーボンニュートラルを実現しながらビジネスチャンスにつなげることも可能でしょう。

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よくある質問

Q1.カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量を減らし、植林や森林管理などによって吸収量を増やすことで、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体としてゼロにする取り組みのことです。
現在、日本を含む120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて取り組みを推進しています。

詳しくは「カーボンニュートラルとは」の章をご覧ください。
Q2.電動自動車の普及は進んでいる?
環境省による補助金制度などの取り組みに反して、電動自動車の導入は好調とはいえません。
GMO Researchが2023年1月に759名に実施した調査によれば、現在の電動自動車の保有率は2割以下であり、バイクについても同様の傾向が見られました。また車を購入する予定の約半数が化石燃料車を選択するなど、電動自動車の購入意向は弱いことが明らかになっています。

詳しくは「運輸部門におけるカーボンニュートラルの進捗には課題」の章をご覧ください。
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