カスタマーサクセスとは?成功ポイントや具体的な流れ、実践事例を解説

2022年04月18日

customer success

サブスクリプションモデルが主流になり、顧客の満足度を高め継続利用を促す重要性が増しています。

そこで注目されているのが、カスタマーサクセスという概念です。

カスタマーサクセスとは、自社商品やサービスを導入している顧客の成功につながるよう、積極的に顧客に働きかけ、支援を行います。

この記事ではカスタマーサクセスの意味や成功のポイント、具体的な流れなどを解説します。

カスタマーサクセスとは

カスタマーサクセスとは、積極的に顧客に働きかけ、顧客の成功を設計・支援する考え方のことです。

こうした考えをもとに顧客へ働きかけを牽引して行う、カスタマーサクセス部門が多くの企業で設置されています。

カスタマーサクセスが注目される背景には、SaaS事業を筆頭に、さまざまな事業においてサブスクリプションモデルが普及していることが関係しています。

サブスクリプションモデルが普及する前は、顧客が商品・サービスを所有する買い切りモデルが一般的でした。両者の違いは以下の通りです。

◆サブスクリプションモデルと買い切りモデルの違い

  サブスクリプションモデル 買い切りモデル
特徴 商品を「利用」する
消費者は代金を支払っている限り、サービスを利用できる
商品を「所有」する
購入した商品は消費者のものになる
消費者の視点
  • 継続的な課金が必要
  • 一回の課金は少額
  • 簡単に解約できる
  • 購入するたびに課金を行う
  • 一回の課金は高額

買い切りモデルは初回のみ支払いが発生するため、売上は販売数に比例しており、販売数を上げる施策にコミットすれば十分でした。

一方のサブスクリプションモデルは、利用期間が消費者に委ねられている上に解約が簡単です。

おまけに商品やサービスの選択肢が増えており、数多あるサービスの中から自社製品の継続利用や追加購入を促すには、機能面の差別化だけでなく「UX(*)の向上」が必要です。

このようにサブスクリプションモデルで継続的に売上を上げるには、新規顧客獲得に加え、既存顧客へ継続的に価値提供を行うことが必須となりました。

したがって顧客と継続的に良好な関係を構築する必要があり、顧客の成功を支援するカスタマーサクセスに注目が高まっています。

カスタマーサクセスでは、ユーザーの声に耳を傾け目標達成に必要なサポートを積極的に実施し、UX向上やサービス継続利用を促します。

(*)UX(ユーザーエクスペリエンス)・・・商品やサービス等を利用し、ユーザーが得られる体験のこと。

カスタマーサポートとの違い

カスタマーサクセスは顧客の成功を第一の目的に掲げる概念であり、具体的な取り組みを行うカスタマーサクセス部門を設置する企業も増えています。

カスタマーサクセス部門は、時にカスタマーサポートと混同されますが、両者は以下のような点で根本的な違いがあります。

◆カスタマーサポートとの違い

  カスタマーサクセス カスタマーサポート
目的 顧客の目標達成 顧客の問題解決
顧客への姿勢 能動的な姿勢
顧客の目標達成に必要な内容を積極的に提案する
受動的な姿勢
顧客からの問い合わせ内容をもとにサポートする
必要なスキル
  • ヒアリングスキル
  • 顧客の顕在、潜在ニーズを汲み取るスキル
  • 顧客の問い合わせ内容を理解し適切に処理するスキル
顧客と関わるタイミング 継続的 断続的
成功可否の判断指標
  • 解約率の低下
  • 維持率の上昇
  • アップセル、クロスセルの金額
  • 受電率
  • 電話応答率
  • 問い合わせ数
  • 問題解決数

カスタマーサポートは、顧客の問い合わせを起点として、顧客の疑問点や課題を把握してから課題解決に取り組みます。顧客がすでに認知している悩みやニーズに対し、適切な対応力や自社商品知識が求められます。

一方のカスタマーサクセスは、担当者が顧客に必要な情報を先回りして積極的に提供するなど積極的に働きかけ、提供し、顧客の成功をサポートします。

したがってカスタマーサクセスには、顧客の潜在ニーズを汲み取り、期待を上回るサポートの実施が求められています。

カスタマーサクセスの重要キーワード

カスタマーサクセスの概要を理解し効果的に運用するために、関係キーワードを把握しましょう。今回は以下3つのキーワードについて紹介します。

  • オンボーディング
  • LTV
  • タッチモデル

オンボーディング

オンボーディングとは、顧客が自社サービスを理解し定着利用するまでの期間を指します。

オンボーディング段階では導入時の疑問点やニーズを把握して、顧客の定着利用を促します。

顧客がサービスを導入しても、初期段階で疑問点を解消しきれないと、使い勝手に満足できず長期利用が見込めません。

そのため、早期離脱を防止し顧客の期待値を高めたうえで本格的なサービス利用まで促すには、オンボーディング段階における顧客との関わりが重要とされています。

LTV

LTV(ライフ・タイム・バリュー)とは「顧客生涯価値」と呼ばれ、顧客が自社に対して生涯でもたらす利益を表します。

一般的に新規顧客獲得は、既存顧客よりもコストがかかるため、既存顧客との良好な関係構築は継続的にビジネスを成功させるために必要不可欠です。LTVが高ければ、既存顧客のリピート率が高いといえます。

顧客の成功に寄与するためカスタマーサクセスを実践することで、満足度を高められれば、サービス継続可能性が高くなりLTVの増大が見込めます。

そのため既存顧客との関係性を測る指標でもあるLTVは、カスタマーサクセスを考える上で重要なキーワードになります。

タッチモデル

タッチモデルとは、将来的に期待できるLTVごとで、顧客を4つのグループに分類することを指します。

◆タッチモデルの分類

ハイタッチ
期待できるLTVが最も大きい顧客層。
「利用期間が長い」「高額プランを契約している」などの顧客が該当する。
大口顧客であるため、「個別定期面談」「個別コンサルティング」「顧客の要望に合わせた特別カスタマイズ」など手厚い支援が必要。
ロータッチ
ハイタッチよりも数が多く、テックタッチよりも数が少ない中間の顧客層。
「集団勉強会」「ウェブセミナーの開催」など、集団でまとめた支援が有効。
テックタッチ
最も数が多い顧客層。
契約直後や基本プランのみ契約している顧客などが該当する。
「メルマガで利用方法の提示」「チュートリアル動画の配信」など、テクノロジーを駆使して社内リソースを割かない支援が必要。
コミュニティタッチ
顧客のLTVにかかわらず、ユーザー同士が交流できるコミュニティ運営を行い支援する。
ユーザー同士で疑問点を解決したり成功事例を共有できたりするため、企業が支援に割くリソースを軽減できる。

カスタマーサクセスは顧客の成功を支援することから、顧客の状況を適切に把握することが必要不可欠です。

そのため各タッチモデルをもとに顧客を分類し、カスタマーサクセスを実施します。

カスタマーサクセスを成功させるポイント

カスタマーサクセスを成功させるには、以下のポイントを意識することが重要です。

  • 顧客がサービスを十分に活用できているかをチェックする
  • 自社サービスのターゲット顧客へ提案する
  • 顧客の声を積極的に集めて改善に役立てる
  • カスタマーサクセスの重要性を全社で認識する

顧客がサービスを十分に活用できているかをチェックする

自社サービスに高度な機能が備わっていても、顧客が機能を理解できず適切に活用できていなければ、ユーザーの目標は達成されず満足度も向上しません。

したがって継続利用を促すためには「顧客がサービスの機能を理解し目標達成に向けて十分に活用できる」環境整備が重要です。

具体的には顧客の利用状況と課題を照らし合わせ「機能を活用した解決方法」「追加プランの提案」などの対応実施が有効です。

自社サービスのターゲット顧客へ提案する

カスタマーサクセスは顧客の成功を支援する役割を担いますが、自社ターゲット外の顧客がサービスを導入しても、目標実現につながらない可能性が高いです。

目先の利益を優先して強引な導入を進めると、本格的な利用開始後にミスマッチが発生し、クレームや早期解約、悪評浸透につながる恐れがあります。

顧客の状況を適切に把握し、自社が最大限支援できる顧客かを見極めることが重要です。

顧客の声を積極的に集めて改善に役立てる

カスタマーサクセスを継続的に成功させるには、顧客からヒアリングした要望や目標を適切に商品やサービスへ反映させることが欠かせません。

顧客の要望を踏まえた商品・サービスへアップデートすることで、顧客の目標達成をサポートできる可能性が高まり、ユーザー満足度の向上も期待できます。

営業・カスタマーサポート・開発などの各部門に寄せられた顧客の声をスムーズに吸収して、製品・サービス改善に役立てましょう。

カスタマーサクセスの重要性を全社で認識する

カスタマーサクセスは、目標達成支援を通じた価値提供により顧客満足度を高め、自社の利益向上へつなげる重要な理念です。

カスタマーサクセスを単なる部署名ではなく、社内の行動指針とすることで、顧客への価値提供を第一に考える文化の浸透が期待できます。

そのためには全社でカスタマーサクセスの重要性を浸透させ、営業・開発・カスタマーサポートなど多くの部署と連携し、顧客の要望実現に必要なアクションを実行する環境を構築しましょう。

◆全社での協力例

  • 商談につなげる見込み客の定義について営業部門とすり合わせる
  • カスタマーサポートが吸い上げた問い合わせ内容を共有する
  • 顧客からの要望を丁寧に開発部門へ伝えサービス改善を実施する

カスタマーサクセスの具体的な流れ

カスタマーサクセスは以下の流れで取り組みます。

カスタマーサクセス

 

1.オンボーディング

まずはオンボーディング支援によって、顧客が自社サービスをスムーズに利用開始できるよう、顧客の目標や利用目的を踏まえながらサポートします。

製品やサービスの利用当初は、機能面で疑問点が浮かぶことが多いため、顧客がサービスの価値を実感し本格的な利用を開始するまでは、初期段階で丁寧なサポートを実施することが重要です。

◆具体的な支援策例

  • 顧客先での説明会開催(オンライン・オフライン問わず)
  • 利用方法を記したマニュアルの配布
  • ユーザーを交えた勉強会の開催
  • チュートリアル動画の配布

2.導入支援

オンボーディングが完了し本格的に利用開始した顧客に対しては、継続利用を促す導入支援を実施します。

顧客がサービスを利用し始めたタイミングで感じた疑問点を定期的にチェックし、操作レクチャーや改善提案などを実施することで、顧客の満足度を高め、継続利用を促します。

◆継続利用を促す手段例

  • メールでのヒアリング
  • オンラインや直接訪問によるヒアリング
  • アプリに記録されているサービスログイン頻度や利用状況の確認
  • 成功事例の共有
  • 目標達成までの具体的な活用計画作成

3.本格的な活用促進支援

導入支援の完了後、サービス利用が定着し始めた顧客に追加サポートを実施して、目標達成までのスピードを加速させます。

追加支援によってサービス活用度を高め、顧客満足度の向上を狙い、契約更新につなげます。

◆活用促進支援例

  • ユーザー同士で交流できるコミュニティの運営
  • 顧客の目標達成度のヒアリングおよび進捗に応じた改善提案
  • 活用度の確認

4.契約更新

顧客とのコミュニケーションを通じてサービス活用度や現状の満足度をヒアリングし、柔軟な提案を行うことで契約更新を促します。

サブスクリプションモデルにおいて、契約更新は自社の利益に直結する重要事項です。

顧客に契約更新を促すには、更新時期だけでなく、日頃から定期的なコミュニケーションを取り、信頼関係の構築を図ることが大切です。

5.さらなる利益創出に向けた施策の実施

契約更新を行なった顧客はロイヤリティが高い顧客(=ファン化した顧客)と考えられます。

こうしたロイヤリティが高い顧客に対しては、さらなるロイヤリティ向上を図るために、アップセル・クロスセルの実施が有効です。

アップセル
より高額なプランの契約を促すことで自社の売り上げを伸ばす手法。
クロスセル
既存の契約がさらに便利に使えるよう、追加サービスの契約を促す手法。

アップセル・クロスセルでは、顧客の目標達成に必要な追加サービスの契約を促します。

したがってアップセル・クロスセルにおいて顧客のニーズに合致しないサービスを追加提案すると、むしろ満足度やロイヤリティ低下を招く恐れがあります。

カスタマーサクセスの理念を念頭に置き、、顧客の成功に必要なアップセル・クロスセルを提案しましょう。

6.安定期

安定期では、すでに顧客に対し複数回契約更新やアップセル・クロスセルを実行している状態です。

そのため安定期まで関係が構築できた顧客は、サービスへの満足度が高く信頼関係が構築できているといえ、今後も長期利用が見込めます。

さらに良好な関係を構築するために、「ユーザー会での登壇を依頼する」など、ロイヤルカスタマーとして自社サービスのPR協力依頼を依頼するのも良いでしょう。

カスタマーサクセスの実践事例

では実際にカスタマーサクセスが企業でどのように実践されているのか、以下の2つの視点から事例を紹介します。

  • 顧客へ価値提供を行なった事例(名刺管理アプリ)
  • 自社内にカスタマーサクセスの文化を浸透させた事例(フリマアプリ)

顧客へ価値提供を行なった事例(名刺管理アプリ)

法人・個人向け名刺管理アプリを運営するA社は、2007年の創業当初からサブスクリプションモデルを採用し、2012年に国内で初めて「カスタマーサクセス部門」を設立した、日本におけるカスタマーサクセス実践の代表的な企業の一つです。

サービス提供当初はクラウド上での名刺管理が珍しく、導入メリットの共有に難しさを感じていました。そこでA社は、まず「製品価値の実感」を促すために、オンボーディング支援から取り組みを開始しました。

オンボーディング支援が功を奏しユーザー数が増加し、今度は利用開始後の本格的なサポートの重要性が課題となりました。

そのため2018年に世界的に著名なカスタマーサクセス運用のソフトウェアを導入。

ソフトウェアを活用して顧客データを分析することで、各ユーザーに合わせた適切な提案がより行いやすくなり、顧客満足度を高めていきました。

自社内にカスタマーサクセスの文化を浸透させた事例(フリマアプリ)

月間ユーザー数2,000万人を誇るフリマアプリを運営するB社では、カスタマーサクセスの文化を社内に浸透させるため、専用チームを設置しています。

専用チームは「ユーザーの代弁者」という使命のもと、「ユーザー視点での行動を自然と行う社内文化」の浸透を目的として、以下のような活動を行なっています。

  • 社内カフェにユーザーの声を掲示
  • 社内報の作成
  • プロダクトチームへ定量・定性データの共有
  • 広報チームと連携し、UX向上コンテンツの企画

上記のようにユーザーニーズを起点として、さまざまなサービスや仕組みを整える環境を構築し、社内にカスタマーサクセスの浸透を図っています。

まとめ

カスタマーサクセスは、顧客の目標達成を積極的にサポートする役割を担います。

サブスクリプションモデルが主流となる中では、サービス購入後に顧客へサポートを提供し、満足度を高め継続率を向上できるかが重要です。

自社のリソースを見極め顧客層に応じた支援を実施し、多くのユーザーの価値を提供できるよう意識して運用しましょう。

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