デプスインタビューについて│特徴や進め方、メリットやデメリットを知って市場調査に役立てよう!
2021年08月26日
企業活動に役立つ市場調査。しかし、通常のアンケート調査では「どんな人がどんな傾向がある」といったことは分析することはできても、「なぜそちらではなくこちらを選んだのか?」「なぜそんな行動をとったのか?」といった深い理由や考えを聞き出すことは出来ません。
消費者の行動の理由や考えを聞き出すなら、デプスインタビューがおすすめです。
デプスインタビューは1対1の面談式でじっくり意見を聞き取るので、テーマを選ばずに消費者の深層心理に迫ることができます。
この記事では、デプスインタビューとは何なのか、その特徴やメリット・デメリット、進め方を紹介します。また、デプスインタビューが有効な場面についても解説していますので、どの方法で市場調査をするか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
デプスインタビューとは
デプスインタビューは、調査対象者とインタビュアーが1対1で対面し、60〜90分と比較的長い時間をかけて意見を聞き取る代表的な定性調査の方法です。
DI(Depth Interview)と略されたり、1on1インタビューやインデプスインタビュー、パーソナルインタビューと呼ばれたりもします。
デプスインタビューの「デプス」とは「深さ」という意味で、その名の通り調査対象者と深く関わる定性調査であることを示しています。
デプスインタビューの最中に、インタビュアーとは別に観察者と呼ばれる第三者が別室で調査対象者の表情や行動、雰囲気などを観察をして、インタビューを補うこともあります。
定量調査と定性調査の違い
よく実施されるインターネットのアンケートのような定量調査ではあらかじめ回答の選択肢が絞られているため、数字で市場を把握するのに向いています。
デプスインタビューのような定性調査では、数人の対象者から言葉で聞き取り調査を行うため、商品開発や販売、商品の改善のヒントを得たりマーケティング戦略の仮説を立てたりするのに適しています。
ちなみに、デプスインタビュー単独の調査も可能ですが、案件によって定性調査のホームビジット調査やエスノグラフィー調査、定量調査のCLT調査と組み合わせることで、より多角的に情報を収集できます。
グループインタビュー・エスノグラフィー調査との違い
デプスインタビューは、グループインタビューやエスノグラフィー調査といった他の定性調査と何の違いがあるのでしょうか?
グループインタビューとは、調査対象者4〜8人程度で1つのグループを作り、調査対象内容について座談会のように自由に発言してもらうことで、消費者の考えや本音を収集する調査方法の一つです。
エスノグラフィー調査とは、調査対象者の日常的な行動をできるかぎり非侵襲的に観察することで消費者の心理を調査する方法です。
グループインタビューもエスノグラフィー調査も、消費者のより深い心情を理解するという点はデプスインタビューと同じですが、手法の性質上、どういった目的・テーマに合っているのかが違います。
デプスインタビュー | グループインタビュー | エスノグラフィー調査 | |
---|---|---|---|
調査対象者数 | 1人 | 4〜8人 | 1人 |
実施時間 | 60〜90分 | 120分 | 90〜120分 |
目的 | 消費者の意思決定の過程を理解する | 商品やサービスに対する評価とその根拠を理解する | 意思決定に至るまでの潜在意識を発見する |
最適なテーマ | 人には聞きづらいデリケートなテーマ 例:病気や健康、お金など |
複数名で会話が弾むテーマ 例:すでに販売されている商品など |
消費者のニーズをあらかじめ把握したいテーマ 例:新商品の開発など |
グループインタビューは、既存の商品やマーケティング施策の改善、商品開発のための消費者の意識調査に適している反面、人には聞きづらいテーマや複雑なテーマには向いていません。
エスノグラフィー調査は、調査対象者が言語化していない商品・サービスのニーズや選ばれ方を調査するのに向いています。そのため、商品開発には最適な方法ですが、商品の改善に向いているとは言えません。
デプスインタビューは、既存の商品がある状態で消費者のニーズを把握することができるので、開発途中の商品やその改善策も調査できます。消費者の深層心理からニーズを把握し、商品開発にも役立てられるので、幅広い場面で活用できる調査方法と言えます。
定性調査ではインタビュアーの役割が大切
調査対象者の本音が出るかどうかはインタビュアーの力量にかかっています。そのためいずれの定性調査においてもインタビュアーの役割はとても大切と言えるでしょう。
調査対象者の本音を探るためには、調査対象者に負担がかかりすぎないように配慮しながら、対象商品についての会話を繰り返す必要があります。
このとき、インタビュアーはオープンクエスチョンのテクニックを身につけている必要があります。
オープンクエスチョンとは開かれた質問という意味で、「はい」や「いいえ」では答えられない質問のことです。例えば、「どう思うか?」「なぜそう思ったのか?」などがあります。
具体的な理由を聞く質問を繰り返すことで、調査対象者の本音を引き出していくのです。
デプスインタビューが有効な場面
消費者の深層心理を知りたいからと言って、闇雲にデプスインタビューをしていい訳ではありません。デプスインタビューが有効であるかどうかは、扱う商品や場面によって違うからです。
案件によって向き不向きはありますが、主に以下のような場面でデプスインタビューが有効だと言えるでしょう。
◆デプスインタビューが有効な場面
- 対象商品やマーケティング施策の改善
- 健康や病気、お金など人に聞きづらい商品の開発及び改善
- ペルソナ、ラダリング、ジャーニーマップの作成
デプスインタビューでは面談中に対象商品を手に取ってもらい、それに対する意見やエピソード、独自の使い方など根掘り葉掘り聞くことで商品改善のためのヒントを得ることもます。
また、実施したマーケティング戦略が有効であったのかどうかを検証したり、うまく機能していないときには何を改善すべきなのかヒントを得たりと、マーケティング施策の改善にも役立ちます。
病気や健康、お金など人には聞きづらいデリケートな問題に直結するような商品開発や改善においても、デプスインタビューが有効です。
ペルソナやラダリング、ジャーニーマップは、新商品の開発や消費者に響く広告の作成に役立てたり、既存商品のどこに改善点があるのか検証したりできるのですが、デプスインタビューはこれらを作成するのにも適しています。
◆GMOリサーチ&AIのデプスインタビュー事例
化粧品のインタビュー
- 調査方法スクリーニング+インタビュー
- 費用60,000円(税別)
- 実施人数3人
- 時間1人あたり30分
- スクリーニング設問数9問
疾患のインタビュー
- 調査方法スクリーニング+インタビュー
- 費用110,000円(税別)
- 実施人数4人
- 時間1人あたり60分
- スクリーニング設問数9問
家電のインタビュー
- 調査方法スクリーニング+インタビュー
- 費用90,000円(税別)
- 実施人数3人
- 時間1人あたり60分
- スクリーニング設問数9問
デプスインタビューの5つのメリット
市場調査においてデプスインタビューを行うメリットは、主に以下の5つがあります。
- 本人も気付いていなかった心情がわかる
- 意思決定の過程がわかる
- お金や健康などデリケートなテーマも取り扱える
- 調査対象者の本音を聞きやすい
- さまざまな場所で調査できる
メリット1:本人も気付いていなかった考えや心情がわかる
デプスインタビューでは60〜90分ほどのの長い時間をかけて、1対1で調査対象者の考えや心情を読み解いていきます。
対象商品に関する意見だけでなく、それにまつわるエピソードや体験談、自慢話などを聞くことで、対象商品のニーズやなぜそれを必要としているのか、何に不満を抱いているのかなど、商品開発やマーケティング施策を改善するための多くのヒントを得られます。
個人の意見を深く掘り下げながら話を進めるので、本人も気付いていない考えや心情も明らかになりやすいのです。
メリット2:意思決定の過程がわかる
人間はさまざまな意思決定をしながら生きています。
ある商品を購入することは一見単純な行動に見えますが、実際は購入に至るまで多くのことを考えています。例えば商品購入までに、以下のような意思決定が行われていると考えられるでしょう。
◆例:洗剤Aを購入するまでの意思決定
- 洗剤Aのデザインが素敵だな
- なんかいい匂いしそうだな
- 家にまだ洗剤Bがあったしな
- 洗剤Bより値段もちょっと高いな
- でもやっぱり魅力的だな
- 家に洗剤置く場所あったかな
- 洗面台の下にスペースがあったな
- よし、洗剤Aを買って試してみよう
このように一つの商品を購入するだけでも、人間は多くのことを考えています。デプスインタビューは長時間かけて話を掘り下げて行くので、上記のような意思決定の過程まで探ることができるのです。
メリット3:お金や健康などデリケートなテーマも取り扱える
定性調査の代表といえばグループインタビューですが、グループインタビューでは一室に複数人が集まって話し合うので、例えば、病気や健康のこと、貯蓄や金融資産、個人向けローンなどのお金の事情といったデリケートな問題は取り扱いにくいものです。
デプスインタビューは1対1で聞き取りを行うじっくり話し合うので、人には話しづらいデリケートな問題に向いていも取り扱うことが出来ます。
メリット4:調査対象者の本音を聞きやすい
デプスインタビューは1対1で話し合うので、調査対象者の本音を聞きやすい調査方法です。
同じ定性調査のグループインタビューの場合、6人ほどが一室に集まって話し合うためお互いに刺激されて今までにないようなアイデアが生まれる可能性があります。しかし、中には遠慮して自分の意見を言えない人もいます。周りの人の影響を受けて本人も気付かないうちに意見がブレてしまい、本音が明らかにならない人もいます。
デプスインタビューは他の人の影響を受けない上に周りの目を気にせず自由に発言できるため、本音が出やすいのです。
メリット5:臨機応変に対応できる
デプスインタビューは調査対象者とインタビュアーが1対1で話し合うので、その時の状況に合わせて臨機応変に対応できます。
例えば、デプスインタビューを行う当日に、会場まで向かう道中で事故にあったり遅刻したりしても、調査対象者が一人なのですぐに対応できるでしょう。
また、調査員が調査対象者の家庭を訪問したりオンラインでインタビューをしたりすることで、上述したような問題は避けられます。
家庭訪問やオンラインで行う場合、会場費や調査対象者の交通費も支払わなくていいので、コスト削減にも繋がります。
デプスインタビューの3つのデメリット
デプスインタビューには上述したようなメリットがありますが、その反面デメリットもあります。デプスインタビューのデメリットは、以下の3つです。
- 偏った意見になることもある
- 必要な情報を得られないこともある
- 時間・労力・費用がかかる
デメリット1:偏った意見になることもある
デプスインタビューはあくまで1対1の面談式で調査するので、大多数の消費者の考えとは全く違う偏った意見になることもあります。
複数人で行うグループインタビューの場合、話が膨らむことで一人では出せないようなアイデアが出たり元々持っていた意見が変わったりしますが、デプスインタビューの場合、その可能性は低いでしょう。
デプスインタビューで得られる情報はあくまで調査対象者の個人の考えに過ぎず、多くの消費者のニーズを代表するものではないというこことは念頭に置く必要があります。
デメリット2:必要な情報を得られないこともある
デプスインタビューでは、毎回必要な情報を得られるわけではありません。
例えば、対象者が考えすぎることによって意見が混乱することがあります。また、調査対象者によっては考えが発展せず、黙り込んでしまうこともあります。
インタビュアーのスキル不足によって調査対象者の本音を引き出せないこともあります。特にテーマがデリケートだったり複雑であるほど本音を引き出すのは難しいでしょう。
デプスインタビューを行う際は、自分の意見をはっきり述べられる調査対象者や、人の意見を引き出すことが上手なインタビュアーを選定する必要があります。
デメリット3:時間・労力・費用がかかる
デプスインタビューは一般的には1人あたり60〜90分かけて面談しますが、長いときには120〜150分もの時間をかけてインタビューすることもあります。
1人あたり90分としても到底一日で終えることはできません。その分多くの時間を要する上に、会場費※も高くなります。(※実際に対面して行う場合)
さらに調査対象者1人から得られる膨大な情報を分析するには、多くの時間と調査員の労力が必要です。
デプスインタビューを行う際は、他の定性調査よりも時間も労力も費用もかかるということを念頭に置いた上で、事前に余裕を持ってスケジュールを立てるなど、対策を立てる必要があるでしょう。
デプスインタビューの進め方
デプスインタビューを進めるのに多くの時間を要する上に、得られる情報が膨大で分析にも時間がかかります。そのため、余裕のあるスケジュールを立てる必要があります。
しかし、デプスインタビューを始めるまでにどのような準備をするのか、どのように進めるのかがはっきりしていないと、スケジュールを事前に立てられません。
デプスインタビューの進め方について紹介します。
◆デプスインタビューの進め方
- 調査の目的や課題を明らかにし仮説を立てる
- スクリーニング調査を行う
- 調査対象者への報酬を決める
- インタビューフローを作成する
- インタビューを実施する
- インタビューを通して得た情報をまとめ、分析する
1.調査の目的や課題を明らかにし仮説を立てる
デプスインタビューだけでなく何かを調査する前には、必ず調査の目的や課題を明らかにしなくてはなりません。
これは調査のための設問設定やインタビュー中の話し合い、調査対象者を絞る際に一貫性を保つためです。
「なんのための調査なのか?」という調査目的をはっきりさせたあと、「目的を達成するための課題は何か?」という調査課題をはっきりさせましょう。
調査目的や調査課題が明らかになったあとは、仮説を立てます。仮説を立てることで、消費者の意識と仮説にどんな共通点や相違点があるのかを調べられます。
2.スクリーニング調査を行う
スクリーニングとは、多くの対象の中から条件に合う対象を選別するという意味です。
調査目的や課題、仮説を立てたあとはスクリーニングを行い、調査対象者を選ぶ条件を明らかにします。
目的と課題を達成するためにはどのような対象者が望ましいのかという観点から、条件を設定することが大切です。
調査対象者の条件が決まったら、ウェブアンケートなどで実際に対象者を募集します。
このとき、条件に合っていないのに無理に基準に当てはめようとする対象者を避けるためにも、選定基準が伝わらないように行動の実態が把握できる設問を立てましょう。
調査対象者は、積極的に話せる人や対象商品について詳しい人、自分をしっかりと分析して語れる人が望ましいです。
調査目的や課題などにも寄りますが、10人ほどを選定するといいでしょう。
調査対象者がある程度決まったら、調査対象者に直接連絡を入れます。これは、報酬目当てのなりすましを防ぐためです。
3.調査対象者への報酬を決める
調査対象者の選定が済んだら、調査対象者へ支払う報酬額を決めます。
デプスインタビューは長時間に渡って話し合いを行う分、調査対象者には多くの負担をかけます。労力や時間に合った報酬額を決めましょう。
一般的には、60分 5,000円〜1万円を支払うことが多いです。
しかし、調査対象者が医師や弁護士といった専門職であったり、企業の管理職であったりする場合は、さらに高い報酬額が必要ににあることがあります。
4.インタビューフローを作成する
インタビューフローを作成しましょう。インタビューフローとは、インタビューのシナリオのことを指します。
デプスインタビューはインタビュアーと調査対象者の1対1で話し合いますが、調査目的を達成するためにはある程度の流れが必要です。そこで、インタビューの際に投げかける質問や順番をあらかじめ決めておきましょう。
インタビューフローの作成手順は以下の通りです。
- 質問を洗い出す
- 質問の優先順位をつける
- 質問にかける時間を設定する
- 調査関係者の間で合意する
ただし、ある商品に対して深く質問を繰り返す中で先入観を与えてしまうこともあるため、質問を決める際は順番や質問の仕方に注意しましょう。
デプスインタビューは複数人に調査を行うため、調査対象者の反応を見ながら質問内容を随時見直すこともあります。
5.インタビューを実施する
インタビューフローが完成し準備が整ったあとは、インタビューを実施します。
前述した通り、デプスインタビューには多くの時間がかかります。効率的にインタビューできるよう、日程の調整は抜かり無いようにしましょう。
例えば土日にまとめて行ったり、インタビュアーを2、3人確保して同時進行で行ったりすると、効率よくインタビューできます。
6.インタビューを通して得た情報をまとめ、分析する
デプスインタビューが終わったあとは、インタビューによって得た情報を分析します。
グループインタビューなどの他の定性調査に比べて得られる情報が多く、分析にも多くの時間を要するため、分析までを加味した日程調整が必須です。
まとめ
デプスインタビューは調査対象者と1対1で話し合うことで、消費者の本音を聞き出せる調査方法です。
人には聞きづらいデリケートな問題でも取り扱いやすく、調査対象者のリアルな体験談やエピソードから商品の開発やマーケティング施策の改善につながるヒントを得られるでしょう。
しかし、その分多くの時間を要し、労力もかかる上にインタビュアーのスキルが不足していると十分な情報は得られません。
デプスインタビューを実施するなら、慣れた調査会社に依頼することをおすすめします。
GMOリサーチ&AIでは、どこよりも早く、安く、手軽にオンラインデプスインタビューを実施することができます。
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