市場調査とマーケティングリサーチの違いは「現状/将来の可能性」
2021年04月07日
市場調査とは企業のマーケティング課題を解決するため、消費者の実際の状況や感じていることを調査することです。
この記事では、市場調査とは何か、マーケティングにあまり親しみのない初心者の方に向けて解説します。
◆この記事で分かること
- 市場調査とマーケティングリサーチの違い
- 市場調査でよく用いられる手法
- 調査会社に頼んだ場合の市場調査の納期と費用
- 自社で市場調査する場合のポイント
市場調査とマーケティングリサーチとの違い
市場調査と似たような意味でマーケティングリサーチという言葉が使われることがありますが、この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?
欧米でマーケティングリサーチの中身を具体的に示すとき、product researchやadvertising researchという言葉と並列的に、market researchという言葉が使われることがある。この場合のmarket researchは、マーケット(市場)の大半を構成する消費者についての調査、すなわち、consumer researchを指していることが多い。この場合のmarket researchは、企業が市場に向かって能動的に提供する製品や広告に関する調査を直接包含していない。
※引用『マーケティングリサーチの論理と技法 第4版』上田拓治。強調は筆者による
マーケティングの専門書にはこのようにあります。
つまり、厳密に言えば、市場調査はマーケティングリサーチのうちの一つの調査手法ということになります。
市場調査・製品調査・広告調査の違い
市場調査はマーケティングリサーチのうちの一つの手法です。マーケティングリサーチは、市場調査のほかに、製品調査・広告調査を含みます。
市場調査・製品調査・広告調査には、どういう違いがあるのでしょうか?
市場調査とは
市場調査は「現在のマーケットがどうなっているか」「消費者が今どう感じているのか」をメインに探りとる調査と言えます。
「市場調査」と堅苦しく言うと専門的な作業なのではと感じる人もいるかもしれませんが、ある商品の価格や口コミを検索エンジンで調べるといった情報検索も市場調査の一部といえば、馴染みが湧くのではないでしょうか?
ビジネスにおいて市場調査は、主にブランドや商品のマネジメント、新商品の開発、新市場の開発といった場面でよく用いられます。
- ◆ 市場調査で分かることの例
-
- 商品のシェア率
- ブランドの認知率
- 商品の満足度
- 商品にかける平均的な費用
- 競合の数・割合
- 日本・海外での利用率
- 去年と今年での消費者の変化
たとえば自社で新商品を開発するとき、ただ自社の技術があるからと市場を無視して商品を作っても、ヒットに繋がることは滅多に無いでしょう。多くの場合は消費者に振り向かれずに在庫を抱えてしまいます。
製品の開発前にまず商品がどのぐらい需要がありそうか、競合はどのようなシェアになっているか、現在あるものに消費者が不満に思っているポイントがないかなどのデータを入手し、それを見ながら「こういう新商品なら売れるのではないか?」とアイデアを出すのは、今では一般的な方法となっています。
多くの企業で市場調査を必要としているからこそ、ただ市場調査を行うだけではなく、精度の高い市場調査を行う必要があります。
- ◆ 市場調査の具体的な活用例
-
- 販促調査
- 価格調査
- 商品開発調査
- ブランドイメージ調査
- 満足度調査(顧客・従業員)
このように市場調査は、製品開発のアイデア・指針にするために、初期段階で使われることが一般的です。
製品調査(製品テスト)と広告調査とは
製品調査と広告調査はどのような調査なのでしょうか?
製品調査は製品テストといった方が分かりやすいかもしれません。
試作品やサンプルを数人~数十人のモニターにテストしてもらったり、ネーミングの印象を質問したり、実際に販売してみて様子を観察したりします。
- 自社と競合の製品を実際に使ってみた感想や満足度
- パッケージやネーミングのパターンの比較(ネーミングテスト・パッケージテスト)
広告調査は、実際の媒体で広告を見てもらったり、制作のための聞き取り調査などを行います。
- 広告キャンペーンを実施する前と実施した後それぞれ調査を行い比較
- テレビや動画広告など、媒体別の広告出稿量調査
市場調査は「市場の現状を知る」ことにフォーカスしている調査であると言えます。一方で、製品調査・広告調査は能動的に消費者にはたらきかけて反応を探り「将来的な可能性を検証する」調査です。
市場調査でよく使われる方法
市場調査でよく使われる方法は、3種類あります。
- 定量調査
- 定性調査
- デスクリサーチ
です。
二次データを取り扱うデスクリサーチ
市場調査は3つの方法に分かれます。ただし、より詳しく言えば、定量調査と定性調査は一次データを取り扱い、デスクリサーチでは二次データを取り扱うという違いがあります。
一次データとは、実際に利用している人や企業から直接得られたデータのことです。
反対に二次データとは、国が行った統計や出版物、調査会社やシンクタンクなどがすでに発表している調査データのことです。
二次データは、早く・安く・信頼性の高いデータが入手しやすい一方で、誰でも利用でき目新しさがなかったり、情報が古かったり、ピンポイントで知りたいこと分からなかったりすることもあります。
一次データは、自ら手を動かしてデータ収集しなくてはいけない分手間と費用がかかりますが、誰も知らない新しい情報を得られる可能性があり、世の中に出回らない価値の高い情報を入手することができるというメリットがあります。
一次データ | 二次データ | |
---|---|---|
|
メリット |
|
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デメリット |
|
市場調査では、まず二次データに当たり、不足している情報を一次データとして収集するのが効率的です。
定量調査
定量調査は、質問に対して決まった選択肢から選ぶように設計することで、数値や客観的な指標でデータが得られる調査手法です。定量調査の代表的な調査方法を紹介します。
インターネット調査(ネットリサーチ)
ウェブ上で条件のあう対象者にアンケートに回答してもらいデータを収集する方法です。
インターネット調査のメリットは
- 費用が安い
- 調査期間が短い
- 工数がかからない
- 回答者の負担が少ない
- 広域で実施できる
と多くあり、現在では定量調査の主流になっています。
覆面調査(ミステリーショッピングリサーチ)
覆面調査は、調査対象となる店舗などに調査員が客として訪問し、普段のサービスや態度、言葉遣いなどを調査する手法です。日本でも50年以上歴史がある伝統的な調査方法です。
訪問調査(訪問面接調査、CAPI:Computer Assisted Personal Interviewing)
訪問調査は、調査員が対象者の自宅や職場を実際に訪問して行う調査です。消費者だけでなく企業などを対象にすることもあります。
対面式で行うため、実際の製品や広告を見てもらいながら調査できるメリットがあります。
郵送調査
郵送調査は、調査票を回答者に郵送し、回答後に返送してもらう手法です。官公庁などが主に使います。インターネットを利用しない高齢世代にも使えるメリットがあります。
電話調査(CATI:Computer Assisted Telephone Interviewing)
ランダムで電話をかけ、その場で協力を得て質問に答えてもらう手法です。
選挙の投票調査などで使われるように、速報性に優れています。
定性調査
定性調査は、質問に対して自由に発言してもらい言葉そのものをデータとして取る調査手法です。定性調査の代表的な調査方法を紹介します。
グループインタビュー(集団面接・FGI:フォーカスグループ)
グループインタビューは、座談会を行い、あるテーマについて話し合ってもらい意見やアイデアを収集する方法です。6~8人程度の参加者と司会進行役となるモデレーターでグループを作るのが一般的です。
- ◆ グループインタビューのメリット
-
- 多様な視点からの意見が一度に得られる
- 参加者同士の意見の交換による相乗効果(グループ・ダイナミクス)が期待できる
参加者同士の話し合いが刺激となって、ついぽろっと本音が出たり、参加者すら気づいていなかったような潜在的なアイデアを発見できる可能性もあります。
オンラインで座談会が行われることもあります。
デプスインタビュー(深層面接・パーソナルインタビュー)
デプスインタビューは、回答者とインタビュアーが1対1で向き合いヒアリングする方法です。
- ◆ デプスインタビューのメリット
-
- 対象者の人となりを理解しやすい
- 大勢の他人の前では話しにくいことを聞ける
- 複雑で込み入ったことを詳しく聞ける
ただし、デプスインタビューは効率が悪く、サンプルを多く取ることには向いていません。
電話やチャットでデプスインタビューが行われるケースもあります。
観察調査(エスノグラフィ・参与観察)
観察調査は、対象者のありのままの生活や行動、施設の実態などを文化人類学的に観察する手法です。
実際の売場にカメラなどをセットして映像を見ながらインタビューをおこなったり、起こったことをそのまま記述して分析したりします。]
市場調査の料金と納期の相場は?
市場調査は多くのビジネスにとって不可欠なものになってきました。
とはいえ、市場調査の範囲は広く専門知識が必要な作業も多くあります。
そこで考えたいのが調査会社の活用です。調査会社に依頼する場合、市場調査の費用と調査期間はどのぐらいかかるものなのでしょうか?
自社で市場調査を行うためにはどうしたらいいのでしょうか?
専門の調査会社に依頼する場合
自社に市場調査のノウハウ・リソースがない場合、専門の調査会社に依頼することになります。
- ◆ 調査会社に依頼するメリット
-
- 自社で本来やるべきことに時間を集中できる
- 必要なときに必要な部分にのみ費用を捻出すればよい
- 多様な情報やデータを活用できる
- 社内に足りないスキルやノウハウを利用できる
- 他社や異業種の成功/失敗事例を参考にできる
※参考『デジタル時代の基礎知識 リサーチ 多彩なデータから顧客の「すべて」を知る新しいルール』石渡佑矢
とはいえ、ひとくちに依頼といってもその作業範囲はさまざまです。
調査会社には、リクルーティング(回答者の確保)だけ依頼することや、逆にスクリーニング(条件に該当する回答者の洗い出し)から実査(実際の調査)、分析まで依頼することもできます。
実際には自社の状況と予算を考慮してどの程度まで依頼するか決定することになるでしょう。最近ではリクルーティングのみ、もしくは実査のみのインターネットリサーチの依頼ならば、かなり手軽な価格で依頼することも可能になってきました。
インターネット調査の費用と納期(100サンプル/500サンプル)
インターネットは費用も安く、短期間で行いやすい調査です。
サンプルや質問数が多くなるほど費用がかかります。
◆インターネット調査の本調査価格
100サンプル・10問 | 10,000円~(税込) |
---|---|
500サンプル・10問 | 50,000円~(税込) |
※GMOリサーチ&AIの場合
インターネット調査の納期は最短2日なので、すぐに結果を知りたいときに使えます。
その他の調査費用相場と納期
項目 | 費用の目安 |
---|---|
CLT参加者募集(スクリーニング5,000サンプル・15問) | 約80,000円~ |
HUT参加者募集(スクリーニング10,000サンプル・15問) | 約130,000円~ |
デプスインタビュー(5サンプル・60分) | 約130,000円~ |
まったくマーケティングや統計についての知識がないのに自社ですべての調査を行うことは難しいでしょう。
しかし、必要な情報が社内に揃っており、分析できる人材や仕組みが整っていれば内製も可能です。
- ◆ 自社で市場調査を行うメリット
-
- 背景や課題の理解が早い
- 責任感や達成意識が社外の人より強い
- スピードや柔軟性を持った動き方ができる
- 知見を社内に蓄積することができる
- 躊躇機的な人材育成につながる
- ◆ 自社で市場調査を行うデメリット
-
- 組織運営や人員に固定的な費用がかかり続ける
- 退職や異動で知見が引き継がれないリスクがある
- 戦略や戦術に使える情報やデータが限定的である
- 客観的に自社を捉えられなくなるリスク
- 新しい発想が出てこない
※参考『デジタル時代の基礎知識 リサーチ 多彩なデータから顧客の「すべて」を知る新しいルール』石渡佑矢
自社で使える便利なツール・施設
自社で市場調査をするときの信頼できる情報ソースとして、便利なツールや施設を紹介します。
◆無料で使える情報ソース
e-Stat
国勢調査、経済センサス、人口推計、労働力調査、家計調査、消費者物価指数などが見られます。
統計ダッシュボード
2017年に公開されたサイト。人口や景気動向といった政府や民間企業のデータをグラフ化したものが見られます。
統計局ホームページ -総務省
総務省統計局の最新の公表データが見られます
情報通信白書 -総務省
通信業・放送業にかかわる産業のデータ・統計が見られます。
EDINET -金融庁
有価証券報告書などの一般企業の開示書類を閲覧できます。
消費動向調査 -内閣府
消費者の暮らし向きに関する考え方の変化や物価の見通しなどの調査結果が見られます。
世論調査 -内閣府
基本的な国民意識の動向や政府の重要施策に関する国民の意識についての調査結果が見られます。
JETRO(日本貿易振興機構)
海外のビジネス関連情報や日本企業の海外展開、在外日系企業の経営実態などの調査分析が見られます。
そのほかリサーチ範囲に応じて、JRやNHK、日本銀行といった政府系企業電通、博報堂生活総合研究所ほか一般企業の提供する統計調査、分析、指数などを参照することができます。
◆無料で使える施設
・国立国会図書館
国内で発行されたすべての出版物が納入されています。雑誌のバックナンバーや研究論文を入手することができます。
・都道府県庁や大きな市役所にある統計資料室
・大都市の商工会議所にある商工図書館
◆有料で使える情報ソース
日経テレコン
日経4紙ほか主要新聞の過去記事1億本以上を検索できます。
Factiva
国内外の雑誌・新聞が読めます
SPEEDA
世界500万社のデータが約560業界に分類・分析されたデータベース
COSMOSNET(帝国データバンク)
企業信用調査報告書や企業概要・決算書情報、倒産情報、人事情報、業界最前線レポートなどを閲覧できます。
TSR REPORT(国内企業情報リサーチ
TSR調査員が実際に企業を訪問してヒアリングを行った結果などがまとめられています。
YDB -矢野経済研究所
矢野経済研究所が発刊する自社企画調査資料が閲覧できます。
オリコン日本満足度調査
日本で流通しているサービスや商品に対して、オリコンが独自に行っている満足度調査がまとめられています。
J Dream III -JST(科学技術振興機構)
日本最大級の科学技術文献情報データベース。
STN -(社)化学情報協会
特許,雑誌論文,医薬品,化学物質など広範な科学技術分野の検索サービス。
MDB -日本能率協会総合研究所
公開情報の収集、業界調査やマーケティングリサーチの情報提供サービス。
市場調査を成功させるために「しない」こと
調査会社を利用する場合であっても、効率的に調査を行うためには自社でしっかり企画と仮説を検証する必要があります。市場調査を成功に導くポイントをまとめました。
「とりあえず」市場調査はしない
施策や開発の前に「とりあえず」市場調査をするパターンがあります。仮説がないまま調査を行うと「結果は出たけど、これからどうすればいいのか?」という状態になりかねません。「リサーチ結果を得て何をしたいのか?」を明確にしましょう。
仮説を立てるときは自分だけでなく、なるべくいろいろな立場を想像するようにすると強度が高いものになります。
回答負荷の高い調査にしない
回答者にとって負担の高い調査になってしまうと、きちんと回答されない恐れがあります。
調査項目は一度に全部聞こうとせず、必要最小限に絞ることが鉄則です。
質問設計を終えたら、必ずプリテストを行いどのぐらい回答に時間がかかるのか計測してみましょう。
あいまいな調査票を作らない
「Garbage In Garbage Out(不完全な入力では不完全な出力しか出ない)」とデータサイエンス業界では経験則としてよく言われれます。
質問表の設計では、
- 質問文はあいまいさや誤解のない言い回しにする
- 論理的な質問構成にする
- バイアスを避ける
こういった点に気をつけると精度の高い回答を得やすくなります。
市場調査を内製したいなら、DIYセルフ型アンケート
市場調査は今やビジネスでなくてはならない働きを持っています。デスクリサーチや簡単な調査であれば自社での内製も可能な場合もありますが、精度の高い調査のためには調査会社を利用することも考えられます。
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