フリーミアムとは?メリットや成功・失敗事例、実施上のポイントを解説
2022年03月23日
フリーミアムとは、ユーザーに基本サービスを無料で提供し、より高度な有料プランへ誘導するビジネスモデルを指します。
一度利用し価値を感じてから有料プランへ移行するため、無料段階で自社サービスへの満足度を高めることが重要です。
無料段階で自社サービスへの満足度を高めることで、ユーザーの有料プラン契約につながり利益が見込めます。
この記事では、フリーミアムのメリットや成功・失敗の各事例、実施におけるポイントを解説します。
フリーミアムとは
フリーミアムとは、基本機能を備えた商品やサービスをユーザーに無料で提供し、より高度な有料サービスや商品購入につなげるビジネスモデルを指します。
ユーザーにサービスを無料提供して購入ハードルを下げ、自社商品に対する理解を深めてから有料プランにつなげることで、中長期的な利益が見込めます。
サブスクリプションとの違い
サブスクリプションとは、ユーザーが毎月(あるいは毎年)定額料金を支払って利用するサービスのことです。
サブスクリプションでは、全ユーザーが継続課金を行いサービスを利用しますが、フリーミアムでは、一部サービスを無料で解放し有料プランに移行したユーザーのみ課金が発生します。
フリーミアムでは、無料サービス体験後に有料プランへ課金するため、サブスクリプションよりも自社サービスの価値をユーザーが無料段階で把握しやすいメリットがあります。
フリーミアムの分類
フリーミアムのビジネスモデルは、大きく4種類に分類されます。
◆フリーミアムモデルの分類
- 機能追加や制限解除への課金
- 無料サービスに備わっていない機能追加や制限が解除されるタイプ。ユーザーが利用できる機能の範囲が広がり、操作の自由度も上がる。
例)
ビジネスチャットツール:無制限にグループ作成可能(無料:累計7グループまで)
音楽ストリーミングサービス:オフラインで再生可能
- 容量増加への課金
- 利用可能な保存容量が増えるタイプ。写真共有やクラウドサービスで利用される。
例)
オンラインストレージサービス:利用可能な容量を2000GBに増量可能(無料:2GB)
- 有料会員向けコンテンツへの課金
- 有料会員向けコンテンツや限定特典を利用できるタイプ。
例)
料理レシピサイト:ジャンル別の専門家レシピや、サイトに掲載されている全レシピ内のカロリーなどが閲覧可能
- 必要に応じてその都度課金
- 基本は無料で利用しつつ必要に応じて課金するタイプ。
例)
スマホゲーム全般:アイテム購入など
フリーミアムのメリット
企業がフリーミアムモデルを活用してビジネスを展開するメリットは以下の3点です。
- 新規ユーザーを獲得しやすい
- 有料サービスの購入ハードルを下げられる
- ユーザーの口コミを集めやすい
新規ユーザーを獲得しやすい
フリーミアムは無料サービスで集客するため、消費者がサービスを活用するまでのハードルは低く、新規ユーザーを集めやすいのが特徴です。
一般的に新規顧客の獲得ハードルは高く、アメリカのコンサルティング会社が提唱した1対5の法則においては「新規顧客獲得には既存顧客維持の5倍コストがかかる」とされています。
その点、フリーミアムでは無料サービスを入り口にすることで、新規顧客獲得コストを抑えつつ集客も期待でき、有料プランへの移行数増加も見込めます。
仮に新規顧客がすぐ有料プランへ移行しなくても、メルマガ配信などを活用し、顧客との関係性を維持することもできます。
有料サービスの購入ハードルを下げられる
いきなり有料プランの利用を促すのは難しいですが、一度価値を感じているユーザーであれば、有料プランに対する購入ハードルは低くなっており、有料プランへ移行する可能性が高いです。
特にtoBサービスの場合は、企業担当者が導入前に社内稟議を実施することが多く、実際の使い勝手が不明瞭では承認が下りにくいなど、導入ハードルは高いです。
無料であれば企業にとっても導入ハードルが低いため、お試しで導入も検討されやすく、スムーズな導入が見込めるでしょう。
ユーザーの口コミを集めやすい
フリーミアムでは、無料サービスで導入ハードルを下げて大量のユーザーを集客するため、製品への口コミや評判を集めやすいのが特徴です。
集めた評判や意見をもとに製品改善や機能修正を実施できるうえ、ユーザーが自発的にSNS等で口コミを拡散すれば、自社サービスへの認知も広がります。
総務省が平成28年に行った調査(*)によると、すべての年代で「買い物をする際にレビューを参照する」と回答した割合が6割を超えました。
調査結果からもわかるとおり、口コミは見込み客が購入可否を決める重要な判断材料だと考えられます。
無料サービスの提供により、ユーザーとその口コミを積極的に集め見込み客を後押しできるのは、フリーミアムの大きなメリットです。
フリーミアムの成功事例
フリーミアムモデルでは、無料サービスによりユーザーの満足度を高めることで、ユーザーを有料プランへつなげられやすいメリットがあります。
以下で紹介するのは、適切な無料/有料サービス内容を設定してフリーミアムモデルを成功させた事例です。
- A社:米国の新聞社
- B社:オンラインストレージサービス
- C社:音楽ストリーミングサービス
A社:米国の新聞社
F社が提供している新聞の電子版は、フリーミアムの展開当初「無料ユーザーは20記事まで閲覧可能」という制限を設けていました。
しかしユーザー数が伸び悩んだため、無料ユーザーの閲覧制限を「10記事」に変更したところ、有料会員数が増え、業績アップを果たします。
フリーミアムでは、無料段階でユーザーに自社サービスの価値を伝えることが大切です。
しかし無料段階で過剰にサービスを提供すると、ユーザーは満足し、有料プランへの移行が見込めません。
この事例では、ユーザーに適切なサービス量を選定し直したことで、ユーザーが無料段階で満足しすぎることなく有料プランへの移行が見込めた好事例といえます。
B社:オンラインストレージサービス
B社のオンラインストレージサービスは、有料プランへ移行すると利用容量を「2GB→2000GB」に増やせます。
B社は2008年のリリース当初、リスティング広告を出稿しユーザーを獲得していました。
しかし、有料プランへの移行数は伸びず広告費による赤字が続いたため、「友人にサービスを紹介すると無料で容量追加」というキャンペーンを開始します。
その結果、サービス利用者数は大幅に増加し、2016年には5億人を突破しました。
キャンペーンをきっかけに無料プランへ加入したユーザーの中から、容量増加の必要性を感じるユーザーが表れ、自然な流れで有料プランへ移行する流れを生んだ好事例です。
C社:音楽ストリーミングサービス
C社の音楽ストリーミングサービスは、2021年時点でユーザー数3億8,100万人・有料会員数1億7,200万人を突破しており、約半数が有料プランに加入しています。
C社は音楽ストリーミング市場でトップシェアを誇っており、2位のサービスの総ユーザー数(約7,000万人)を有料会員数だけで抜いています。
C社のサービスは、無料ユーザーでもプレイリスト作成や歌詞の閲覧、履歴を元にしたレコメンド機能、バックグラウンド再生など、幅広い内容を利用可能です。
無料プランでも再生回数や再生時間の縛りがないため、他の音楽ストリーミングサービスと比べて、無料でも手厚いサービスを受けられます。
C社のサービスは有料クラスのサービスを無料で提供していることで、有料プランへの期待値を高めており、多くのユーザーを有料プラン移行へ成功させた事例です。
フリーミアムの失敗事例
フリーミアムでは、無料ユーザーに適切な内容のサービスを提供し、有料プランの価値を実感してもらうことが重要です。
以下で紹介するのは、無料ユーザーへの提供サービス内容を見誤った失敗事例です。
- D社:メモアプリ
- E社:中小企業向け経理ソフトウェア販売会社
D社:メモアプリ
メモアプリを展開するG社は、無料プラン内容を縮小し使い勝手を悪化させたことで、ユーザー満足度を低下させました。
具体的には以下のように無料プランが変更されました。
- 改定前:WEBブラウザ版は利用台数に未カウント
- 改定後:WEBブラウザ版も利用台数にカウントされ、ノートを同期できる数が2台までに制限
上記改定と合わせ、値上げも実施したことでユーザー離れを引き起こします。
無料ユーザーにサービス価値を伝えられないと、有料プランへの移行が見込めないことがわかる事例です。
E社:中小企業向け経理ソフトウェア販売会社
H社は、中小企業向けに支払い請求管理ソフトを販売する会社で、取引先に一括で請求書を送付できるサービスを提供しています。
もともとH社のサービスは無料サービスの幅が広く、請求書を50社以上に送付する場合に有料としていました。
しかし、中小企業は取引先が少ないケースも多く、50社以上に請求書を送付する機会がほとんどないため、有料プランに移行するユーザーの獲得に苦しみました。
一時期は倒産寸前まで追い込まれたH社でしたが、現在は無料プランを廃止し、企業規模に応じた料金設定を行い事業を継続しています。
無料段階でサービスを過剰に提供すると、ユーザーが有料プランへ移行するモチベーションを失いやすいことがわかる事例です。
フリーミアムを実施する上でのポイント
上記でお伝えした失敗事例のように、フリーミアムを実施しても、サービス内容を見誤って失敗するケースもあります。
フリーミアムモデルで、適切に有料プラン移行を促すためのポイントは以下の5点です。
- 有料部分との棲み分けを明確に定める
- 黒字化までに時間がかかる旨を念頭に置く
- フリーミアムに不向きな事業を見極める
- 有料プランへの移行負担を軽減する
- 無料トライアルを提供する
有料部分との棲み分けを明確に定める
フリーミアムでは、無料サービスを手厚くしてユーザーの満足度を過剰に高めると、有料プランへ移行する意欲が薄れます。
一方で、無料ユーザーへのサービスが手薄であれば、有料プランに価値を見出しにくく移行は見込みにくいです。
よって無料ユーザーに適切な内容のサービスを提供し、有料プランの価値が伝わる線引きを見極めることが大切です。
◆無料プランで適切なサービス内容を見極める方法
- ABテストの実施
- 競合サービスの調査 など
黒字化までに時間がかかる旨を念頭に置く
フリーミアムでは、ユーザーが有料サービスに登録しないと黒字化が見込めません。
無料段階でサービスのシェアを広げられず、有料プランのユーザー数を増やせなければ、事業存続も危うくなります。
よって有料サービスへの移行は一定期間かかる可能性が高いため、黒字化までの間に事業を継続できる資金力が必要です。
フリーミアムに不向きな事業を見極める
フリーミアムモデルは、有料ユーザーが増えるまでは黒字化が見込めにくいため、事業運営に多大なコストが必要なビジネスには不向きです。
◆フリーミアムに向いている/不向きな事業例
- フリーミアムに向いている事業
- Web・アプリ、ソフトウェア、動画配信 など
- フリーミアムが不向きな事業
- 物販、製造業など、有形商材を扱うサービス全般
有料プランへの移行負担を軽減する
無料ユーザーが製品に価値を感じても、有料プランの登録手続きが手間では、移行を躊躇することもあります。
「希望の有料プランをクリックすれば移行完了」など、簡潔な手続きを設定しましょう。
もし有料プランへの移行手続きが複雑な場合、手厚くサポートを行い離脱を防ぐことが大切です。
無料トライアルを提供する
無料プランとは別に「30日間、有料プランを無料体験」のようなトライアル実施も有効です。
一度有料プラン内容をすべて体験してもらい、ユーザーに実際の使用感を理解してもらうことで、無料段階からの移行をスムーズに進められます。
まとめ
フリーミアムモデルは、無料サービスでユーザーを集客するため、利用者の大幅な増加を見込めます。
過剰な無料サービス内容では有料プランへ移行する意欲が薄れますが、無料プランが手薄だとユーザーはサービス自体に価値を感じず移行が見込めません。
よって集客した無料ユーザーが有料プランへ移行するには、無料と有料部分のサービス範囲を適切に設定することが重要です。
フリーミアムモデルを導入する際は、本記事の成功事例/失敗事例も参考にしつつ無料/有料のサービス範囲を検討してみてはいかがでしょう。
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