インバウド調査の実施ガイド:訪日外国人市場を掴むリサーチ入門
2024年12月17日
インバウンド市場の回復とともに、訪日外国人の消費動向を把握することが重要になってきました。しかし、効果的な調査を実施するにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、インバウンド調査の基礎から実践的なノウハウまでを分かりやすく解説していきます。マーケティングリサーチの実務者の方はもちろん、これから調査を始めようと考えている方にも役立つ情報をお届けします。
インバウンド調査の基礎知識
インバウンド市場における成功の鍵は、訪日外国人の消費行動やニーズを正確に把握することにあります。基本的な考え方から市場の現状、そして政府の観光戦略まで、インバウンド調査の基礎知識を体系的に解説します。
インバウンド調査とは
インバウンド調査は、訪日外国人の消費行動や観光ニーズを把握するためのマーケティングリサーチです。主な調査項目には、訪問目的、消費額、満足度、再訪意向などが含まれます。
観光スポットでの消費行動、宿泊施設の利用状況、飲食店での食事内容、地域の文化体験に対する関心度など、調査対象は多岐にわたります。これらのデータを分析することで、効果的な観光戦略の立案が可能になります。
なぜいま訪日外国人市場に注目するのか
コロナ禍からの回復期を迎え、訪日外国人市場は急速な成長を見せています。2023年の訪日外国人数は前年比で大幅に増加し、消費額も過去最高を更新しました。
アジア圏からの観光客増加に加え、欧米豪からの長期滞在者も増加傾向にあり、市場の多様化が進んでいます。この変化は、新たなビジネスチャンスの創出につながる可能性を持っています。
日本政府の観光戦略とインバウンド市場
政府は「観光立国推進基本計画」において、2030年までに訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円という目標を掲げています。
この目標達成に向けて、観光インフラの整備、多言語対応の強化、キャッシュレス決済の普及など、様々な施策が展開されています。これらの政策は、インバウンド市場における新たなビジネス機会の創出にもつながっています。
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インバウンド調査に必要な視点
効果的なインバウンド調査を実施するには、訪日外国人市場の特性を理解することが重要です。国や地域による違い、観光目的による行動パターン、さらにはリピーターの増加がもたらす変化など、多角的な視点から市場を捉える必要があります。
国・地域による消費者行動の違い
訪日外国人の消費行動は、出身国や地域によって大きく異なります。例えば、中国からの観光客は化粧品や電化製品などの買い物に高い関心を示す一方、欧米からの観光客は文化体験や食事を重視する傾向にあります。
韓国や台湾からの観光客は、SNSでの情報収集を重視し、流行に敏感な特徴があります。東南アジアからの観光客は、日本の四季や自然景観に強い関心を示すことが多く、特に桜や紅葉のシーズンに訪日のピークを迎えます。
観光目的と消費行動の相関性
観光目的によって、訪日外国人の行動パターンや消費傾向は大きく変化します。観光目的の来訪者は、名所旧跡の訪問や伝統文化体験に時間を費やす傾向があります。
一方、ビジネス目的の訪日者は、滞在時間が限られているため、効率的な時間の使い方を重視します。夜間の飲食や買い物に消費が集中する傾向にあり、高級店での利用も目立ちます。
リピーター増加がもたらす市場変化
リピーターの増加は、インバウンド市場に質的な変化をもたらしています。初回訪問者が定番の観光地や体験を好む一方、リピーターは地方都市や隠れた観光スポットを好む傾向にあります。
また、リピーターは日本の生活文化により深い関心を示し、地元の人々との交流や、より本格的な文化体験を求める傾向があります。このような変化は、新たなビジネスチャンスの創出につながっています。
効果的な調査手法の選び方
インバウンド調査では、目的に応じて適切な調査手法を選択することが重要です。定量・定性調査の特徴を理解し、それぞれの手法のメリット・デメリットを把握した上で、効果的な調査設計を行う必要があります。
定量調査と定性調査の使い分け
定量調査は、大規模なアンケートやWeb調査を通じて、数値データに基づく客観的な分析を行います。訪日外国人の消費額、滞在日数、観光スポットの利用頻度など、具体的な数値データの収集に適しています。
定性調査は、インタビューやグループディスカッションを通じて、訪日外国人の深層心理や具体的なニーズを把握します。観光地の印象、サービスの満足度、再訪意向の理由など、数値化が難しい情報の収集に活用されます。
各調査手法のメリット・デメリット
街頭調査は、観光客の生の声をリアルタイムで収集できる反面、天候や時間帯に左右されやすい特徴があります。アンケート回答者数の確保には時間とコストがかかりますが、その場での追加質問が可能です。
Web調査は、短期間で大量のデータ収集が可能で、コストも比較的抑えられます。ただし、インターネットユーザーに限定されるため、年齢層や地域に偏りが生じる可能性があります。
SNS分析は、リアルタイムの口コミや評価を把握できますが、ポジティブな意見に偏りやすい傾向があります。また、各国で主流のSNSが異なるため、プラットフォームの選定が重要です。
調査設計のポイント
調査目的を明確にし、ターゲットとする国や地域の特性に合わせた設計が必要です。質問項目は、回答者の負担を考慮しながら、必要な情報を漏れなく収集できるよう工夫が求められます。
多言語対応は必須であり、単なる翻訳だけでなく、文化的な背景を考慮した表現の選択が重要です。また、季節性や観光のピーク時期を考慮した調査スケジュールの設定も成功のカギとなります。
インバウンド調査の実務上のポイント
インバウンド調査を成功させるには、企画段階から実施、分析まで、実務的な視点での綿密な準備が欠かせません。ここでは、調査を実施する際の具体的なポイントと、効果的なデータ活用の方法について解説します。
調査企画から実施まで
調査の準備段階では、目的の明確化と調査対象の絞り込みが重要です。たとえば、「中国人観光客の消費動向調査」なのか、「欧米観光客の満足度調査」なのか、具体的なターゲットを定めることから始めます。
実施段階では、季節変動や観光ピーク期を考慮した調査時期の設定が必要です。また、調査員の配置や調査場所の選定も、対象となる訪日外国人の行動パターンに合わせて決定します。
多言語対応のノウハウ
質問票の作成では、単なる直訳ではなく、各国の文化や習慣を考慮した表現の選択が重要です。特に選択肢の設定では、国によって異なる価値観や消費習慣を反映させる必要があります。
調査現場では、母国語での対応ができる調査員の配置が望ましく、通訳アプリなどのツール活用も検討します。また、回答方法の説明や追加質問の際にも、文化的な配慮が必要です。
データ分析と活用
収集したデータは、単純な集計だけでなく、クロス分析や時系列分析など、多角的な視点での分析が重要です。特に、国籍や年齢層、訪日回数などの属性による差異を明確にすることで、より実践的な示唆が得られます。
分析結果は、マーケティング戦略の立案やサービス改善に直接活用できる形でまとめる必要があります。また、定期的な調査を実施する場合は、前回との比較分析を行い、変化の傾向を把握することも重要です。
インバウンド調査の今後の展望
インバウンド調査は、デジタル技術の進化と持続可能な観光への注目により、大きな転換期を迎えています。従来の調査手法に加え、新しい技術やアプローチを取り入れることで、より効果的な市場把握が可能になりつつあります。
デジタル技術の進化による調査手法の変化
位置情報データやAI分析の活用により、訪日外国人の行動パターンをリアルタイムで把握できるようになっています。特に、スマートフォンの位置情報を活用した動態分析は、観光客の移動経路や滞在時間を正確に把握する手段として注目を集めています。
ビッグデータ解析技術の発展により、SNSの投稿内容や口コミデータを自動で収集・分析することも可能になりました。これにより、従来の調査では把握が難しかった観光客の生の声や、急速な傾向の変化も素早くキャッチできるようになっています。
また、多言語音声認識技術の進歩により、インタビュー調査の自動文字起こしや翻訳が効率化され、より深い定性分析が可能になりつつあります。
持続可能な観光における調査の役割
観光地の収容力や環境への影響を考慮した「持続可能な観光」への関心が高まっています。インバウンド調査は、観光地の適切な受け入れ可能人数を把握し、オーバーツーリズム対策に活用されるようになっています。
地域社会との共生を目指す観点から、住民の意識調査と訪日外国人の行動調査を組み合わせた包括的な分析も重要性を増しています。これにより、観光振興と地域生活の調和点を見出すことが可能になります。
さらに、環境負荷の測定や経済効果の分析など、観光がもたらす多面的な影響を評価するための調査手法も発展しつつあります。このような調査結果は、持続可能な観光政策の立案に不可欠な基礎データとなっています。
インバウンド調査を成功に導くために
インバウンド調査は、訪日外国人市場の拡大とともに、その重要性がますます高まっています。効果的な調査の実施には、市場特性の理解、適切な手法の選択、そして実務的なノウハウの蓄積が不可欠です。
特に、デジタル技術の進化や持続可能な観光への関心の高まりにより、調査手法も日々進化しています。このような変化に対応するには、専門家のサポートを受けることも一つの選択肢となります。
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