多次元尺度法とは|主成分分析との違いや方法をわかりやすく解説

2021年11月08日

多次元

多次元尺度法とは、プロダクトマップなどを活用し、類似データを視覚的にわかりやすく把握する分析手法です。 ビジネスでは競合調査はもちろん、マーケティング戦略策定や、ブルーオーシャン市場開拓などに活用され、適用範囲が広い分析手法として有名です。

しかし多次元尺度法を活用するにあたり、

  • 多次元尺度法が何に役立つかわからない
  • 主成分分析の違いを知りたい
  • 多次元尺度法とクラスター分析、どっちが向いているか迷う

こんな悩みを持つ方も多いのではないでしょうか? 本記事では、多次元尺度法の概要から活用事例、クラスター分析・主成分分析との違いまで解説します。

多次元尺度法とは?

まず初めに多次元尺度法の概要を、以下2つの切り口から説明します。

  • 多次元尺度法の意味
  • 多次元尺度法はマーケティング分野と親和性が高い

多次元尺度法の意味

多次元尺度法
類似しているデータを2次元あるいは3次元に配置し、視覚的に類似関係を把握するために利用される分析方法。 多変量解析と呼ばれるデータの解析手法に分類される。

多次元尺度法はMDS(Multi-dimensional scaling)や多次元尺度構成法と表現されます。 多次元尺度法と多次元尺度構成法は、実際は細かい違いがあるものの、マーケティングなどで利用するのであれば、同義として取り扱って問題はありません。

多次元尺度法は多変量分析の中でも、多くのデータをより少ない項目で説明する「データの要約」のために利用される手法です。 同様にデータの要約を行う主成分分析との違いがわかりづらい手法でもあります。

多次元尺度法はマーケティング分野と親和性が高い

多次元尺度法は特にマーケティング分野でよく使われています。
例えば自社製品と他社製品の類似性を可視化させたい場合、多次元尺度法を使って「プロダクトマップ」を作成します。

プロダクトマップ

上図ではA社のお茶が他社製品と比べると、どのような立ち位置かを端的に示しています。 当然ながら縦軸・横軸により分析結果は異なるため、調査の初期段階で何を比較したいか設定しておくと良いでしょう。

今回の例では2次元マップを利用していますが、3次元マップを使うことも可能です。 ただし3次元マップの場合、見えづらくなるため実務的には2次元マップを利用することが多いです。

多次元尺度法の活用事例

ここからは多次元尺度法の活用事例について解説します。 プロダクトマップを作成する際、具体的には以下の手順で進行します。

  1. アンケートを作成する。
  2. アンケートを実施し、必要数サンプルを集める。
  3. 得られたデータを基に、多次元尺度法を実施する。

今回は飲料メーカーが自社製品のプロダクトマップを作成する事例で考えます。 製品のプロダクトマップを作成するため、類似性についてアンケート調査を実施します。

なお、多次元尺度法は一対多の比較があれば測定可能であるため、ここでは以下のようなトーナメント形式を利用します。 結果は以下のようになりました。

類似度調査

アンケート結果が出揃ったら、多次元尺度法を用いて分析をかけます。 分析をかけると以下のようなプロダクトマップが作成できます。

プロダクトマップ

ここで注意すべきポイントは、多次元尺度法で作成されたプロダクトマップの軸自体に意味はない点です。 よって状況に応じて、軸を回転させることも可能です。

ここで注意すべきポイントは、多次元尺度法で作成されたプロダクトマップの軸自体に意味はない点です。 よって状況に応じて、軸を回転させることも可能です。 あくまでもプロダクトマップでは類似性の相対的な距離を示しているに過ぎません。分析者はプロダクトマップから、X軸とY軸にどういった意味づけをするか検討します。

軸に意味づけができれば、他社製品との比較や、自社製品における顧客からの見られ方が視覚的に把握しやすくなります。 ただし、プロダクトマップを作成したからといって各軸の意味を必ずしも検討できる訳ではありません。場合によっては、多次元尺度法以外に多変量解析が必要になる点は認識しておきましょう。

多次元尺度法と他の分析方法との比較【クラスター分析・主成分分析】

多次元尺度方と他の分析方法

多次元尺度法は多変量解析の手法の1つです。 多変量解析は他に、以下の分析方法があります。

  • クラスター分析
  • 主成分分析
  • パス解析
  • 重回帰分析
  • 分散分析

この中でも多次元尺度法に似ているのが、クラスター分析と主成分分析です。 ここからは、クラスター分析と主成分分析の概要から、多次元尺度法との違いについて解説します。

多次元尺度法とクラスター分析の違い

クラスター分析とは、混ざり合ったデータを近いもの同士でグルーピングする方法です。 分類方法としては、階層的方法と非階層的方法があります。

階層的方法として一般的なのはデンドログラムです。デンドログラムではクラスター分析の結果がトーナメント形式で出力されます。

テンドログラム

デンドログラムでは交わる部分の距離が近ければ近いほど、要素は類似したものだと判断されます。 多次元尺度法もクラスター分析も、グルーピングした要素間の距離を求めて図式化するという点においては非常に似ています。

ただし以下の点で異なります。

多次元尺度法:連続的な多次元空間を利用してデータを分析する手法
クラスター分析:クラスター構造を用いてデータを分析する手法

両者の違いを端的に示すと、アンケート調査の方法だと言えます。 また二次元図への出力結果にも以下のように違いが見られます。

  • 多次元尺度法:ポジショニングマップ
  • クラスター分析:デンドログラム

多次元尺度法と主成分分析の違い

主成分分析とは、多くのデータを1つの合成変数に要約する分析方法です。 主成分分析では、各要素全てを1つにまとめた総合変数を作成でき、データ全体の総合評価を算出できるのが大きな特徴です。

例えばA高校の1年生における前期期末テストの点数と平均点が、以下のように教科別に並べられているとしましょう。

  • 現代文
  • 英語
  • 数学A
  • 生物基礎
  • 漢文
  • 現代社会
  • 化学基礎

上記のように、ただ教科別に点数や平均点が並べられているだけでは、総合的な評価が下しにくいと言えます。

そこで上記データで主成分分析を行うと、全ての教科における総合評価を算出できます。このように、最初に主成分分析を行い算出された主成分を「第一主成分」と呼びます。 さらに主成分分析を重ねると、ジャンル別に総合的な評価が算出できます。

  • 文系(現代文/漢文/現代社会)
  • 理系(数学A/生物基礎/化学基礎)

上記2つは2番目に出された主成分であることから「第二主成分」といいます。

このように主成分分析を実施すると、多くのデータを第一主成分と第二主成分などに要約できます。 多次元尺度法と主成分分析は、同じデータの要約という意味では似ていますが、要約をする際の計算方法は大きく異なっています。

出力される結果が異なるので、実務では以下のように活用すると良いでしょう。

  • ポジショニングマップを作成する・・・多次元尺度法
  • 多くの情報を要約し、総合的な評価を導き出す・・・主成分分析

多次元尺度法の活用事例

多次元尺度法は以下のような場面で活用できます。

  • ブルーオーシャン市場の発掘
  • レコメンド機能
  • 自社のブランディング戦略

事例1.ブルーオーシャン市場の発掘

多次元尺度法を利用することで、他社製品のプロダクトマップを作成できるため、競合がいない製品の分野を探し出しやすくなります。 例えば飲料メーカーが新しいビールの製造・販売を検討していたとしましょう。

多次元尺度法によって安くて喉ごしの良いグループはあるものの、高級感があって喉ごしの良い製品はまだ存在していないと分析できれば、新商品を開発する際、他社製品との差別化ができる可能性があります。

事例2.レコメンド機能

多次元尺度法を活用しプロダクトマップを作成することで、類似性の高い商品をグルーピングできます。 例えば、自社商品のビールとおつまみがプロダクトマップ上で近い場合、ビールを購入した客はおつまみも買う傾向が高いと予測できます。

上記は簡単な例ですが、意外な商品がプロダクトマップ上で近い距離を示す場合があります。 これらの商品を同じ箇所に配置をすることで、セット購入を促進できる可能性が高まります。

併せてネットショッピングでも同様に、レコメンド機能として利用できます。

事例3.自社のブランディング戦略

多次元尺度法を活用すると、顧客がもつ自社のイメージを視覚的にわかりやすい図式で示せます。 よって多次元尺度法は、自社のブランディング戦略にも応用できます。

例えば高級食品メーカーとしてブランディングをしている企業が、中長期的な戦略策定を行うために多次元尺度法を活用したとします。 ポジショニングマップを作成した結果、顧客から大衆的な食品メーカーだと認識されていたことが判明しました。

顧客との認識のズレを把握することで、今までの商品プロモーション方法やブランディング戦略を再度見直す必要性が出てくるでしょう。 このように、自社のブランディングのズレを発見するという点でも、多次元尺度法を利用できます。

まとめ

ここまで多次元尺度法の概要から、活用事例、クラスター分析・主成分分析との違いを解説しました。 多次元尺度法を実際に活用する場合、全て自社で行うと時間的・工数的にコストがかかるので、調査会社をうまく活用することをおすすめします。

また多次元尺度法以外の分析方法も理解すると、会社の課題に役立つ分析方法が見つかるかもしれません。 自社データを上手に活用し、マーケティング活動にぜひお役立てください。

サービス概要を無料配布中「3分で読めるGMOリサーチのサービス」
3分で読めるGMOリサーチのサービス
最後までお読みいただきありがとうございます。
GMOリサーチはお客様のマーケティング活動を支援しており、さまざまなサービスを提供しております。
  • スピーディーにアンケートデータを収集するには
  • お客様ご自身で好きな時にアンケートを実施する方法
  • どこの誰にどれくらいリーチができるか
などをまとめた資料をお配りしております。
ぜひこの機会にお求めください。
資料請求する