プロダクトアウトとマーケットインの違いとは?メリット・デメリットや事例を解説
2022年08月26日
製品やサービスの開発方法には、プロダクトアウト(自社の技術や方針など優先して製品を開発する)とマーケットイン(顧客ニーズを起点に製品やサービスを開発する)の2種類があります。
プロダクトアウトとマーケットインは、それぞれ特徴と留意点が異なるので自社の方針に沿った施策を選択することが大切です。
今回はプロダクトアウトとマーケットインの違い、成功事例を紹介します。
プロダクトアウトとマーケットインの違い
「プロダクトアウト」と「マーケットイン」は、製品開発の方向性に大きな違いがあります。
- プロダクトアウト:自社の強みとなる技術や企業方針を基準として、サービスや製品を開発すること。
- マーケットイン:市場調査結果をもとに顧客ニーズを把握し、「顧客が求めるもの」を優先して製品を開発すること。
どのような商品開発の方針であっても、もっとも重要なのは「顧客に選ばれるプロダクトを作ること」です。
製品開発の現場においては、両方の要素を取り入れて開発するケースも珍しくありません。
どちらかの方針に偏ることなく、独自技術を活かしながら顧客ニーズも満たせる製品を目指しましょう。
プロダクトアウトとは
プロダクトアウトとは、自社の強みや技術を活かしたサービスや製品を開発する方法です。
- 「作り手が良いと思ったものを作る」
- 「良い製品を作れば売れる」
このような企業主体の考えが基本となっています。
プロダクトアウトの考え方のもとで商品開発をすると、企業や担当者の意向が大きく反映された製品が完成します。
プロダクトアウトの特徴
プロダクトアウトの具体的な特徴として挙げられるのは、主に以下の3点です。
- 自社の技術を活用できる
- 革新的な製品を生み出す可能性がある
- 開発コストを抑えられる
1.自社の技術を活用できる
プロダクトアウトでは、自社の持っている技術や強みを活かした製品開発が可能です。
自社の持っている技術を最大限に活用することで、競合には真似できない製品を作ることができます。独自性の高いプロダクトであれば、一気に売上を伸ばせるでしょう。
2.革新的な製品を生み出す可能性がある
プロダクトアウトでは、自社の強みを起点に商品開発に取り組むため、これまでの市場にないような革新的な製品を生み出せる可能性があります。
顧客自身も気付いていない「潜在的なニーズ」を満たす製品が開発できれば、爆発的なヒット商品になることもあります。
3.開発コストを抑えられる
プロダクトアウトでは、自社が保有する技術や製造レーン、経験値の高い人材を活用することができれば、商品開発のコストを抑えることも可能です。
プロダクトアウトでの商品開発であれば、新しい機材の導入や人材増員といった追加コストを抑える形で進められるケースも多いです。
プロダクトアウトの留意点
プロダクトアウトの留意点は、主に以下の2点です。
- 製品を作っても売れない可能性がある
- 売れなければ改善や戦略の見直しが必要
製品を作っても売れない可能性がある
プロダクトアウトでは自社の意向を優先させて製品開発をするため、リリースするまで顧客の反応が分かりません。
市場のニーズとズレてしまうと、自社で良いと考えて作った製品でも顧客から思ったような反応が得られず、売上を伸ばせないこともあります。
開発した製品が売れなければ、在庫を抱えて赤字となるリスクがあります。
売れなければ改善や戦略の見直しが必要
製品の売り上げが伸びなかった場合は「なぜ売れなかったのか」という理由を見つけて、検証しなくてはなりません。
- 「そもそも市場に合わなかったのか」
- 「製品の機能が悪いのか」
- 「プロモーション方法が間違っていたのか」
これらを1つずつ見直すための市場調査や製品の改善には、多額のコストと時間がかかります。
マーケットインではあらかじめ市場を調査しておくので、売り上げ予想との大幅なズレは生まれにくいですが、プロダクトアウトの場合はそうではないケースもあります。
想定外の結果が出てしまったとき、起動修正するためには時間も費用もかかることが多いです。
製品をリリースしたあとも、さまざまな費用が発生する可能性があることを把握しておきましょう。
マーケットインとは
マーケットインとは、顧客のニーズに合わせたサービスや製品を開発することです。
事前にアンケートや市場調査などを行い、顧客ニーズを把握してから商品の製造をはじめます。
企業が作りたいものではなく、「顧客が求めているものを作る」という考えが基本です。
マーケットインの留意点
マーケットインの具体的なメリットは、主に以下の3点です。
- 顧客ニーズを満たした製品が提供できる
- 製品を効率よく作れる
- 売上予測を立てやすい
1.顧客ニーズを満たした製品が提供できる
マーケットインの手法では、顧客のニーズをリサーチしてから開発するので、ニーズにマッチした製品が完成することになります。
顧客のニーズを満たすことで、ファンを増やしてリピート率が上がる効果も期待できます。
また、顧客ファーストの企業姿勢を打ち出すことで、会社のイメージアップやブランディングにもつながるでしょう。
2.製品を効率よく作れる
マーケットインでは、市場調査の結果をもとに商品開発をするため、「自社が行うべき施策」「開発目標」が明確になります。
施策や開発目標が明確になることで、必要な部分にだけ試作費や広告宣伝費を投入できるため、余計なコストをかけずに効率よく製品開発を行えます。
3.売上予測を立てやすい
顧客ニーズを把握してから商品を開発するため、ある程度の売れ行き予測が立てられる点もマーケットインのメリットです。
売上予測が立てやすいことで、開発コストや販売後に使える販促や広告の予算なども算出しやすくなります。
全体的な費用感が把握しやすいため、スムーズに商品開発が行えます。
マーケットインのデメリット
マーケットインのデメリットは、主に以下の2点です。
- 「驚き」を与える商品は生み出しにくい
- 競合他社に類似製品を開発される可能性がある
1.「驚き」を与える商品は生み出しにくい
マーケットインの弱みは「顧客が想像できる範囲内の製品」しか、作り出せないことです。
リサーチを行ってから作るので「こんな商品、今までに無かった」と、驚きを与えるような製品にはなりにくいと言えます。
ニーズに基づいた製品であればある程度の売上は期待できますが、大ヒットと呼ばれるようなものは生まれにくいでしょう。
顧客ニーズを優先して商品開発を行うので、自社ブランドのイメージと乖離した製品作りを求められることもあります。
2.競合他社に類似製品を開発される可能性がある
マーケットインでの製品開発は独自性を生み出しにくくなります。
表層化しているニーズはある程度同じものになるので、ゴールとなる製品も似てしまうからです。
独自の技術がないと真似されてしまう製品は、他社に類似製品を作られてしまう危険性もあります。
マーケットインで独自性を出すためには、事前の細やかなリサーチが鍵となるでしょう。
プロダクトアウト・マーケットインの成功事例
プロダクトアウトとマーケットインで成功を挙げた2社の企業事例を紹介します。
- プロダクトアウトの成功事例:IT機器メーカーA社
- マーケットインの成功事例:調味料メーカーB社
【プロダクトアウトの事例】IT機器メーカーA社
IT機器メーカーのA社は、自社の持つ技術や発想力、デザイン性を活用し、携帯電話の新たな形を作り出すことで製品開発を成功させた企業です。
従来の「携帯電話」の枠を超え、カメラ・GPS・音楽プレイヤーの役割を持たせて、他社が真似できない洗練されたデザインのプロダクトをリリースしてきました。
A社の創業者は「消費者の多くは、形を見せてもらわないと何が欲しいのかわからないものだ」と論じています。
独自性の高い製品が顧客の心を掴み、2007年の発売から19億台以上の販売実績を上げる大ヒット商品となりました。
発売当時、国内の携帯電話といえば「ガラケー」が主流でしたが、この製品のヒットをきっかけに「スマートフォン」の概念が広がることになります。
企業の信念と技術を持って開発した製品が、顧客に受け入れられた成功事例と言えるでしょう。
【マーケットインの事例】調味料メーカーB社
調味料メーカーB社は新製品のソースを作るために、マーケットインの手法を用いて商品開発に取り組みました。
開発当時、会社の所在地である広島県内には多数の競合メーカーがあり、売り上げは芳しくありませんでした。
そこで、自社製品の改善点を探すために広島の飲食街を周り、店主への聞き込みを実施します。
リサーチの結果、「ウスターソースをお好み焼きにかけると蒸発した際にむせる」というユーザーの生の声を拾うことに成功しました。
飲食店の店主の意見を元にソースのとろみや旨味を調整し、広島県の名物でもある「お好み焼き専用ソース」を完成させます。
顧客の声から生まれたお好み焼き専用ソースは大ヒットし、発売から数十年の時点で、B社の売上高の3割を占める主力製品となりました。
まとめ
プロダクトアウトでは企業が自社の技術で作りたい商品を開発し、マーケットインでは顧客の声を先に集めてから製品作りに取り掛かります。
それぞれにメリット、デメリットがあるので、自社の商品やサービスに合った進め方を選択してみてください。
ただし、プロダクトアウトとマーケットインの考え方は、どちらかひとつに絞る必要はありません。
それぞれの良い点を取り入れながら、顧客が喜ぶ商品の開発に取り組むとよいでしょう。
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