STP分析におけるセグメンテーションとは?意味や分析方法・成功事例を解説
2021年12月15日
マーケティング戦略や販売戦略を考える際、押さえておきたい「STP分析」という分析手法があります。
STP分析とはアメリカの経済学者フィリップ・コトラーによって提唱された、マーケティング戦略における基礎的なフレームワークです。STP分析は1970年代に編み出された手法ですが、今でも多くの企業が活用しており、モノやサービスの過剰供給で、消費行動やライフスタイルが多様化した現代社会においても有効な手法だと考えられます。
本記事ではSTP分析の中でもセグメンテーションに焦点を絞り、意味や具体的な分析方法や成功事例等をまとめています。
セグメンテーションとSTP分析
セグメンテーションとは、アメリカの経済学者フィリップ・コトラーが提唱したSTP分析における一つの要素であり、「市場の細分化」を意味します。
STP分析はマーケティングにおける基礎的なフレームワークの一つであり、ビジネスを取り巻く環境を理解するツールとしても有用です。
具体的には以下3つの要素から構成されています。
- Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化する
- Targeting(ターゲティング):市場の中から狙うターゲットを決める
- Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を決める
セグメンテーションとは市場を細分化すること
ではSTP分析におけるセグメンテーションについて、詳しく見ていきましょう。
セグメンテーションとは、市場を特定の属性によって分類し、細分化することです。
マーケティング戦略で活用されるセグメンテーション分析とは、市場や顧客を性質やニーズごとにグループ分けすることを指します。
またセグメントとは、セグメンテーション分析で区分されたグループそれぞれを意味します。
マーケティング戦略においては、ターゲット顧客層を限定するために、セグメンテーション分析が行われます。不特定多数からターゲットを特定するためにも、セグメンテーション分析を行い、より商品やサービスの利益向上を図ります。
ターゲティングとの違い
ターゲティングとは、細分化した市場や顧客の中から、自社の商品やサービスの特徴に適した集団を対象を絞り込みアプローチすることを指します。そのためセグメンテーションを行った後に、ターゲティングを行うのが一般的です。
マーケティング戦略において、ターゲティングはペルソナとよく混同されることがありますが、ターゲティングは「集団」、ペルソナは「個人」と対象が異なっています。
セグメンテーション分析における4つの分類方法
セグメンテーション分析は、主に4種類の分類方法があります。
- 人口統計的属性での分類
- 地理的属性での分類
- 行動的属性での分類
- 心理的属性での分類
セグメンテーション分析における切り口はさまざまありますが、基本的には上記4つの属性を押さえておくと良いでしょう。
人口統計的属性での分類
人口統計的属性は、別名「デモグラフィック属性」とも呼ばれており、対象を年齢や性別、学歴等で分類します。
【分類の参考例】
- 年齢:30代〜40代、20代以降 など
- 性別:男性、女性 など
- 学歴:高卒、大卒 など
- 職業:エンジニア、デザイナー、マーケター など
- 年収:500万以上〜600万未満 など
- 家族構成:独身、既婚、子供の有無 など
人口統計的属性でのセグメンテーションはよく使われる分析方法ではありますが、実際には一つの属性だけで分類するのは難しいです。
というのも人口統計的属性は大枠でグループ分けをする際に使われることが多く、より詳しく顧客ニーズに沿って分ける際には不十分であるためです。
またライフスタイルや消費行動が多様化したことで、従来考えられていた消費とデモグラフィックの関係が実情とそぐわなくなってきたことも要因の一つです。
そのため行動的属性や、心理的属性などと組み合わせて分析を行うのが一般的だといえます。
地理的属性での分類
地理的属性での分類は、別名「ジオグラフィック属性」とも呼ばれており、地理的要素で分類します。
【分類の参考例】
- 世界の地域:アジア、北アメリカ、、EU諸国、オセアニア など
- 日本の地域・地方:東日本、西日本、都道府県別 など
- 気候・地形:降雨量、標高差、気温、湿度 など
- 人口密度:都市部、郊外 など
地理的属性での分類は、住んでいる場所や気候や気温などマクロな視点から対象を分類する際に活用します。
特に生活用品や家電製品などの住んでいるエリアや気候等で、売り上げに影響が出やすい商品やサービス等を扱う時に有効です。
行動的属性での分類
行動的属性での分類は、対象の消費行動を参考にして分類する方法です。
【分類の参考例】
- 購入時間帯:昼間、夕方、夜 など
- 購入経路:ECサイト、SNS、オウンドメディア など
- 利用頻度:ライトユーザー、ミドルユーザー、ヘビーユーザー など
- 商品やサービスの利用シーン:台所、お風呂、オフィス、カフェ など
これまでは不特定多数へ向けたマスマーケティング手法が主流だったこともあり、消費者向けの商品やサービスを提供する際には、人口統計的属性と地理的属性の2つを使うのが一般的でした。
しかし最近では、SNSやECサイトの利用者増加や、消費者ニーズの多様化に伴い、より行動的属性や心理的属性も重要視されています。
心理的属性での分類
心理的属性での分類は、別名「サイコグラフィック属性」とも呼ばれており、対象のライフスタイルや価値観等に基づいて分類する方法です。
【分類の参考例】
- 価値観・ライフスタイル:オーガニックを好む、ブランド重視 など
- 性格:明るい、物静か、ポジティブ、ネガティブ など
- 趣味:スポーツ、音楽、ゲーム など
- 嗜好:辛い物好き、甘いものが苦手 など
消費行動は心理的要因に紐づいて行われることが多いため、心理的属性でのセグメンテーション分析は、顧客心理の理解につながると考えられます。
セグメンテーション分析で重要な4つの判断基準
セグメンテーション分析では、市場の細分化自体は無限に行えます。
ただし意味のあるセグメンテーションを行うには、適切な細分化が必要です。
そこでセグメンテーション分析では、セグメントの有効性を判断するために、4つの基準が設けられています。
- 優先順位(Rank)
- 規模の有効性(Realistic)
- 到達可能性(Reach)
- 測定可能性(Reslionse)
上記4つの基準は4Rと呼ばれ、市場の闇雲な細分化を防止しています。
セグメンテーション分析を行う際には、最終的に4つの基準全てをを満たしているか確認しましょう。
優先順位|Rank
優先順位では、自社の経営戦略に適したセグメントであるかを確認します。
自社の商品やサービスを他社と比較して、優先順位の高いセグメントからターゲティングを行います。
規模の有効性|Realistic
セグメンテーション分析を行いセグメントを細分化しても、市場規模が小さければ得られる利益も小さくなります。逆に市場規模が大きすぎても、有効なマーケティング戦略につながりにくいと言えます。
よってセグメンテーション分析を行う際には、セグメントにおける市場規模の有効性も考慮する必要があります。
到達可能性|Reach
到達可能性では、セグメントに対して自社の商品やサービス、プロモーションが提供できるのか判断します。
いくらセグメントが自社の経営戦略にマッチしていても、提供する難易度が高いと無駄にコストがかかるため、不適切といえます。
測定可能性|Response
測定可能性では、セグメンテーション分析で細分化したセグメントから、市場規模や購買力・特性等を明確に分析できるかを判断します。
マーケティング施策後にセグメントの反応を測定・分析することで、セグメンテーションの有効性を判断できる他、その後の改善につなげやすくなります。
セグメンテーション分析を行う上での注意点
セグメンテーション分析は優れた分析手法ですが、精度の高い分析を行うためにも実施する際は以下2つの点に注意しましょう。
- ターゲティングとの関連性を考慮する
- 市場を細分化し過ぎない
ターゲティングとの関連性を考慮する
セグメンテーション分析は、次のステップであるターゲティングに役立てるために行うことが重要です。
よってセグメンテーション分析であまりにもセグメントが現実から乖離しては、ターゲティングにつなげにくくなります。
そのためセグメンテーション分析を行う際は上記で説明した4つの判断基準と合わせて、ターゲティングとの関連性にも考慮して行いましょう。
市場を細分化し過ぎない
セグメンテーション分析は、市場を細分化し自社のマーケティング/販売戦略に適したターゲットを絞り込むのが狙いですが、市場を細分化しようとついセグメントを絞り込みすぎてしまう例も少なからずあります。
セグメントは絞り込みすぎ/広げすぎ、どちらの場合でもその後のターゲティングにつなげにくくなり適切な分析が行いづらくなるためセグメンテーション分析では上記で説明した4つの判断基準を基準にし、セグメントの有用性を担保した上で、次のターゲティングを行いましょう。
セグメンテーション分析を活用した企業の成功事例
セグメンテーション分析を実際に活用し、成功した企業の事例をいくつかご紹介します。
飲食業界|タバコを吸わない人を対象としたセグメント施策
外資系飲食店A社は、アメリカを発祥としたコーヒーチェーン店であり世界各地に店舗を抱える有名企業の一つです。
A社は1980年代後半に喫煙可能な飲食店が多い中、タバコの匂いが嫌いな人や禁煙者たち向けに、喫煙スペースの少ない店舗を作りました。もともとA社の本国アメリカでは全店舗禁煙であり、創業者は「コーヒー本来の香りを存分に楽しんでほしい」という、禁煙に対して強いこだわりがあったことが関係しています。
1980年代といえば、今ほど喫煙者に対しての風当たりも強くなく、喫煙可能な飲食店も多い時代でした。
多くの飲食店では禁煙にすることで売上低下が危惧されることから、タバコを吸いたい人を断る行為は非常に勇気がいるものでした。
A社のセグメンテーション分析は、店舗側自ら「タバコを吸わない人」とA社の思いが合致する顧客にセグメントを合わせたといえます。
結果、喫煙スペースを徐々に縮小しながらも売上は落ちることなく、喫煙スペースの縮小は来店する客層の変化をもたらし、今まで主要なターゲットではなかった若い女性も多数来店するようになりました。
最終的に店舗は全面禁煙に成功し「タバコのない空間で楽しむコーヒー店」として、市場で新たなセグメント獲得に至ったのです。
食品メーカー|高所得者の大人に絞ったセグメント施策
食品メーカーB社は、アイスを子供向け商品であるという固定概念を覆し、大人向けアイス市場を確立した企業です。
かつてアイスといえば子供をターゲットとした商品というイメージが一般的であり、大人がアイスを食べる機会はそれほど多くありませんでした。そこで1980年代前半にB社はアイスを購入する消費者を年齢や性別、職業など複数のセグメントで分類を行いました。
その中から可処分所得の高い大人をターゲットに、ちょっと贅沢なアイスを最初に売り出しました。
当時アイスの値段は50円ほどで購入できる中、B社は価格を数百円と高めに価格設定を行い、20代〜30代の大人向けに売り出したのです。同時に実店舗を閉鎖し、パッケージ商品のみを流通させる戦略を行いました。
その結果「大人がちょっと贅沢したい時にすぐに食べられるアイス」として認知が広がり、独自のセグメント創出につながったのです。
B社の事例は複数のセグメントからターゲットを絞り戦略に舵を切ったことで、ブランディングにつながり、最終的に成功に結びついた良い事例だといえます。
まとめ
ここまでセグメンテーション分析の意味や分類方法、成功事例などを網羅的に解説しました。
セグメンテーション分析はSTP分析における最初のステップであり、有効なターゲティングやポジションニングを行うためにも重要な工程だといえます。
タイミングに合わせてセグメンテーション分析を定期的に行い、自社を取り巻くビジネス環境を把握した上で営業戦略を練り、効率的に利益向上を目指しましょう。
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