標準偏差とは?ビジネスでの活用方法と求め方を解説

2021年07月26日

標準偏差とは?ビジネスでの活用方法と求め方を解説

標準偏差とは統計学の指標の一つで、あるデータが平均値からどの程度外れているかを示す指標です。
受験でよく用いられる「偏差値」にも用いられる考え方だと聞けば、馴染みやすいかもしれません。

ところで、標準偏差はデータ分析や品質管理など、ビジネスの場でも非常に有用だということはご存知でしょうか?

例えば、企業が行うアンケート調査で得られたデータを分析する際や、商品の在庫管理を行う際に標準偏差が役に立ちます。
本記事では、ビジネスシーンにおける標準偏差の活用法や実際の求め方について解説します。

標準偏差とは?

標準偏差グラフ

標準偏差とは、英語ではstandard deviationと表される統計学の指標の一つです。単語の頭文字をとってSDと表記されることもあります。

標準偏差とは簡単に言うと、平均からのズレを表す数値のこと。標準偏差を求めることで、平均に対する数値の散らばり具合(ばらつき)を知ることができます。

◆ポイント

標準偏差とは、データが平均値からどれぐらい散らばっているかを示す指標

下の図で、赤いグラフと青いグラフはどちらも同じ「平均=100」です。
しかし、そのグラフの中身には見て分かるとおり大きな違いがあります。
違いの理由が「標準偏差」です。

青いグラフはデータ全体がほとんど平均値である100に集中しています。ですから青いグラフは数値のばらつきが少なく「標準偏差が小さい」と言えます。
一方、赤いグラフは、数値がマイナスから200以上までバラバラです。赤いグラフは「標準偏差が大きい」と言えます。

 

標準偏差グラフ2

ビジネスで標準偏差を活用する場面

標準偏差はビジネスシーンでは具体的にどのように活用されているのでしょうか?

◆標準偏差の活用例

  1. 品質管理
  2. リスク管理
  3. データ分析

活用1.品質管理

商品の質はなるべく揃えたいものですが、完全に同じ状態の商品を作るのは難しいこともあります。

「サイズや重さの個体差をどの程度まで許容するか」
「どのぐらいの商品が規格外になってしまうのか」

といった予測を立てるために標準偏差を用いることがあります。

例えば、一辺3mの資材の商品があったとします。
しかし、一つは2m95cm、また別のものは3m2cmといったように個体差が大きいと品質がいいとは言えません。

粗悪品はクレームにつながる可能性もあります。検査の結果あまりにも標準偏差の大きい商品なのであれば、検査やフローを見直す必要があるかもしれません。

こういった場合にも、標準偏差を活用し品質のばらつきを数値化すれば、品質担保を達成しやすくなります。

活用2.リスク管理

ビジネスにおいて何らかの判断を下す際にはリスクが伴います。

プロジェクトの目的にもよりますが、予測される利益にばらつきがあるとその選択はハイリスクといえるでしょう。

例えば、1日に平均で100個売れる商品があり、その商品の標準偏差が20だったとします。
すると、売れ行きの良い日は120個売れ、売れ行きの良くない日は80個しか売れないという予測を立てることができます。 標準偏差をもとに商品を入荷することで、多く入荷しすぎてしまったり、在庫切れになって販売の機会を逃すということが起こりにくくなります。

ちなみに、この標準偏差をもとに実際何個商品を入荷するかは、どこまでの欠品を許容するかというところが大きく影響してきます。

例えば、日持ちのしない生鮮食品の販売店などでは在庫を多く抱えて売れ残りの商品が出るのは避けたいですよね。
そのため生鮮食品の場合は、標準偏差±1α程度の個数が売れると仮定して入荷数を検討すると考えられます。もしかすると偶然、商品が多く売れる可能性はありますが、日持ちのしない商品の場合は「欠品するリスク」よりも「在庫を処分するリスク」を避ける方が賢明でしょう。

逆に、洋服などの日持ちのする商品なら欠品の許容度を下げても、在庫を長期間抱えられるため大きな問題にはなりません。そのため、標準偏差±2α程度の個数を入荷しても良いという判断になるでしょう。

標準偏差を用いることで、考えられる利益の数値を出すことができ事業のリスク管理が可能になるのです。

活用3.データ分析

アンケートや売上数など、データをもとに戦略を立てることは多々あります。

データを扱うとき、平均値を見たり属性ごとの偏りを見たりするのは一般的ですが、このとき標準偏差を見ると、さらに全体的なデータの傾向が掴みやすくなり、解釈に役立つことがあります。

例えば、「AとBの商品に100点満点で点数を付けてください」というアンケートを実施し結果は両方とも平均60点となったとします。
しかし細かくアンケート内容を見てみると、Aの商品は平均の数値の近く50~70点の間の評価をした方が多く、Bは商品の今までにない画期的な様子から一部の人からは70~80点という高評価を得ながらも、一方で全くわからないという層からは20~40点の評価を受けていることがわかることがあります。

同じ平均60点でも、この内容を見れば打つべき施策がまったく違ってしまいます。

平均値のみを見ると低くも高くもないととれるかもしれませんが、標準偏差を用いることで違った見え方、分析が可能になるのです。

標準偏差の求め方

標準偏差は、対象データの値と平均との間にある差を2乗したものを合計し、データの総数で割った正の平方根から求めることができます。

 

標準偏差の数式

 

公式にすると少しわかりづらいので、標準偏差の求め方を順序だてて説明しましょう。

◆標準偏差の求め方

  1. 平均値を求める
  2. 偏差(データ - 平均値)を求める
  3. 分散(偏差の二乗平均)を求める
  4. 分散の正の平方根を計算する

 

標準偏差の数式2

 

具体例を見てみましょう。

Aという商品が5日間で売れた個数から標準偏差を求めます。
5日間でAの売れた個数は以下とします。

1日目・・・100個
2日目・・・110個
3日目・・・70個
4日目・・・50個
5日目・・・120個

毎日の仕入れは120個としたとき、その判断が妥当だったのかどうか標準偏差を用いて考えて見ましょう。
まずはこの5日間の売上数の標準偏差を求めてみます。

求め方1.平均値を求める

まずは、5日間の売上数の平均値を求めます。

(100+110+70+50+120)÷5=90

5日間の売上数の平均は、90個でした。

求め方2.偏差(数値 - 平均値)を求める

偏差というのは、平均からどれぐらい数値が離れているかを示したものです。

各売上数から平均値を引き、偏差を割り出します。

売上数 偏差
1日目 100 100-90=10
2日目 110 110-90=20
3日目 70 70-90=-20
4日目 50 50-90=-40
5日目 120 120-90=30

 

 

偏差

 

偏差が分かると、標準偏差も理解できるようになります。

というのも、標準偏差はまさに「標準的な偏差」なので、各数値が標準的にどのぐらい平均から離れているものかを示しているのですね。

「偏差を平均したら標準偏差になるのでは?」とつい思いますが、
実際にやってみようとすると、

10+20-20-40+30=0

偏差自体を足し合わせると0になってしまい、平均値が取れません。

偏差は各データと平均との差なので、すべてを足し合わせればプラスマイナスが相殺されて必ず0になってしまうのです。
だから、標準的な偏差を知るために「二乗にしてから正の平方根をとる」という方法でマイナスの符号を除去しているのですね。

求め方3.分散(偏差の二乗平均)を求める

今度は分散を求めていきます。

分散

 

分散というのは、偏差を二乗したものの平均のことです。
5日間の売上数の分散を出すために、各偏差を二乗してすべて足し合わせたあとに、データ数で割り算をします。

{10^2+20^2+(-20)^2+(-40)^2+30^2}÷5=680

(※「^」はキャレットと読みます。^2は二乗するという意味です)

これで、今回の例の分散=680ということが分かりました。

分散とは、平均を中心とした際にそれぞれの数値がどれくらい散らばっているかを表す数値です。例えば、分散=680の集団と分散=100の集団がある場合、分散=680の集団の方がデータに散らばりがあることになります。逆に、分散の値が0に近いほど、データの数値が散らばっておらず平均値に近いデータが多いということがわかります。

求め方4.分散の正の平方根を計算する

分散は偏差の二乗なので、単位を元に戻すために平方根を計算します。

平方根は、二乗の逆で、下のような関係になっています。

◆例

2=√2*√2 もしくは (-√2)*(-√2)
2の平方根は±√2

今回のデータの分散である680は、標準偏差を二乗したものです。

 

分散2

 

ですので分散の平方根をとり、標準偏差を求めます。

680=(標準偏差)^2
√680=±26.07680962
標準偏差=26.07680962

これにより今回の標準偏差が26.07680962であるということが分かりました。

さて、平均数に対しての標準偏差は26.07680962でしたので、キリよく26個としましょう。

これが何を示しているかというと、この商品がよく売れる日は90+26でおよそ116個、あまり売れない日は90-26でおよそ64個しか売れないということです。そして、よく売れる日には平均に標準偏差1個分を足したことになるので、商品が116個以上売れるのは全体の16%ということになります。つまり100回のうち、16回は商品が116個以上売れるとも言い換えられます。また、売れない日も同様に、売れた商品が64個以下になるのは100回のうち16回のみだと分かります。

 

図解1

 

このように、標準偏差の考え方を使うと、この商品のおおよその売上予測を立てることができるのです。

 

図解2

 

例なので5つの数値のみで計算しましたが、データが多くなればなるほどより正確な情報を導き出すことができ、有益な示唆に繋げることが出来ます。

標準偏差は、エクセルやツールを使えば簡単に計算できるので、ぜひ一度試してみてください。

 

図解3

まとめ

標準偏差を用いて考えると、収集したデータを分析し、アンケート結果をより深く読み解いたり、品質管理をしたり、適切な在庫数を知ることができたりとビジネスでより役立つ分析が可能になります。

標準偏差を用い、データ分析をすることで得た情報を適切に分析しリスクマネジメントや品質管理に活かしましょう。

サービス概要を無料配布中「3分で読めるGMOリサーチ&AIのサービス」
3分で読めるGMOリサーチ&AIのサービス
最後までお読みいただきありがとうございます。
GMOリサーチ&AIはお客様のマーケティング活動を支援しており、さまざまなサービスを提供しております。
  • スピーディーにアンケートデータを収集するには
  • お客様ご自身で好きな時にアンケートを実施する方法
  • どこの誰にどれくらいリーチができるか
などをまとめた資料をお配りしております。
ぜひこの機会にお求めください。
資料請求する