商圏調査とは?具体的な活用シーンや調査方法、実施の注意点を解説

2022年03月15日

商圏調査

商圏調査では、消費者が自社店舗に来店できる範囲を調査し、競合の有無・地域住民の層・世帯数などをチェックします。

世帯数などを知ることで、新規出店の可否判断や地域に合わせたマーケティング施策の実行に活用できます。

この記事では商圏調査の活用シーンや具体的な方法、調査に役立つ無料サイトについて解説します。

商圏調査とは

そもそも「商圏」とは、自社店舗で集客できる距離的範囲のことを指します。

商圏調査とは、以下のような項目を調査して商圏の特性を探し出し、商圏内におけるビジネスの可能性等を確認する調査のことです。

◆商圏調査の項目例

  • 人口動向
  • 地域住民の年齢
  • 世帯構成
  • 世帯年収
  • 性別
  • 競合情報
  • 車の所有率
  • 普段の移動手段
  • 交通量
  • 駐車場の有無

など

調査を実施し商圏の特徴を知ることで、自社店舗に来店が見込めるおおよその顧客数等が把握できます。

商圏を示す際は、自社店舗を基準とした同心円を地図上に描きます。

同心円画像

参考: j STAT MAP/総務省統計局 をもとに例として作成   

地図に同心円を描き商圏エリアを示したものを「円商圏」といいます。

円商圏の区分

円商圏では、自社店舗を中心として同心円を描きます。

円の半径によって自社の商圏範囲は変わりますが、一概に距離が近いほどよいわけではなく、適切な商圏範囲は主に以下の要素によって定まります。

 
  • 自社の業態
  • 競合の存在
  • 人口動態
  • 地域住民の主な移動手段
 

具体的な商圏範囲は、以下3つに分類できます。

◆商圏範囲の分類

第一次商圏(最寄品商圏)
ほぼ毎日、消費者の来店が見込める商圏。
徒歩で10分程度の距離。
例)コンビニ・飲食店・スーパー
第二次商圏(中間品商圏)
週102回程度、消費者の来店が見込める商圏。
自転車で15分程度の距離。
例)居酒屋・クリーニング店・ドラッグストア
第三次商圏(専門品商圏)
3ヶ月に1回程度、消費者の来店が見込める商圏。
車で30分程度の距離。
第一次商圏・第二次商圏と比較して、日常的に利用されることは少ない。
例)レストラン・学習塾・家電量販店・衣料品店

自社業態や競合の有無を考慮して商圏を定めることで、店舗への来店を促せます。

例えば、日常的に利用するコンビニを第三次商圏に出店すると、消費者は距離が近い競合店舗を利用する可能性が高いです。

商圏調査のメリット

商圏調査を実施するメリットは以下の3つです。

  • 地域特性に合わせた施策を実行できる
  • 競合を把握し差別化が図りやすい
  • 売り上げ予測が把握しやすい

地域特性に合わせた施策を実行できる

新店舗出店を含め自社施策を展開する上では、ターゲット層の特徴に合わせた対応が重要です。

商圏調査では人口動向・世帯構成・平均年齢など多くの項目をもとに、ターゲットや地域の特徴を明確にするため、状況に合わせた適切な施策を実行できます。

具体的に商圏調査の結果は、以下のシーンで活用できます。

◆商圏調査結果の活用シーン例

  • 新店舗出店時の地域住民からのニーズ調査
  • 地域の年齢層に合わせたキャンペーン施策の実施
  • 街頭サンプリングなど販促活動の実施

競合を把握し差別化が図りやすい

自社商圏内に競合店舗が出店している場合、差別化施策を実行して他社との優位性を打ち出す必要があります。

商圏調査では競合の情報も確認するため、具体的な差別化戦略の打ち出しに役立ちます。

◆競合調査項目例

  • 営業時間
  • 価格帯
  • 客層
  • 商品ラインナップ
  • 接客の質

など

売り上げ予測が把握しやすい

商圏調査では、将来的な売り上げ予測も立てやすいのが特徴です。

例えば厚生労働省が実施する 「人口動態調査」 を活用することで、人口数の推移が把握できるため、将来的な売り上げ予測が立てられやすくなります。

商圏調査の活用シーン

商圏調査は、主に以下のシーンで活用できます。

  • 新店舗開発前の立地分析
  • 開店後の効果検証
  • 販売促進活動の策定

新店舗開発前の立地分析

商圏調査では、新店舗出店を検討する地域において、主に以下の項目を分析します。

  • 競合調査
  • 人口動態
  • 住民の年齢層
  • 世帯年収
  • 主な交通手段
  • 将来的な土地開発の可能性

など

商圏内の住民の特徴や土地の状況を把握することで、自社店舗を出店した際に、商圏範囲内のターゲットからどの程度、来店が見込めるかを分析できます。

例えば住民の転入出が激しい地域では、店舗への継続的な来店が見込みにくいため、スポーツジムなど会員制ビジネスの展開には不向きです。

このように、商圏内の状況を調査することで出店の可否を適切に判断しやすくなります。

商圏近辺に自社の既存店舗が出店している場合、新規店舗と顧客の取り合いにならないかもチェック可能です。

開店後の効果検証

商圏調査は、開店後の効果検証にも活用できます。

地域住民や土地の状況を分析し新規出店しても、開店後は以下のように出店前の予測とズレることがあります。

  • 想定していた月間の来店数に届かない
  • 想定よりも客単価が伸びない
  • 想定地域からの顧客を呼び込めていない

予測した成果が出せない場合は、再び商圏調査を活用して、出店前との比較検証を実施することが重要です。

開店後に行う商圏調査例としては、消費者へのアンケート調査などが有効です。

収集した消費者の意見をもとに問題点を把握することで、有効な改善施策の策定に役立ちます。

販売促進活動の策定

商圏調査では、世帯数・住民の年齢層・世帯年収などを調査します。そのため、自社商圏のターゲット層に合わせた販売促進活動の策定につなげることが可能です。

◆販売促進活動の例

  • ポスティング
  • 街頭サンプリング
  • 店頭実演販売

商圏調査の具体的な手順

商圏調査は以下の手順で実施します。

  1. 商圏調査の目的策定
  2. 商圏調査エリアの策定
  3. 商圏調査方法の選択
  4. 商圏調査結果の集計と分析

1.商圏調査の目的策定

最初に商圏調査の目的を定めます。

商圏調査には多数の調査項目がありますが、すべてを確認するのは手間や時間がかかります。

必要な項目に絞って調査するためにも、商圏調査の目的策定は重要です。

◆商圏調査の目的例

  • 新店舗出店前に立地の状況や地域の特性を把握したい
  • 地域住民の特性に合わせて適切なキャンペーンを実行したい
  • 既存店舗の売り上げ低迷理由を分析・改善したいなど

2.商圏調査エリアの策定

商圏調査の目的が定まった後は、大枠で自社の商圏を定めます。

自社商圏を定める際は、以下のツールを活用することが多いです。

◆商圏調査エリア策定に有用な無料サイト

3.商圏調査方法の選択

自社商圏が大枠で定まったら、具体的な商圏調査方法を選択します。

商圏調査にはさまざまな方法がありますが、実質商圏を導くためにも現地調査は必須です。
「実質商圏」とは、現場の実情に基づいた商圏のことを指します。

商圏内の競合情報や交通量、地域住民の年齢層などは、インターネット上でも把握できますが、データ集計時とは数値が変わっていたり、予想より土地開発が進んでいたりと、実態と異なる場合もあります。

現地のリアルタイムな状況を踏まえた実質商圏を導くために、 j STAT MAP人口動態調査 などのデータ分析に加えて、現地調査も必須です。

屋内でのデータ分析や現地調査を含め、具体的な商圏調査方法は、以下が挙げられます。

アンケート調査

商圏内の住民に対してアンケート調査を実施します。

アンケート調査はインターネット上でも実施できますが、現地で直接ヒアリングすることで深い本音を聞き出せます。

◆アンケート調査の項目例

  • 自社に対するイメージ
  • 世帯人数
  • 子供の有無
  • 世帯年収
  • 自社既存店舗への来店経験の有無
  • 普段のライフスタイル

ハフモデル分析

ハフモデル分析とは、商圏の消費者が自社店舗を選択する可能性を予測する分析手法です。

ハフモデル分析では「店舗の面積」「店舗と居住地の距離」をもとに、以下の考え方で消費者が自社店舗を選択する可能性を予測します。

  • 自社店舗の面積が周辺店舗よりも広いほど、来店する可能性は高くなる
  • 居住地と自社店舗の距離が周辺店舗よりも遠いほど、来店する可能性は低くなる

交通量調査

交通量調査では出店候補地周辺の交通状況を調査します。

消費者が来店する手段(徒歩・自転車・車・電車など)を把握することで、駐車場の必要性などを判断できます。

◆交通量調査の項目例

  • 自社商圏内における、住民の主な移動手段
  • 出店候補地周辺の渋滞状況
  • 出店候補地前における、各時間帯の人通り
  • 移動速度
  • 出店候補地から公共交通機関までのアクセスのよさ

商圏バリア調査

商圏バリアとは、現地でビジネスを展開する際に障壁となりうる要素のことを指します。

◆商圏バリアの例

  • 山、谷、川、坂道、橋など自然や人工的な造形物がある
  • 常に道が混んでいて、車で来店しにくい
  • 道が複雑なため車で入りにくい
  • 店舗までに長い坂道がある
  • 競合店がかなり安い価格設定をしている

商圏バリアが自社商圏内に存在していると、「坂道ばかりで来店するのが面倒だ」「車で入りにくいので他の店舗へ行きたい」など、消費者の来店機会を逃す可能性が高くなります。

商圏バリアは統計データ等では把握しにくいため、現地調査を行うことが重要です。

競合調査

商圏周辺地域に競合店が存在する場合、具体的な現状を調査します。競合調査の結果をもとに差別化戦略を検討し、自社店舗に呼び込む状況を整えます。

◆競合調査の項目例

  • 営業時間
  • 外観と内観
  • 客層
  • 立地
  • 商品ラインナップ
  • サービス内容
  • 店舗の面積
  • 接客の質
  • 価格帯
  • 駐車場の有無
  • SNS上の口コミ評価

既存顧客データの調査

既存店舗を構えている場合、保有している顧客データも商圏調査に活用できます。

特に、系列店が新規出店する場合は、顧客の傾向が似る可能性が高いため、既存店舗のデータ活用が役立つでしょう。

◆既存顧客データ例

  • 登録個人情報の内容(年齢、住所、性別など)
  • クーポンの利用頻度
  • ポイントカードの利用履歴
  • これまでの合計購入金額
  • 顧客からの要望や意見

上記の調査方法と合わせて、人口動態の統計調査も利用し店舗周辺の住民層を正確に把握することで、具体的な数値も取り入れながら商圏を調査できます。

4.商圏調査結果の集計と分析

商圏調査結果をもとに集計と分析を実施します。
集計と分析は、最初に自社で策定した目標と照らし合わせて行うことが大切です。

 

最初に提示した目標を例に挙げると、以下の通りです。

  • 新店舗出店前に立地の状況や地域の特性を把握したい
    →競合店が地域に根ざしたサービスを展開しているため、価格を下げて差別化を図る
  • 地域住民の年齢に合わせて適切なキャンペーンを実行したい
    →駅前の人通りが一気に増える「朝8時」「夜20時」頃に街頭サンプリングを実施する
  • 既存店舗の売り上げが低迷しているので、競合状況や来店人数などを分析して改善したい
    →接客の質に課題があると判明したため、スタッフ教育日数を増やす

商圏調査の結果を踏まえ、自社の目標達成に必要な情報を取捨選択し、一番高い効果が見込める施策を実行しましょう。

商圏調査を実施する注意点

商圏調査を実施する際の注意点は以下の2点です。

  • 商圏調査を一度きりで終わらせない
  • 商圏バリアの例外も存在する

商圏調査を一度きりで終わらせない

商圏周辺地域の人口数・世帯数・交通量・世帯年収などの要素は、都市開発の実施や、時間の経過とともに変化します。

また、調査日の天気や時間帯によっても結果は変動します。

よって、新規出店前や開店後は複数回の調査を実施し、最新の状況をもとにして販促活動の実施や出店可否判断を行うことが重要です。

商圏バリアの例外も存在する

新規出店にあたっては、商圏バリアを洗い出し「坂道で来店が面倒だ」「車でしか来店できず不便」などの理由を排除した立地に出店することが理想です。

ただし、以下のように希少性・専門性の高い店舗であれば、商圏バリアが存在しても来店してもらえる可能性があります。

◆商圏バリアの例外

  • 商圏内に競合店がまったく存在しない地域
  • 地域限定で展開しているが連日全国から顧客が訪れる飲食店
  • 一部富裕層をターゲットにしている店舗

まとめ

商圏調査で新規出店地域の住民層や土地の状況を正しく把握できれば、より効率的に自社店舗の利益を生み出せます。

商圏調査を実施する際は、自社の目的に合う調査方法を選択し、新規出店やキャンペーン訴求に繋げていきましょう。

サービス概要を無料配布中「3分で読めるGMOリサーチのサービス」
3分で読めるGMOリサーチのサービス
最後までお読みいただきありがとうございます。
GMOリサーチはお客様のマーケティング活動を支援しており、さまざまなサービスを提供しております。
  • スピーディーにアンケートデータを収集するには
  • お客様ご自身で好きな時にアンケートを実施する方法
  • どこの誰にどれくらいリーチができるか
などをまとめた資料をお配りしております。
ぜひこの機会にお求めください。
資料請求する