現代のマーケターが活用するべきゼロパーティデータとは?

2023年07月07日

現代のマーケターが活用するべきゼロパーティデータとは?

顧客に関する情報を集めて、それを参考にして顧客のニーズを把握したいと考えている方も多いと思います。

しかし、近年、個人情報保護法の改正やCookieに関する規制が厳しくなっているため、顧客の情報を手に入れるハードルが高まっています。そこで注目されているのが、ゼロパーティデータです。

ゼロパーティデータとは、顧客の同意のもと、アンケートやヒアリング調査などで収集する顧客のデータです。たとえば、メルマガ配信の希望や、継続購入意思などを指します。プライバシー保護やマーケティングへの活用の観点において注目されています。

この記事では、ゼロパーティデータを活用するメリットやポイント、データの収集方法などを紹介します。

ゼロパーティデータは、サードパーティデータなどと比べて何が違うのか知りたい、また、顧客のニーズをもっと具体的に知って、マーケティングに活かしたいとお考えの方はぜひご覧ください。

ゼロパーティデータとは

ゼロパーティデータとは、顧客が意図的かつ積極的に企業に提供する情報です。

▼ゼロパーティデータの例

  • 商品・サービスの購入意思
  • 購入に至った個人的背景
  • 自分をどのように認識してほしいか など

2018年にForrester Research社が提唱したことで広まったのがきっかけです。同社ではゼロパーティデータを以下のように定義しています。

ZPD is information that a customer proactively shares with a brand, typically in exchange for some value.

(訳:ゼロパーティデータは、通常、何らかの価値と引き換えに、顧客が積極的にブランドと共有する情報です。)

引用:Forrester Research|「Level Up Your Loyalty Marketing With Zero-Party Data」

その他各種データとの違い

ゼロパーティデータと聞くと、似た言葉であるサードパーティデータなどを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。そもそも各種パーティデータは、それぞれデータの収集元が異なることで差別化されています。

データの分類|ゼローパーティデータ:顧客が意図的・積極的に提供したデータ|ファーストパーティデータ:同意を得てユーザーから直接得るデータ|セカンドパーティデータ:他社から直接取得するデータ(他社にとってのファーストパーティデータ)|サードパーティデータ:データ収集を専門にする第三者が保有するデータ

ファーストパーティデータ

ファーストパーティデータは自社で入手した顧客データのことです。

Webサイトへ顧客のデータを収集するためのトラッキングピクセルを設置したり、顧客の動きをデータとして収集・管理するCRMツールを導入したりして収集することができます。

また、トラッキングピクセルなどからデータを収集するプライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)もあります。

▼ファーストパーティデータの具体例

  • 行動データ(個人がサイトやアプリ全体、またはページ上で行う操作すべて)
  • クリック操作や詳細な行動(マウスオーバー、スクロール、操作時間など)
  • セッション数
  • 購入やダウンロードなどの取引データ

セカンドパーティデータ

セカンドパーティデータは、自社が保有しているデータではなく、特定の他企業から得られる外部データのことです。

▼セカンドパーティデータの具体例

  • パートナーシップや提携関係を結んでいる企業が収集したデータ

セカンドパーティデータは、小売業者と製造業者、宿泊予約サイトと鉄道会社、メディア会社と広告会社などのように、関係がある企業同士でデータを共有するなどして活用されることが多いです。

たとえば宿泊予約サイトと鉄道会社であれば、新幹線予約の情報を鉄道会社が収集し、それに基づいて対象の顧客に対して宿泊先に関する広告を打つことができます。つまり、自社ターゲットに近い顧客を見きわめてアプローチできるのです。

サードパーティデータ

サードパーティデータは、自社が保有していないサイトや情報源から取得、または購入したデータのことです。

▼サードパーティデータの具体例

  • 人口統計情報
  • 企業データ
  • 購入意思(新築住宅市場やソフトウェアの市場などの場合)
  • CRM、POS、コールセンターなどから得た付加情報

ゼロパーティデータの活用が注目される2つの理由

ゼロパーティデータは、顧客の同意を得て主体的に提供される情報です。そのため、正確性と信頼性が高い情報といえます。顧客の趣味や嗜好など、より深い情報を収集できるのが特徴ですが、これまで主流だったサードパーティデータなどに変わって注目を集めるのには理由があります。

1.プライバシー保護に関する意識の高まり

個人情報保護の観点から、世界的にプライバシー保護を重視する動きが高まっています。なかでも、EUをはじめ日本でもCookie規制が広まっており、多くの企業が影響を受けているのではないでしょうか。

そもそもCookieとは、ユーザーがWebサイトを閲覧したときに、訪れたサイトや入力したデータ、利用環境などの情報を記録したファイルを指します。情報を記録しておくことで、再度Webサイトを訪問したときにあらためて情報を入力し直す必要がないといったユーザー側のメリットに加え、ユーザーそれぞれに合わせた情報提供をする目的で利用できるため、企業のマーケター側にも大きなメリットがあるものでした。

Cookieには、Webサイトに訪問した顧客をトラッキングするファーストパーティCookieと、複数のWebサイトを横断し顧客をトラッキングするサードパーティCookieの2種類があります。特に、サードパーティCookieは、顧客が意図しない場合でも行動履歴や趣味嗜好のデータを収集してしまいます。そのため、プライバシー保護の観点から、規制に向けた法改正などが行われているのです。実際に日本でも、2022年6月からCookieを利用したデータの収集と利用について同意取得の義務が決定しました。

一方、ゼロパーティデータは顧客が積極的に企業に与える情報であるため、意図しないプライバシーが企業にわたるのを防ぐことができます。今後より一層Cookieの規制が厳しくなった場合、ゼロパーティデータとして集まる顧客情報は有力なものになるでしょう。

プライバシーの扱いに慎重なのは、企業だけではありません。

総務省の調査「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」によると、デジタル化が進んでいない理由について尋ねたところ、「情報セキュリティやプライバシー漏えいへの不安」が52.2%と最も多い結果となりました。このことからも、顧客側もパーソナルデータの提供に不安を感じていることがわかります。

世の中でデジタル化が進んでいないと思う理由回答結果画像|(出典)総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」

引用元:総務省「令和3年版情報通信白書 第1章デジタル化の現状と課題

2.新規顧客獲得の難化

価格競争の激化や人件費、設備費などのコスト上昇を受け、新規顧客の獲得は難しくなりつつあります。そのような環境下でも企業が売上を拡大していくには、いかにリピーターを確保できるかが求められます。

一度商品やサービスを利用した顧客にリピーターになってもらうには、顧客との関係性構築が重要です。顧客一人ひとりに即したサービスを提供するには、顧客の購入理由や趣味嗜好等の情報がとても役立ちます。

ゼロパーティデータとして集められる情報には、企業やブランドに対する、顧客自身の願望や意思が現れます。そのため、顧客の理解を深め、最適な商品やサービスを提供することに役立ちます。

企業のマーケティングを考えるうえで、顧客を深く理解していることは大きなメリットです。新規顧客の獲得が難しくなっている現代ではゼロパーティデータを上手く活用することが重要になるでしょう。

ゼロパーティデータの活用で企業が得られるメリット

プライバシー保護やリピーター獲得のために注目を高めているゼロパーティデータですが、上手く活用することで以下のメリットを得ることができます。

顧客ロイヤリティの向上

プライバシー情報の扱いが注目されている現代において、その個人情報を正しく扱える企業が、高い顧客ロイヤリティを獲得できるといえます。

CHEETAH DIGITALの「デジタル調査レポート2021」によると、27%のグローバル消費者が「データを責任をもって取り扱うブランドにロイヤルティを抱く」と回答しました。

先述したように、顧客はデータ収集に対して慎重な姿勢を持っています。そのことからも、データを適切に保護し、責任を果たしている企業やブランドに対して忠誠心を抱きやすいのではないでしょうか。ゼロパーティデータを活用した信頼性の高いデータ収集は、顧客ロイヤリティの向上が見込まれるでしょう。

顧客の意向に沿ったサービスの提供

ゼロパーティデータは、顧客自ら企業のオファーに同意して情報を提供しているため、信頼性と正確性が高いです。

たとえば、サードパーティCookieで、顧客の閲覧履歴から靴が紹介されているWebページを閲覧していた情報を取得した場合、この情報だけでは本人用に購入を促す広告を表示すべきなのか、他者へのプレゼントとしての購入を促す広告を表示すべきなのか把握できません。

もしゼロパーティデータとして、「顧客の趣味がランニングである」という情報が提供されていれば、企業は顧客が自分用のトレーニングシューズを求めていると判断し、販促を行えます。また、トレーニングウェアの販促も効果的だと推測できます。

つまり、ゼロパーティデータとして、顧客がサイトを訪問した理由・背景を知ることができれば、より顧客の意向に沿ったサービスを提供できるのです。

一方、ゼロパーティデータは既存の顧客に関する分析しかできません。既存の顧客の理解を深めるという点では良いですが、見込み客に対するアプローチには活用できないため、見込み客への幅広いアプローチをしたい場合は、別の施策を考える必要があります。

ポストCookie対策ができる

サードパーティCookieを利用した広告は、顧客の行動をトラッキングして表示しているため、顧客側としては、いつの間にか自分の行動が追跡されているという不安感を抱くことがあります。

サードパーティCookieは、既にSafariやChromeなどのブラウザで、有効期間が短く設定されています。繰り返しにはなりますが、世界的にプライバシー保護の必要が高まっていることからも、今後はサードパーティCookieに依存したマーケティングを行うことが難しくなるでしょう。

ゼロパーティデータは、顧客自らの意思で情報を提供するため、顧客側の不安感が解消されます。また、情報を提供するほど信頼している企業の広告などに活用されるため、顧客にとっては、自分に役立つ企業からの情報が提供されているという好感を持つ可能性があります。したがって、今後のポストCookie対策としても、活用できると考えられます。

ゼロパーティデータの収集方法

企業にとって今後ますます重要になっていくであろうゼロパーティデータですが、収集する方法としては以下の3点が挙げられます。

  1. アンケートを実施する
  2. 顧客へヒアリングする
  3. サイトの会員登録時に収集する

1.アンケートの実施

Webアンケートや郵送調査を実施すれば、顧客の回答を回収することができます。回収した結果は分析や施策に活かすために利用できるでしょう。

特に、Webアンケートであれば、多数のサンプルを集められます。しかし、アンケートの趣旨が伝わりにくく正確な回答が得られない場合や、思ったより回答数が得られない場合があるので、アンケートを正しく行うことが重要です。

2.顧客へのヒアリングの実施

コンタクトセンターやコールセンターを起点としたヒアリングや、電話やメール、SNS、チャットなどを利用することで、顧客と直接コミュニケーションを取りながら情報を集めることもできます。

顧客から同意を得たうえで、企業側から取得したい情報に関する質問をし、回答を分析に利用します。

3.サイトへの会員登録

サイトへの会員登録を通じて、ゼロパーティデータを収集することもできます。

具体的には、自社Webサイトの会員登録フォームに、会員情報として必要な顧客自身の属性情報の入力項目に加え、興味・関心やサイト訪問の理由などの項目を設置することで、ゼロパーティデータを得ることができます。

ゼロパーティデータを収集するときの3つのポイント

ゼロパーティデータを収集する際には、以下で紹介する3つのポイントに留意することでより信頼性の高いデータを集められます。

1.回答の収集性と適切性を考慮し方法や内容を決める

まずは、情報収集しやすい状況を作ることが重要です。面倒な回答方法や目的に合わない質問・アンケート内容にならないように気を付けることはもちろん、自社と顧客の信頼関係を築くことが重要です。

また、目的に合わせて「何を・どう聞くか?」の少しの工夫が回答数に影響を与えます。精度の高いアンケートが作れる調査設計の方法とポイントについて詳しくは、「はじめての市場調査:アンケート調査票の作り方は?良い例・悪い例」をご覧ください。

2.情報提供のお礼を用意する

ゼロパーティデータを収集するうえで、コストの発生や顧客に同意を得る手間がかかることは避けられません。特に自分の情報を提供する顧客側は、メリットがないと情報提供を渋ってしまうことも考えられます。信頼性の高いデータを納得して提供してもらうためにも、企業側は、商品の先行販売や割引、特典が受けられるなどお礼を用意するとよいでしょう。

3.データの収集目的や収集結果を顧客に示す

サイトを訪問した顧客から、サイトを知った理由や訪問理由などの情報を取得する場合、データの取得・利用に関する透明性が重要です。

データを提供する顧客は、同意のもとではあっても、企業に自分の情報が渡ることに抵抗を感じることがあります。顧客の抵抗を解消するために、何の目的でその情報が必要なのかを示し、許可を得てからデータを収集します。

▼収集目的の例

  • 収集したデータでサービスや商品の品質を向上させるため
  • 改善点を把握するため

まとめ|ゼロパーティデータで顧客理解を深めよう

ゼロパーティデータを活用することで、企業は顧客ロイヤリティを向上させられ、顧客の理解を深めることでマーケティング施策に活かせます。また、顧客は信頼する企業の品質向上やサービス向上を期待できます。そのため、企業と顧客の双方にメリットがあります。

さらに今後は、各ブラウザでCookieの規制が厳しくなることが予想されます。ゼロパーティデータとして集まる顧客情報は、今後ますます有力なものになるでしょう。

ゼロパーティデータを活用して、企業の信頼を高めながら顧客理解を深め、顧客満足度や商品・サービスの品質を向上させましょう。

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よくある質問

Q1.ゼロパーティデータとサードパーティデータの違いは?

ゼロパーティデータとサードパーティデータは、データの収集元に違いがあります。

  • ゼロパーティデータ:顧客が意図的、積極的に企業に提供するデータ
  • サードパーティデータ:データ収集を専門とする企業が保有するデータ

それぞれについて詳しい説明は、「その他各種データとの違い」の章をご覧ください。

Q2.ゼロパーティデータを活用するメリットは?

ゼロパーティデータを活用するメリットは主に以下の3つです。

  1. 顧客ロイヤリティの向上
  2. 顧客の意向に沿ったサービスの提供
  3. ポストCookie対策ができる

それぞれについて詳しい説明は、「ゼロパーティデータの活用で企業が得られるメリット」の章をご覧ください。

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