コストリーダーシップ戦略とは?自社の優位性を確保するポイントを解説

2023年02月03日

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コストリーダーシップ戦略は、他社よりコスト面で優位性を確保することで、市場の主導権を握ろうとする戦略です。コストを下げることで、売り上げや利益率の向上が期待できます。また、国内外の大手通販業や飲食業など、コストリーダーシップ戦略をすでに採用している企業は多数存在します。そのため、すでに導入されている事例を研究すれば、より成功率を高められるはずです。

この記事では、コストリーダーシップ戦略の意味やメリット・デメリット、導入事例を解説します。自社でのコストリーダーシップ戦略スタートの指針としてみてください。

コストリーダーシップ戦略の意味

コストリーダーシップ戦略とは「コスト面で他社をリードする戦略」

コストリーダーシップ戦略は、一言で言うと「コスト面で他社をリードする戦略」です。そのため、市場価格を下げても収益を担保できる状態を目指します。

価格下落によって収益を担保できなくなった企業が市場から退出していく状態になれば、競合との競争において優位性を確保できるからです。

コストリーダーシップ戦略

他社より低コストを実現することで、市場の主導権を握る戦略。単なる安売りではなく、あくまでも低コストでの商品提供が本質。(低コストとは、「低い原価」「低い費用」という意味)

コストを下げるには、例えば以下の方法が有効です。

  • 製造や企業運営に掛かる固定費を削減する
  • 製造や営業など業務の効率化を推進する
  • 生産技術や原材料を共有できる製品同士を製造

ポーターの3つの基本的戦略

コストリーダーシップ戦略は、世界的に著名な経営学者マイケル・ポーターが提唱した「3つの基本的戦略」のうちの一つです。競争相手が多数存在する中で、企業が優位性を確保して競争に勝つにはどうすればいいか示した戦略で、以下3つの要素で構成されています。

  • コストリーダーシップ戦略
  • 差別化戦略
  • 集中戦略

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コストリーダーシップ戦略についてはすでに説明したので、ここでは差別化戦略と集中戦略について解説します。

1.差別化戦略

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差別化戦略は、他社との特異性を明確に打ち出し、高価格で収益率の高い商品を扱うことで、他社との差をつけようとする戦略です。ブランドイメージや品質、顧客サービスなどで差別化を図ることで、価格競争に巻き込まれて消耗するリスクを軽減します。

また、明確に差別化できればユーザーの選択肢も限定されて、企業が有利な立場で値段などの戦略を立案できる可能性が高まるでしょう。

以下に、差別化戦略を活用している事例を、2つ紹介します。

小売、飲食業A社
  • 特産品を全面に押し出すことと、品質とデザイン性に優れたブランド品を取り扱うことで、差別化を図っている
  • 飲料や温泉宿、布製品など、取り扱う商品は多岐にわたる
飲食業B社
  • 一部の県でしか展開していない、天ぷらチェーン店
  • 揚げたてのおいしい天ぷらをファストフード感覚で食べられるため、県内で絶大な人気を誇る
  • 直営店形式でしか出店しないため、大規模な展開は事実上不可能だが、その分料理や接客の品質確保の面で差別化に成功している

 

 

2.集中戦略

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集中戦略は、特定の市場に的を絞ってリソースを集中投下する戦略です。特定の顧客や市場、チャネルに特化することで、コスト抑制やブランディングを図ります。

集中戦略を用いることで、企業の規模が小さくても、特定の分野では優位性を確保できる可能性が高まることがメリットです。

以下に、集中戦略を採用している事例を、2つ紹介します。

自動車メーカーC社
  • 流行のハイブリッド車やEVには参入しない戦略を取った
  • 内燃機関の改良と乗り心地を重視したことで、特定のファンから根強い人気を誇っている
飲食業D社
  • 特定の県にしか出店しないことで、「ここでしか味わえない」特別感を演出
  • 全国メディアで有名タレントが紹介したこともあり、名物の1つとなった
  • 県外からも多くの客が来るため、店舗によっては今や数時間待ちも珍しくない

コストリーダーシップ戦略に欠かせない4要素とは

前述したように、コストリーダーシップ戦略は単なる安売りではありません。戦略のポイントとしては、固定費削減や業務の効率化などによってコストを下げつつ、利益も高めていくことが求められます。

そのため、以下4つの要素に着目してコストリーダーシップ戦略を進めることが重要となってきます。本章では、コストリーダーシップ戦略に欠かせない4つの要素について、施策の例とともに紹介します。

1.生産規模

一般的に生産量が増加すると、製品1つあたりのコストを下げられる傾向にあります。これは、材料のまとめ買いにより製品1個あたりの材料が下がるのと、人件費などの生産コストも、まとめて生産活動を行なった方が製品1個あたりで見ると少なくなるからです。

新しい技術や設備導入により、生産性を向上させて生産規模向上を目指しましょう。ただし、生産規模を拡大しすぎて生産過多になっては意味がありません。販売量から適切な生産量を割り出し、あくまでもその範囲内で生産規模を決めることが必要です。

【施策例】

  • 新しい技術や設備の投入
  • 海外拠点での生産
  • アウトソーシングの活用 など

2.経験値

製品生産の経験が多いほど、効率よく生産できるようになってコストを下げられます。1人の職員が全ての工程を効率よくできるようになるには時間がかかるため、分業化することで、特定の分野でいち早く技術を習得させることも戦略の1つです。

また、技術の伝承や後継者育成を滞りなくできれば、より多くの職員が効率よく製品生産が行えるため、よりコストカットに寄与するでしょう。

技術の伝承や後継者育成のポイントは、経験値を形式知にすることです。形式知とは、属人的な知識ではなく、文字などの情報で見聞きできる知識のことです。形式知にできれば、他の人に技術を伝えやすくなるため、技術の伝承や後継者育成の難易度が下がります。

【施策例】

  • 分業化の促進
  • ナレッジ共有ツールの活用
  • 技術伝承用のマニュアル・内部向け教材の作成 など

3.技術

コストをおさえて高品質な製品を生産できる技術を用いることも、コストカットには有効です。技術によるコストカットは、独自の地位を確保するために重要なポイントになります。

一方で技術が流出すると、競合他社に真似されてしまい、自社の優位性が保てなくなる危険性が高くなってしまいます。そのため、知的財産保護には注意が必要です。

【施策例】

  • AIによる生産管理システム
  • 低燃費の工場機械
  • DX※によるビジネスモデル効率化 など

※DX=デジタル技術により、業務プロセス製品やビジネスモデル自体を変革すること。

4.組織構造

組織構造も、コストリーダーシップ戦略には欠かせない要素です。組織構造がわかりやすい作りになっていると、効率的な生産活動の実現だけでなく、職員の働きやすさややりがいにもつながります。以下の特徴を有する職場環境にできれば、コストカットを実現できる可能性が高まるでしょう。

【施策例】

  • プロジェクトごとに指示系統を可視化
  • 部署ごとの責任者を一覧表で確認
  • チャットのアンケート機能を活用し、現場の意見を吸い上げやすくする など

コストリーダーシップ戦略のメリット・デメリット

コストリーダーシップ戦略は、ただ安売りするだけの戦略ではありません。メリットとデメリットを把握しておくことで、適切な導入を実現できます。

メリット
  • 安さは顧客にとって魅力になる
  • コスト抑制により利益率がアップする
  • コストを抑えているため、不況にも強い
  • 柔軟な商品展開を行いやすい
  • 参入障壁として機能しうる
デメリット
  • 競合他社もコストカットに成功すると、価格競争に巻き込まれる恐れがある
  • 価格の下げすぎや品質の低下など、コストカットのしわ寄せが来ることもある
  • 生産規模や経験を得るためには、時間や金銭面でコストがかかる
  • 高級ブランドなど、価格以外の要因が購買動機として強く働く場合は、コストリーダーシップ戦略の効果が薄くなる可能性がある
  • 技術革新やEGSなど、外部環境からの影響を受けて、コストリーダーシップ戦略を見直さなければならないことがある

コストリーダーシップ戦略の導入事例4選

コストリーダーシップ戦略は、多くの企業で導入されているので、導入事例を研究することで、よりコストリーダーシップ戦略への理解が深まるのではないでしょうか。

そこで、最後にコストリーダーシップ戦略の導入事例について4つ紹介します。それぞれの業種、コストカット方法、さらには導入成果を記載していますので、参考にしてみてください。

洋食ファミリーレストラン|セントラルキッチンなどの導入で安さと品質を両立

洋食レストランチェーンを営むA社は、イタリア直送のメニューを取り揃えるなど、高品質かつリーズナブルなイタリアン専門のファミリーレストランとして、国内外1500店以上を展開しています。品質と価格を両立できる要因は、徹底したコストカットです。

例えば、セントラルキッチン方式※を用いることで、店舗のキッチン面積を減らしてその分客席数を増やすことに成功しました。
※セントラルキッチン方式:複数店舗分の料理を作る工場で、ほぼ完成した状態で各店舗に運ぶ方式

他にも、徹底した管理や流通、オペレーションの効率化によってコストダウンを実現してきました。その結果、今までは高級店が多いため敷居が高いと思われていたイタリアンにおいて、敷居を下げることで、今まで取り込めていなかった若年層の取り込みに成功したのです。

和食ファストフード店|食材の大量仕入れやオペレーション少人数化で原価抑制

日本を代表する牛丼チェーン店の1つであるB社は、食材の大量仕入れや店舗の少人数オペレーション、多店舗化など、原価を抑えるために数々の施策を行なっています。これにより、低価格な牛丼を提供することに成功してきました。

ただ、深夜の人件費を抑制するために導入したワンオペが原因で、労働環境悪化などの問題が発生した事例も起こってしまいました。そのため、近年では高級和牛弁当を販売するなど、コストカットだけに頼らず差別化戦略で収益性を向上させる取り組みにも着手し始めています。

アパレルチェーン店|商品企画から販売までを自社で実施することで中抜き排除

国内外で2000店舗以上を展開しているアパレルチェーン店C社では、SPA(speciality store retailer of private label apparel、製造小売業)を採用しています。これは、商品の企画から製造、物流、販売までを一貫して自社で実施する手法です。

SPAでは、卸売などの中間業者を排除できるため、中間業者への報酬を抑えて、競合他社よりも低コストで商品を生産できます。中間業者との調整も不要になるので、各店舗における販売状況に応じて、柔軟に生産量の調整が可能になることもメリットです。

さらに、コストリーダーシップ戦略に留まらず、顧客の声を直接反映させた商品開発や、ファッション性を重視する競合他社との差別化戦略にも取り組んでいます。

インターネット通販|ITインフラで業務プロセスを自動化してコストカット

大手通販企業のD社は、世界的なオンライン小売企業で、オンライン小売市場のコストリーダーシップ企業でもあります。長年ITインフラに継続的な投資を行なってきたことで、オンライン商取引上の競争優位性を実現してきました。

また、高度なコンピューティング技術とネットワーク技術により、購買処理やその他業務プロセスを自動化させることに成功しています。さらに、自社で保有する巨大な物流倉庫を、先端商品管理システムで管理することで、物流管理を効率化しました。

まとめ|コストリーダーシップ戦略によりコスト面で自社の優位性を確保

コストリーダーシップ戦略は、ポーターの3つの基本的戦略を構成する戦略の1つで、市場価格を下げても収益を担保できる状態を目指すものです。市場価格の低下に対応できなくなって他社が撤退すれば、自社の優位性を確保できるため、多くの企業で導入されています。

これからコストリーダーシップ戦略を導入する方は、生産規模や経験値など、コストリーダーシップ戦略に欠かせない要素を満たせているか確認してみましょう。また、今回紹介した事例も参考になれば幸いです。

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