インバウンド需要とは?現状・展望を正しく知り、収益へとつなげるポイント

2023年01月06日

inbound

インバウンド需要とは、日本の観光業の文脈においては訪日外国人の日本国内における商品・サービスへの需要のことです。

人口減少や少子高齢化の影響を受け、日本国内・日本人向けのマーケットだけを対象にしていては需要拡大が困難であることが指摘されています。そこで、2003年ごろより、観光立国に向けた取り組みとして、訪日外国人向けの商品・サービスの需要を喚起してゆくことが重視されてきました。

▼参考記事
観光立国推進基本法

 

2019年までは順調に拡大していたインバウンド需要は、2020年、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い一度は大きく低下しました。しかし2022年10月11日より水際対策の大幅な緩和が発表されたことを契機に、2023年以降回復するのではないかと期待されています。

 

最近では、商品ではなく日本での体験(コト)に注目する外国人が増え、日本の地方に注目する外国人も増えてきました。それに伴い、大都市圏だけでなく地方にも、インバウンド需要を取り込むチャンスが増えてきたと考えられます。

 

この記事では、インバウンド需要の意味と現状、さらに需要を収益へとつなげるためのポイントを解説します。

 

 

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インバウンド需要とは「海外から日本を訪れる外国人旅行者の消費」

インバウンド需要は、日本の観光業においては、「海外から日本を訪れる訪日外国人の消費」を意味する用語です。

インバウンド需要は、新型コロナウイルス感染症拡大前は拡大傾向にありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大が問題になった2020年以降、大きく減少しました。


image01_法日外国人年間旅行消費額推移.png

国土交通省「外国人消費動向調査」を参考に作成
※新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年と2021年の年間旅行消費額は試算値

2011年から2019年にかけて、年間旅行消費額は8,135億円から48,135億円と、約5.9倍増加していますが、2020年は7,446億円、2021年は1,208億円と、年間旅行消費額が大幅に下落しています。

しかし、2022年には、新型コロナウイルス感染症防止対策の緩和が世界的に見られ、2021年と比較して訪日外国人が増加傾向にありました。
image02_訪日外国人数.png


観光庁「訪日外国人消費動向調査」を参考に作成
※新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、2020.4〜2021.9は調査を中止


2022年10月11日より、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため行われてきた水際対策が緩和され、さらに円安傾向も追い風となり2023年はさらなる回復が見込まれています。

観光業界や宿泊業界はもちろん、交通業界やお土産品を作るメーカーにとっても、インバウンド需要は見逃せません。

インバウンド需要のターゲット

インバウンド需要のターゲットとしては、近隣アジア諸国が特に大きいと考えられます。

国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」の2020年1-3月期の国別消費金額を見てみると、中国17.2%、香港7.1%、台湾7.1%、ベトナム6.1%と、アジア圏から来日した観光客の消費金額が特に多い傾向が見られます。

image03_消費金額の割合.png


国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」をもとに作成


アメリカ17.2%、オーストラリア4.7%など、欧米諸国からの観光客も見逃せませんが、アジア圏から来日した観光客がボリュームゾーンとなっていることは覚えておくべきでしょう。

訪日外国人の嗜好変化|モノ消費からコト消費へ

近年、モノ消費からコト消費へのシフトが注目されています。

モノ消費 個々の商品やサービスを購入し、機能的価値を消費すること
コト消費 単に商品を買うだけではなく、個々の商品が連なった「一連の体験」を消費すること

▼参考記事
平成27年度 地域経済産業活性化対策調査

 

コト消費は、モノ消費よりも差別化がしやすく単価を高く設定しやすいことと、消費の場に顧客を集めやすいことから、注目が高まっています。

インバウンド需要においても、コト消費に着目している事例は少なくありません。地方でも注目されており、例えば以下の例がインバウンド需要の「コト消費」を取り込もうとした代表例です。

 

◆「コト消費」を取り込もうとした例

世界的に有名なスポーツアニメに登場するスポットが、そのアニメファンの「聖地」となり、訪日客が多数訪れていた。

その訪日客を取り込むべく、そのスポットを含めた外国人向けガイドブックや観光ガイドを作成した。
 

▼関連記事
2023年、知っておきたい訪日調査まとめ|訪日外国人の最新ニーズを探る

 

 

インバウンド需要を取り込む2つのポイント

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インバウンド需要が期待できる業界は幅広く、今はインバウンド需要に注目していなくても、正しくポイントを押さえれば取り込めるようになる可能性は十分あります。

そこで、インバウンド需要を取り込むために押さえるべきポイントを2つ解説します。

1.言葉の壁を作らない

日本のインバウンド需要で課題になることの1つが、日本人スタッフと訪日外国人と言葉が通じず、意思疎通ができないことです。

土地勘がない場所で、しかも言葉が通じないと、多くの人は不安を感じるものです。そのため、以下の施策を通じて、言葉の壁をなるべく作らないようにし、訪日外国人が安心して過ごせるような場所づくりに取り組むと良いでしょう。
 

◆言葉の壁を作らないための施策例

  • 翻訳サービスを活用
  • ホテルの掲示板に外国語を併記
  • Webサイトの外国語対応
  • 外国語対応しているスタッフを採用

 

 

2.訪日外国人が満足する体験を提供

インバウンド需要を取り込むには、訪日外国人が満足する体験を提供しなければなりません。満足する体験を提供できないと、日本を満喫したいと考える気持ちが薄れ、1回の消費額が増えない上に、再度来日する可能性も低くなるからです。

訪日外国人が満足する体験を提供するために考えられる施策の例を、以下に4つ箇条書きで示します。

◆訪日外国人の満足度向上施策の例

  • 気軽にインターネットを利用できるよう、Wi-fi環境を用意し、周知する
  • 日本食や着付け、ゲームやスポーツの聖地など、日本ならではの体験を訪日外国人に提供する
  • 宗教上などの理由で、人によっては食べられないものもあることを踏まえて、レストランのメニューを追加する
  • クレジットカードやオンライン決済など、訪日外国人が利用しやすい決済方法を用意する

 

過去に実施したインバウンド需要の調査例

事前に訪日調査やインバウンド需要調査を行うと、インバウンド需要を取り込む戦略を立案する際に、大いに役立ちます。
ここでは、訪日調査の例として、当社GMOリサーチ&AIが過去行った、インバウンド需要に関する調査事例を解説します。

アジア10カ国・地域が対象の海外旅行に関する意識調査

新型コロナウイルスの水際対策緩和もあり、インバウンド需要拡大が期待されています。これを受けて、アジア10カ国・地域を対象に海外旅行に関する意識調査を行いました。

調査目的 日本の観光業や小売業に大きな利益をもたらす訪日外国人観光客によるインバウンド消費の回復に期待が高まるなか、高いインバウンド需要を見込める東アジア、ASEAN地域各国の海外旅行への意識を探る。
調査手法 インターネット調査(クローズド調査)
調査対象 20~69歳の男女 計3,328名
  • 日本人332名
  • 中国人330名
  • 韓国人346名
  • 香港人329名
  • インドネシア人330名
  • シンガポール人330名
  • タイ人329名
  • フィリピン人330名
  • ベトナム人338名
  • マレーシア人334名
調査期間 2022年10月29日~30日
考察 1.日本以外の9カ国・地域すべてで、行きたい国では日本が1位を獲得(全体平均21.5%)
2.過去に、訪日旅行の経験がある回答者に対し満足度を聞いたところ、全体の60.1%が「非常に満足」と回答
3.中国、韓国、香港、シンガポール、ベトナムの5カ国・地域では、半数以上の回答者が「日本での消費意欲が高い」(非常に高い・やや高いを合算)と回答
詳細 海外旅行に関する意識調査をアジア10カ国・地域で実施 ~行きたい国1位は日本、今後の経済効果に期待~

 

訪日中国人に対する消費行動調査

訪日旅行経験がある、もしくは予定のある中国人に対し、日本への旅行に求めることや消費行動について、調査を行いました。

 

調査目的 訪日中国人に対し、日本への旅行に求めることや、滞在中の経験といった日本での消費行動に関して生の声を聞く。
調査手法 インターネット調査(クローズド調査)
調査対象 中国人 計1,092名
  • 過去3年以内に訪日旅行経験のある男女552名
  • 訪日経験はないものの今後3年以内に訪日旅行予定のある男女540名
調査期間 2015年3月27日~2015年3月31日
考察 1.訪日経験のある中国人旅行者においては、ほとんどの人が日本に再来したいと考えている
2.販売店舗の情報は知人の口コミや自主的なインターネット検索など、複数の情報源から収集している
3.今後訪日中国人をさらに呼び込むには、中国人向けWebサービスの充実や日本製品の品質の高さをアピールすることが重要と考察
詳細 『訪日中国人の消費行動調査』を実施 ~嗜好品、ぜいたく品などのショッピングに高い期待~|リサーチコラム

 

▼関連記事
海外調査の方法とは?基礎知識や成功に導く方法も解説|リサーチコラム

 

まとめ

人口減少や少子高齢化で国内マーケットの拡大は困難な中、日本の観光業界ではその解決策の1つとして、インバウンド需要が注目されています。

2020年の新型コロナウイルス感染症拡大で、2002年、2021年には大きくインバウンド需要が落ち込みましたが、水際対策緩和や円安でその回復が期待されています。

インバウンド需要の取り込みには、訪日外国人のニーズを捉え、満足する体験を提供することが不可欠です。言葉の壁を作らないことや、訪日外国人が満足する体験を提供することも必要となるでしょう。
 

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◆参考文献
引用:内閣府「第2章 インバウンド需要の取り込みに向けて
引用:外務省「国際的な人の往来再開に向けた措置について

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