ニューロマーケティングとは?メリットや問題点、活用事例を解説

2022年08月19日

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ニューロマーケティングとは、脳科学の知見を活用して消費者の心理や行動原理を分析し、マーケティング施策の立案に役立てる手法です。

無意識の感情の変化などを定量評価することができます。

本記事ではニューロマーケティングの意味やメリット、問題点、活用事例を紹介します。

ニューロマーケティングとは?

ニューロマーケティング
脳科学の知見を活用して消費者の心理や行動原理を分析し、マーケティング活動に応用する手法。

アンケートやヒヤリングなど従来の行動分析手法では、消費者が無意識のうちに感じている本音を引き出しづらいという課題がありました。

しかし脳科学分野の技術進歩によって、生体信号の計測を通じて消費者の無意識の心理や好みなど、言語化が難しい部分を可視化して定量評価できるようになりました。

消費者本人が認識していない感情や想いを「消費者インサイト」と呼びます。

消費者インサイトを調査したいときにもニューロマーケティングは活用でき、消費者インサイトを把握することで、より効果的なマーケティング施策を立案できるでしょう。

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ニューロマーケティングのメリット

ニューロマーケティングのメリットを、2つ解説します。

消費者の言語化できない考えを理解できる

ハーバード大学のジェラルド・ザルトマン博士は、自身の著書で「消費者の行動の95%は無意識のうちに行われている」と述べています。

消費者の行動の多くが無意識の間に決まるのだとすると、深層心理の底に存在する潜在ニーズに働きかけるマーケティング活動を実施できれば、大きな効果を期待できるでしょう。

ただし従来のマーケティング手法では、消費者自身が言語化できていないニーズを聞き取り、具体的に分析することは困難でした。

ニューロマーケティングでは、脳科学の知見を活かして消費者の無意識な部分を分析できるため、アンケート調査だけでは聞き取れない潜在意識を定量的に分析できます。

消費者の潜在ニーズを理解できるため、研究開発や商品企画、販売促進、顧客満足度の向上など幅広いシーンに応用できるでしょう。

感情の変化を定量データとして分析できる

従来のマーケティングでは、消費者の感情を知るためにアンケートやヒアリングなどを活用していましたが、「どのような流れで感情が変化するか」という時系列までは把握できないことが課題でした。

ニューロマーケティングでは、人間がコントロールできない脳波や脈拍数などの数値(生理指標)や消費者の心身の変化(行動指標)を通じて、具体的な感情の変化を分析できます。

消費者の感情の変化を分析することで感情が移り変わった箇所を可視化して把握できるため、「商品の認知~購入」までの意思決定プロセスを分析できます。

消費者の意思決定プロセスを定量的に理解できれば、「広告の打ち方」「店舗の内装」「商品の陳列方法」など、商品購入を促せるマーケティング施策の立案が可能になるのです。

ニューロマーケティングで活用する3つの指標

ニューロマーケティングで活用する、3つの指標を解説します。

生理指標

生理指標とは、脳波や脈拍数、心拍数、血液量など人間がコントロールできない生体反応を数値化したものです。

生体反応は無意識の心理と連動して変化するため、感情を分析するときに有効とされています。

消費者の無意識での評価や一瞬の反応など、消費者自身も気づかないポイントを発見することが期待されます。

例えば、購買時に生理指標がどう変化するか分析することで、感情の変化を把握してマーケティング活動に役立てることが可能です。

行動指標

行動指標とは、消費者の心身の変化を分析するものです。

商品を目にした後に反応を起こすまでの時間や広告への視線の動き方など、消費者の心身の変化を定量的データで分析できます。

行動指標を分析することで、消費者の心身の変化を自然に引き起こし、無理なく購買意欲を高める広告や店内レイアウトを立案できます。

主観指標

主観指標とは、アンケートやヒアリングなどの既存マーケティング手法を、ニューロマーケティングと組み合わせることで洗練したものです。

既存のマーケティング手法は、生理指標や行動指標と組み合わせるとより効果が上がると期待されています。

主観指標を生理指標や行動指標と組み合わせた例は、以下のとおりです。

  • 「印象がいい」「購買意欲を高めてくれた」とアンケートでポジティブな回答を得た広告に対し、アイトラキッキング※を実施する
  • 「広告の見られている部分」「広告への印象を決定付けている部分」を分析することで、具体的にどの部分が広告にポジティブな印象を与えるか分析できる
  • 広告のリニューアルや、今後作成する他の商品の広告において応用できるデータを得られる

※アイトラキッキング:眼球の動きを分析するもの。詳細は後述。

ニューロマーケティングの調査方法

ニューロマーケティングの調査方法を、3つ解説します。

アイトラッキング

アイトラッキングとは、眼球の動きを分析する調査方法です。

眼球の動きを分析し、どこに視線を集中させているか、いつ視線を動かしたかなどを計測できます。

アイトラッキングを用いることで、例えばパンフレットを見ているときの視線の動きを分析し、パンフレットの効果測定をするといったことが可能となります。

また、商品パッケージのどこに視線が集中するか分析し、人の目を引く商品パッケージの立案もできます。

表情認識

表情認識とは、顔の表情から感情を分析して、目や唇の動きなどを計測するものです。

例えば、広告を見たときの表情を分析することで、「広告を通じて商品にどれほど興味をもったか」という効果を分析できます。

fMRI(脳活動測定)

fMRIでは、MRIを活用して脳内の血液循環量を計測することで、脳内で活性化している部位などを把握できます。

脳内で活性化している部位を把握することで、サービス使用時における脳の活動を可視化して、商品への反応の定量評価が可能です。

fMRIは脳活動を幅広く分析できることから、得られるデータの信頼性は高いとされています。

ただし、fMRIを活用するにはMRIの使用が欠かせないため、実施できる施設が限られることやコストがかかることには注意が必要です。

ニューロマーケティングの問題点

ニューロマーケティングのメリットや調査方法などを紹介してきましたが、ニューロマーケティングはメリットだけではありません。ニューロマーケティングの問題点を、3つ解説します。

倫理的な側面に配慮しなければいけない

ニューロマーケティングでは、消費者の生理情報や行動情報を分析してマーケティング活動に役立てます。

しかし、生理情報や行動情報は重要な個人情報であるため、倫理的に「どこまで分析してよいのか」は慎重に考えなければなりません。

取得した生理情報や行動情報が万が一流出した場合は、第三者に詐欺行為などで悪用されるおそれもあります。

ニューロマーケティングを実施する際は、情報管理や実験時の安全性を徹底して、倫理的な側面にも十分配慮しなければなりません。

調査や分析を行うには設備や技術力が必要

ニューロマーケティングをマーケティング活動に応用する際は、脳科学分野における知識が必須です。

しかし、多くの会社はニューロマーケティングに必要な調査を実施するための知見や専門設備、技術力を用意できない可能性が高いため、アウトソーシングしなければなりません。

また、ニューロマーケティングを行うには、脳科学の知見に加えてマーケティング分野にも理解がある人材が必要になるため、人材不足も課題とされています。

以上より、設備や技術力の面でもニューロマーケティングの導入は簡単ではありません。

脳科学の常識が変わる可能性がある

脳科学分野は、日進月歩で発展途上の分野です。

日々情報が変化するため、今までの脳科学で「常識」とされてきた内容が覆る可能性も否定できません。

脳科学の常識が変わった場合、従来のニューロマーケティングでは有効とされていた判断が無効になります。

また、ニューロマーケティングの分析結果においては、正確性が疑われる場面も出てくるかもしれません。

脳科学の常識が変わる可能性を考慮した上で、ニューロマーケティングをビジネスにより活用するには、以下の2点を心がけましょう。

  • 常に最適な調査方法や分析方法が何か模索する
  • 理論や分析結果をうのみにせずに自分なりに仮説検証を繰り返す

ニューロマーケティングの活用事例

ニューロマーケティングの活用事例を、2つ解説します。

赤ちゃん向け玩具の開発

赤ちゃん向け玩具の開発にニューロマーケティングを活用した事例を紹介します。

概要 ・企業と大学が共同研究
・音楽が赤ちゃんに与える影響を調査・分析
調査対象者 120人の赤ちゃん
調査目的 音楽を聞いたときに、赤ちゃんの心拍数や表情などの変わり方を分析
調査結果 以下の2種類のメロディを発見
・脳血流を増加させて不機嫌な気持ちを和らげる
・心拍数を下げてリラックス効果をもたらす
活用方法 以下の機能を有する赤ちゃん向け玩具を開発
・赤ちゃんの泣き声に反応
・自動で赤ちゃんが落ち着く音楽や機嫌がよくなる音楽を流す

株式会社NeU. 「赤ちゃんの気分を切り替える「脳科学メロディ」を共同開発 ーバンダイのベビートイ新商品に脳科学を活用ー」 https://neu-brains.co.jp/information/press/2019/08/22/989.html

食品のCMやパッケージの効果測定

食品メーカーが、CMやパッケージの効果測定にニューロマーケティングを活用した事例を紹介します。

概要 ・CMやパッケージのインパクトや好感度をニューロマーケティングを用いて分析
・分析結果をユーザーとのコミュニケーション戦略に活用
調査目的 ・CM変更後の印象を調査した結果、ユーザーは以下のとおりの印象を抱いている傾向にあると判明
 ○親しみや共感は増加
 ✕活気や躍動感が減少
・ニューロマーケティングを活用し、CMやパッケージの効果測定を行うことで、改善点を把握
調査方法 ・インタビュー調査、グループワーク、ニューロマーケティングなどを併用
・複数のモニターグループに対し、ニューロマーケティングとアンケートを実施
【ニューロマーケティングの調査内容例】
・CMやパッケージをみたときの心の変化
・CMやパッケージをみたときの視線の動き
調査結果 ・CMがファン獲得に効果ありと判明
・消費者の心を動かしているのは、パッケージのどの部分を見たときか判明

まとめ

ニューロマーケティングを用いることで、消費者インサイトを定量的に分析して、無理なく効率的なマーケティング施策を立案できます。

ただ、ニューロマーケティングに用いる生体指標や行動指標は重要な個人情報であるため、どこまで分析していいか一概に言えないことは大きな課題の1つです。

ニューロマーケティングは、商品開発やパッケージ作成など様々な分野で応用できるため、あなたの会社でもぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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