No.1広告の危険な落とし穴 ―― 消費者庁が警戒を強める最新動向から、適切な表示方法まで徹底解説

2024年12月10日

No.1広告の危険な落とし穴 ―― 消費者庁が警戒を強める最新動向から、適切な表示方法まで徹底解説

デジタル広告の普及により、企業の販促活動におけるNo.1表示が急増しています。「顧客満足度No.1」「シェアNo.1」といった最上級表現は、消費者に強い印象を与える一方で、根拠が曖昧な場合、法的リスクを伴います。
消費者庁は2024年に入り、こうしたNo.1広告への監視を強化。措置命令や高額な課徴金納付命令が相次いでいます。

本稿では、No.1広告を巡る最新動向と、企業が取るべき対策について実例を交えながら解説します。

なぜ今、No.1広告が問題なのか

企業間競争の激化を背景に、No.1表示を用いた広告が急増しています。特にデジタル広告では、商品やサービスの優位性を「業界最安」「顧客満足度No.1」などの最上級表現で訴求するケースが目立ちます。

消費者庁は、こうした状況が消費者の適切な商品選択を妨げているとして、監視を強化。日本マーケティング・リサーチ協会も「非公正なNo.1調査」への抗議を表明し、業界全体で問題視する動きが広がっています。

増加する違反事例と処分の実態

2008年の公正取引委員会による「No.1表示に関する実態調査報告書」の公表以降、No.1表示への監視は年々厳格化しています。
2023年度には不適切なNo.1表示による措置命令が10件を超え、特に問題とされたのは、実際の利用経験がない消費者を含めた印象調査に基づく表示でした。

2024年の注目すべき措置命令

2024年3月、消費者庁は特定商取引法に基づき初めてNo.1表示の違反を指摘。オンライン家庭教師事業者への6346万円の課徴金納付命令など、処分は厳格化の一途をたどっています。
さらに、埼玉県では接骨院運営事業者の「埼玉県口コミNo.1」という表示に措置命令が出されるなど、地方自治体による監視も強化されています。

競合他社の模倣では済まされない理由

「競合他社も同様の表示をしている」という理由での安易なNo.1表示は危険です。消費者庁は、他社の模倣による表示でも、各広告主に独自の法的責任があるとの立場を取っています。
広告主は競合他社の手法に影響されることなく、自社の表示に客観的な根拠があるか、慎重に検討する必要があります。

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No.1広告で陥りやすい3つの罠

「顧客満足度No.1」という表示で最も問題となるのは、実際の利用経験がない消費者を含めた印象調査です。ある商品やサービスを実際に使用したことのない消費者からの評価を基に「満足度No.1」と表示することは、景品表示法上の優良誤認にあたる可能性が高くなります。
消費者庁は、2024年の措置命令でこの点を特に重視。イメージ調査による「No.1」表示を不当表示として厳しく取り締まっています。

印象調査だけに頼った「満足度No.1」

「顧客満足度No.1」という表示で最も問題となるのは、実際の利用経験がない消費者を含めた印象調査です。ある商品やサービスを実際に使用したことのない消費者からの評価を基に「満足度No.1」と表示することは、景品表示法上の優良誤認にあたる可能性が高くなります。
消費者庁は、2024年の措置命令でこの点を特に重視。イメージ調査による「No.1」表示を不当表示として厳しく取り締まっています。

曖昧な調査条件による「シェアNo.1」

「シェアNo.1」の表示では、調査対象の範囲や時期が曖昧なケースが目立ちます。例えば、特定の地域や期間だけを切り取って「シェアNo.1」と表示したり、比較対象とする競合を恣意的に選定したりするケースです。
調査の対象範囲や時期を明確に示さない「シェアNo.1」表示は、消費者に誤解を与える不当表示として処分の対象となります。

限定的なデータに基づく「売上No.1」

「売上No.1」を謳う際、特定の商品カテゴリーや販売チャネルのみのデータを用いて、あたかも業界全体での評価であるかのように表示するケースがあります。
例えば、ECサイトでの売上だけを根拠に「売上No.1」と表示したり、特定の期間の売上データのみを使用したりする行為は、消費者に誤解を与える可能性が高いと指摘されています。

法的リスクを理解する

リスク

No.1広告に対する法的規制の中核となるのが、景品表示法です。同法では、消費者が商品やサービスを選ぶ際に公正な選択を妨げる「不当表示」を禁止しています。
近年、消費者庁は不適切なNo.1表示に対して厳格な措置を講じており、違反企業には高額な課徴金が課される事例も増加しています。以下では、具体的な法的リスクと対応策について解説します。

景品表示法における優良誤認・有利誤認

景品表示法では、No.1表示に関して主に2つの不当表示を規制しています。一つは商品やサービスの品質等を実際より優れているように見せる「優良誤認表示」、もう一つは価格や取引条件について実際より有利な印象を与える「有利誤認表示」です。
例えば、限られた条件下での調査結果を「業界No.1」と表示したり、実際の利用経験のない消費者の印象を基に「満足度No.1」を謳ったりする行為は、優良誤認表示に該当する可能性が高くなります。

措置命令から課徴金まで:違反時の処分

不当表示が発覚した場合、消費者庁は違反企業に対して措置命令を発します。これには、不当表示の排除や再発防止策の実施などが含まれます。
2016年から導入された課徴金制度では、対象となった商品・サービスの売上高の3%が課徴金として課されます。2023年8月のオンライン家庭教師事業者への6346万円の課徴金納付命令は、この制度の本格的な運用を示す事例となりました。

広告主の法的責任と実務上の注意点

No.1表示に関する法的責任は、最終的に広告主が負うことになります。たとえ調査会社に依頼した調査結果であっても、その内容の適切性は広告主が確認する必要があります。
実務上は、調査の設計段階から法的な観点での確認を行い、必要に応じて法務部門や外部の専門家に相談することが重要です。また、No.1表示を行う際は、調査の概要や根拠を明確に示せる状態にしておくことが求められます。

No.1表示を適切に行うためのポイント

No.1表示を行う際には、日本マーケティング・リサーチ協会が提供する調査データ開示ガイドラインに基づいた対応が求められます。消費者庁は特に、調査の客観性と透明性を重視しています。
以下では、適切なNo.1表示を実現するための具体的なポイントを解説します。これらの基準を満たすことで、法的リスクを最小限に抑えることが可能となります。

客観的な調査データの重要性

No.1表示の根拠となる調査は、独立した第三者機関による客観的なものでなければなりません。調査会社の選定においては、日本マーケティング・リサーチ協会に所属する信頼性の高い機関を選ぶことが推奨されます。
また、調査手法においても、統計的に有意な標本数を確保し、偏りのないサンプリング方法を採用することが重要です。

明確な調査条件の設定方法

調査条件は、商品やサービスの範囲、地理的範囲、調査期間・時点を明確に定める必要があります。特に重要なのは、「いつ」「どこで」「誰を対象に」「どのような方法で」調査を実施したかを明示することです。
調査対象者の選定基準や、回答者の属性なども、透明性をもって開示できる状態にしておくことが求められます。

適切な比較対象の選定

No.1表示を行う際は、比較対象となる競合製品やサービスの選定基準を明確にする必要があります。恣意的な選定を避け、市場における主要な競合製品を漏れなく含めることが重要です。
また、商品カテゴリーや価格帯が著しく異なる製品との比較は避け、消費者にとって適切な比較となるよう留意します。

正確な表示と根拠の明示

No.1表示を行う際は、調査結果の具体的な数値や、調査の概要を広告内に明記することが求められます。特にWeb広告では、詳細な調査概要にリンクできるよう、情報の階層化を図ることも効果的です。
表示する際は、調査に基づく具体的な優位性を示し、誇大な表現や消費者の誤認を招く表現は避ける必要があります。

No.1に頼らない効果的な訴求方法

効果的な訴求方法

消費者庁によるNo.1表示への規制強化が進む中、企業は新たな広告戦略を模索する必要に迫られています。最上級表現に頼らずとも、商品やサービスの優位性を効果的に訴求する方法は存在します。
以下では、No.1表示に代わる具体的な広告手法について解説します。これらの手法は、法的リスクを抑えながら、消費者に対して説得力のある情報提供を可能にします。

具体的な数値やデータの活用

商品やサービスの優位性を示す際は、具体的な数値やデータを用いた表現が効果的です。例えば、「顧客満足度No.1」の代わりに「顧客満足度85%」「リピート率92%」といった具体的な数値を示すことで、より信頼性の高い訴求が可能となります。
また、経年での改善率や、具体的な性能値の提示なども、消費者の理解を促す有効な手段となります。

商品特性に基づく差別化

商品やサービスの独自の特長を具体的に訴求することで、No.1表示に頼らない差別化が可能です。例えば、特許取得済みの技術や、独自の製法、サービスの特徴的なプロセスなど、他社にない要素を明確に打ち出すことで、競争優位性を確立できます。
重要なのは、その特長が消費者にとってどのような価値をもたらすのかを具体的に説明することです。

顧客価値の明確な提示

消費者が求める価値を具体的に提示することで、効果的な訴求が可能です。例えば、商品やサービスの利用によって得られる具体的なメリットや、問題解決の事例を示すことで、消費者の共感を得ることができます。
また、実際の利用者の声を活用する場合も、具体的なエピソードや体験談を示すことで、より説得力のある訴求となります。

これからの広告戦略を考える

消費者庁によるNo.1表示への規制強化は、企業の広告戦略の転換点となっています。今後は、単なる優位性の主張から、より本質的な価値訴求へと移行することが求められます。
情報開示の透明性を高め、消費者との信頼関係を構築することは、持続的な企業成長の基盤となります。以下では、これからの広告戦略において重要となる3つの視点を解説します。

透明性の高い情報開示

広告表現の根拠となる情報は、消費者が容易に確認できる形で開示することが重要です。例えば、調査データを活用する場合は、調査の概要や手法を明確に示し、必要に応じて詳細な情報にアクセスできる仕組みを整えます。
また、商品やサービスの特長を訴求する際も、具体的な数値や事実に基づいた情報提供を心がけることで、消費者からの信頼を獲得できます。

信頼性を重視した広告表現

最上級表現に頼らず、商品やサービスの本質的な価値を伝える広告表現が求められます。例えば、具体的な使用シーンや課題解決の事例を示すことで、消費者にとって理解しやすい訴求が可能となります。
特に重要なのは、誇大な表現を避け、事実に基づいた正確な情報提供を行うことです。こうした姿勢が、長期的な企業価値の向上につながります。

持続可能な競争優位性

一時的な優位性を主張するのではなく、継続的な価値提供を重視した広告戦略が重要です。例えば、商品やサービスの改善プロセスを開示したり、顧客との対話を通じた進化の過程を示したりすることで、企業の姿勢を効果的に伝えることができます。
また、環境への配慮や社会的責任など、持続可能性の観点からの取り組みを訴求することも、現代の消費者ニーズに応える重要な要素となります。

No.1広告の健全な活用に向けて

No.1広告は、消費者に強い印象を与える効果的な訴求手法です。しかし、その使用には客観的な根拠と適切な表示が不可欠です。消費者庁による監視強化が進む中、企業は新たな広告戦略の構築を求められています。


適切なNo.1表示を実現するためには、信頼性の高い調査機関による客観的なデータが重要です。GMOリサーチ&AIは、国内最大級、3,000万人以上にアンケート調査が可能です。「No.1検証リサーチ」などの専門サービスを通じて、景品表示法に準拠した適切な調査を支援しています。
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