RFM分析とは?マーケティングに役立つ基本知識や分析方法を紹介
2022年04月15日
継続的にビジネスを成功させるには、顧客生涯価値(LTV)の引き上げが必要です。
今回紹介するRFM分析は、3つの指標を用いて顧客を分類し、それぞれのグループに適したマーケティング施策を実行する手法です。
RFM分析を行うことで顧客に適切なマーケティング施策を行いやすくなり、顧客生涯価値(LTV)の最大化が期待できます。
本記事ではRFM分析の概要や実施手順、エクセルを用いた実施例を解説します。
RFM分析とは?
- RFM分析とは
- Recency(直近の購入日)、Frequency(頻度)、Monetary(購入総額)の3つの指標で、顧客を分類する分析方法。
RFM分析では3つの指標を用いて顧客を分類し、それぞれのグループに適したマーケティング施策を実行する手法です。顧客生涯価値(LTV)の最大化を目的に行われることが多いのが特徴です。
具体的には以下のようなエクセルやバブルチャートを用いて顧客を可視化します。
各指標の具体的な意味は以下の通りです。
指標 | 特徴・効用 |
---|---|
Recency (直近の購入日) |
|
Frequency (購入頻度) |
|
Monetary (購入総額) |
|
RFM分析とデシル分析の違い
- デシル分析とは
- 顧客を商品の購入金額順に10のグループに分類し、簡易的に顧客を分類する分析方法。
デシル分析は顧客を購入金額のみで分類するため、一度でも高額な購買を行い、その後リピートしていない顧客でも「優良顧客」として判定される可能性があります。
一方RFM分析は購入日、購入頻度、購入総額の3軸で顧客を分類するため、デシル分析よりも顧客分析の精度は高くなります。
RFM分析を行う2つのメリット
RFM分析を行うことで、以下2つのメリットがあります。
- デモグラフィックがなくても使用できる
- 顧客の状況が把握できる
デモグラフィックがなくても使用できる
デモグラフィックとは、人口動態変数のことで、例えば以下のようなデータが該当します。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 可処分所得
- 家族
デモグラフィックのデータから顧客を分類する方法をセグメンテーションと呼びますが、セグメンテーションの取得には、顧客の協力が欠かせません。
また、顧客から何のデータを取得するかは、企業の求めるターゲットによるため、アンケートなどの調査項目を精査する必要があり、多くの時間を要します。
その一方で、RFM分析に必要なのは顧客の購買データです。このため、デモグラフィックと比較するとデータの獲得が容易で、変数が少ないため、高度な計算が不要です。
※セグメンテーション関連記事
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顧客の状況が把握できる
RFM分析により、顧客が自社商品やサービスの利用状況が可視化できます。
例えば、Frequency(頻度)の値が高いのにもかかわらず、Recency(直近の購入日)が離れている場合には、顧客が自社商品、サービスから離脱して他社製品へと乗り換えた可能性があります。
この他にもRFM分析では、直近に購買記録があり、その後のリピートがない新規顧客の洗い出しが行えるため、効果的なマーケティング訴求が行いやすいメリットがあります。
RFM分析の実施手順
RFM分析を実施する際は以下の手順で進めます。
- 自社の問題を明確化する
- 仮説を立てる
- データを収集、分類する
- ランクの定義付けをする
- データを分析する
1.自社の問題を明確化する
RFM分析を始める前に、まずは自社の問題を発見することが大切です。例えば企業が抱える問題として以下のような内容が挙げられます。
- 売上が上がらない
- 利益率が低い
- 社内リソースが足りない
このうちRFM分析は既存顧客の顧客生涯価値(LTV)の向上につながるマーケティング施策を検討する分析手法であることから、特に「売上が上がらない」ケースに役立ちます。
さらに売上が上がらない理由を掘り下げると、主に以下のような理由が考えられます。
- 新規顧客が獲得できていない
- 既存顧客のLTVが低い
RFM分析は問題によってアプローチ方法が異なるため、初期段階で自社の抱える問題を明確にしておくことが重要です。
今回は既存顧客のLTVが低いことを売上が上がらない理由と仮定し、LTVの改善を課題としてRFM分析を進めます。
2.仮説を立てる
実際にRFM分析を行う前に、既存顧客のLTVが低い原因の仮説を立てます。
例えば、顧客の一回あたりの購入金額が他社と比較して低い場合、収集するデータには必ず1人あたりの購入金額を算出する必要があります。
他にも設定した顧客ターゲットと実態に乖離があると仮定した場合、RFM分析に必要なデータ以外にも、デモグラフィックデータ、サイコグラフィックデータが必要となります。
このように仮説を立てることで、必要な情報が整理でき、実態に即したマーケティング施策につなげやすくなります。
3.データを収集、分類する
仮説を立てたら実際に必要となる顧客データを収集し、分類します。
今回のケースでは、既存顧客のLTVが低減している理由として以下のようなものが考えられると仮説が立ったとします。
- 優良顧客の数が少ない
- 優良顧客の一度上がりの購入量が少ない
- 新規顧客を優良顧客に引き上げられていない
これら仮説を検証するために、RFM分析を実施します。
既にMAツールなどを使用している場合は、すぐにデータを抽出できますが、MAツールを導入していない場合には、以下のようにエクセルにデータをまとめ直すとよいでしょう。
RFM分析で必要となるのは顧客IDと注文日、注文金額です。
後述するピボットテーブルを使った分析を行うと、以下のように顧客データが簡単にまとめられます。
仮説を立てた際に、顧客の年齢、性別、職業などのデモグラフィックデータ、あるいは顧客の趣味・嗜好などのサイコグラフィックデータが必要と判断した場合は、別途データの取得が必要です。
4.ランクの定義付けをする
ここまで、RFM分析に必要な情報をまとめました。次は顧客をランク別に分け、データを可視化していきます。
そのために全体のデータの分布を確認した上で、RFMそれぞれの値を決定していきます。
今回の場合は、例えば以下のようにランク付けが可能です。
5.データを分析する
定義したランクに基づいてデータを分析します。
R,F,Mそれぞれの値を算出し、顧客データの隣に並べることで、顧客それぞれの購買データを可視化することができました。
次は自社の課題に合わせて、さらにR,F,Mの3つの値を掛け合わせたグループを作成します。
例えば今回の場合、R・F・Mそれぞれのランク値に応じて、以下4つのグループが作成できます。
グループを作成する際は、リソースを割くべき顧客を絞り込むためにも、必ずしも全ての顧客をどこかのグループに含める必要はありません。
例えば今回のグループ分類では、R・F・Mいずれも「2」の顧客はどのグループにも属さないことになりますが、問題ないといえます。
エクセルを用いたRFM分析の実施例
具体的にエクセルを用いてRFM分析を実施する際は以下の手順で実施します。
- 顧客データを用意する
- RFMのランクを割り当てる
- グループを定義する
- クロス分析を実施する
1.顧客データを用意する
顧客データを用意する際に注意するポイントは以下の2点です。
- 期間を設定する
- 注文番号、顧客ID、注文日、注文金額のデータを用意する
期間を設定する際は、なぜその期間にするのかを仮説の時点で決定しておきましょう。
2.ピボットテーブルを作成する
顧客データが用意できたらRFM分析を行いやすいよう、ピボットテーブルを活用し、以下のような手順で必要なデータを抽出します。
上記のように範囲を指定後、エクセルの<挿入タブ>から「ピボットテーブル」を選択します。新規作成を選択すると、以下のようなフィールドが出てきます。
フィールド名に記載された各値を「行、値」に図の通りドラッグ後、集計の方法を以下のように変更します。
- 注文日:最大値
- 顧客ID:個数
- 注文金額:合計
すると、以下のような表が出てくるので、『「集計日」ー「最終購入日」』を計算。「最終購入日からの経過日数(Recency)」を算出します。
2.RFMのランクを定義し、反映させる
作成した表をRFM分析にかけるため、R,F,Mそれぞれの値をランク分けします。
今回の場合は、以下のようにランクを決定したとします。
ランク | R | F | M |
---|---|---|---|
3 | 20日以内 | 5回以上 | 30,000円以上 |
2 | 30日以内 | 3回以上 | 10,000円以上 |
1 | 60日以上 | 1回のみ | 10,000円未満 |
なお、エクセルに実際に入れる際には、ユーザー定義により「以上」「のみ」「未満」などは自動出力されるように設定をし、エクセル内には数値のみを入れられるようにしましょう。
その後、既存の表にR、F、M欄を追加し、IF式を用いて各顧客IDをランク分けします。
IF式の代入により顧客ランクを割り当てる際は、以下のようなIF式を手動入力します。
例えばL24におけるRのランクを判別するIF式と、それぞれの項目が示す意味は以下の通りです。
L24 = IF(I24>=Q$26,$P$26,IF(I24>=Q$25,$P$25,$P$24))
- l24:最終購入日からの経過日数
- Q26:ランク1のRの日数
- P26:ランク「1」
- Q25:ランク2のRの日数
- P25:ランク「2」
- P24:ランク「3」
上記L24を選択し、適用するとL列全てでIF式が適用されます。絶対参照を設定すると、そのままドラックでFとMの分析が可能です。
3.クロス分析を実施する
既にR,F,Mを算出した図だけでも施策の検討もできますが、より分析をしやすくするためにクロス分析を実施するのもよいでしょう。
例えば、RとFのデータをクロス分析をする場合、以下のように行います。
算出された結果を確認することで、以下のように顧客を分類する一助となります。
参考:バブルチャートで顧客を分類する方法もある
ここまでは、算出したデータをそのまま分析してきましたが、視覚的に理解するためにバブルチャートを使用する方法もあります。
上記のように、全てのデータを選択後、挿入タブからバブルチャートを選択するだけで完成です。
R,F,Mをバブルチャートで表示すると、自社の顧客のフェーズを可視化できます。
RFM分析の問題
RFM分析は、少ないデータから顧客を分析することができますが、必ずしも万能というわけではありません。RFM分析の問題点は以下の通りです。
- 顧客が購入した商品自体は考慮されない
- 一時点での分析のため実態にそぐわない可能性がある
- 抽出に手間がかかる場合もある
顧客が購入した商品自体は考慮されない
RFM分析では3つの指標を用いて顧客を分析しますが、顧客が購入した商品自体は考慮されません。
したがって顧客の購入した商品を詳細に分析し、それぞれの顧客に合った別商品を提案するなどの施策には活用できないため、注意が必要です。
一時点での分析のため実態にそぐわない可能性がある
RFMはあくまでも一時点の分析でしかありません。このため、優良顧客を見落とすリスクがあります。
例えばベビー商品の場合、RFM分析によって離反客とみなされた顧客であっても、今後出産予定が控えている場合は優良顧客になる可能性があります。
このように定期的な購入が見込みにくい商品の場合は、RFM分析の期間の設定次第では、上記の顧客に対して再度キャンペーンを出す施策が抜け落ちる可能性があるため問題となります。
抽出に手間がかかる場合もある
RFM分析はMAツール、あるいは前述の通りエクセルで行えますが、仮説を立て必要な情報を収集するまでにはある程度時間がかかります。
したがって単純に顧客データだけあっても、抽出に時間と手間がかかる場合があります。
またRFMそれぞれのランク値を定義するにも、相応の時間をかけた議論が必要になるでしょう。
RFM分析の精度を高める分析方法
RFM分析の精度をさらに高めるためには、RFMと他の指標を掛け合わせて利用するのがポイントです。
エリア情報:RFM-D分析
- RFM-D分析とは
- RFM分析とD(Distance:距離)を組み合わせた分析方法。
実店舗での販売を行う場合には、店舗との距離をRFM分析に加えることで、近隣顧客と遠方顧客の分類が行えます。
距離と売上の相関性が把握できれば、どの範囲に住む顧客へのアプローチが有効なのか予測が立てやすいのも強みです。
商品:MRFI分析
- MRFI分析とは
- RFM分析とI(Item:商品)を組み合わせた分析方法。
RFM分析にI(Item:商品)を加えることで、購入した商品情報も含めた分析が可能です。
例えばランドセルのように、再販が見込みにくい商品を購入した顧客を分析除外にするなど、分析精度が高められます。
商品カテゴリー:RFMC分析
- RFMC分析とは
- RFM分析とC(Category:カテゴリ)を組み合わせた分析方法。
MRFI分析では細かい商品ごとのデータをRFM分析と掛け合わせますが、分析するデータ量が増加するデメリットも存在します。
このため、より簡単に顧客の購入した商品を分析したい場合には、RFMC分析でカテゴリ別にRFM分析をするのがよいでしょう。
まとめ
RFM分析は3つの指標を用いて顧客を分類する分析手法で、それぞれの顧客に最適なマーケティング施策を実行するために有効です。
ただし一時点のデータとなるため、使い方を誤ると自社における優良顧客を見落とすリスクがあります。
RFM分析に合わせて他のデータを使用するなど、LTVの最大化につなげていきましょう。
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