SD法とは?リッカート尺度との違いやアンケート表作成方法などを解説
2022年11月18日
SD法とはあるトピックについての感情的イメージを測定する手法です。対立する形容詞の対を用いて、多段階選択肢のアンケートを取り、回答者の抱く感情を測定します。消費者ニーズや市場、トレンドなどの調査に活用されます。
この記事では、SD法の意味とアンケート表作成の注意点、分析方法などを解説します。
SD法とは?
対立する形容詞の対を用いて、多段階選択肢のアンケートを取り、回答者があるトピックへ抱く感情を測定する手法。
1950年代に、アメリカの心理学者C・E・オズグッドがSD法を開発しました。
S(Semantic(セマンティック))は「意味」を、D(Differential(ディファレンシャル))は「違い」を、それぞれ意味する英単語です。
SD法は、製品の印象評価の際に利用されることが多く、他にも消費者ニーズや市場、トレンドなどの調査にも活用され、一般的には5~7段階の尺度を用いることが多いです。
以下に、SD法の結果を視覚的に示した、セマンティックプロフィール※の例を掲載します。
セマンティックプロフィールは、SD法で対となる形容詞を両極に配置し、SD法の結果をつなげて線で結ぶことで、直感的に結果を理解できるものです。
下の例は、牛丼A、B、Cに対して、味と値段、提供までの速さの3つの項目から、SD法を用いてアンケートを取った結果をセマンティックプロフィールで示したものです。
SD法とリッカート分析との違い
SD法と比較されることが多いアンケート手法が、リッカート分析です。
あるトピックに対して、多段階の選択肢を用いたアンケートを取り、回答者がどの程度同意するかを測定する手法。
リッカート分析では、「大変満足、満足、普通」など段階的な選択肢を設定でき、「はい・いいえ」など単純な2択では測定しにくい質問でも回答を得やすいことがメリットです。
リッカート分析とSD法の違いを、以下に表にまとめます。
リッカート分析 | 設問に対して「はい」か「いいえ」を多段階で回答 |
---|---|
SD法 | 対となる形容詞のどちらに当てはまるかを多段階で回答 |
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SD法に基づくアンケート表を作成する際の注意点
SD法はアンケートの作成に役立つ考え方ですが、適切なアンケート結果を得るためには、いくつか注意点があります。
以下では、SD法に基づくアンケート表を作成する際の注意点を、3つ解説します。
理解しやすい形容詞を選ぶ
SD法のアンケートにおいて、選択肢には理解しやすい形容詞を選びましょう。
なぜなら、選択肢の意味を正しく理解できないと、回答者が適切に選択肢を選べないからです。
形容詞のNG例を、以下に2つ解説します。
難解な表現 | 例:「やねこい」 ※「面倒」という意味をもつ、中国地方の方言だが、全国的には意味が通じない可能性が高い |
---|---|
誤解される恐れがある表現 | 例:「まずい」 ※文脈次第で、味が「まずい」のか、悪い結果につながりかねない行動が「まずい」のか、わからなくなる |
3つの基本属性に基づく内容の質問を盛り込む
SD法を開発したオズグッドは、どんな文化の人々も有する感情的側面として、以下に示す「3つの基本属性」を提唱しています。
評価性 | 人が下す評価に対する感情的側面 例:「良いー悪い」「好きー嫌い」など |
---|---|
効力性 | 物質の形状などに対する感情的側面 例:「強いー弱い」「大きいー小さい」など |
活動性 | 動きやイメージに対する感情的側面 例:「熱いー冷たい」「積極的なー消極的な」など |
3つの基本属性は、どんな文化の人々も有する感情的側面で、多くの人々にとって回答しやすいため、質問内容に盛り込むとよいでしょう。
各尺度を最適な配置で設定する
SD法の各尺度を最適な配置で設定することで、より正確なアンケート結果を得られるでしょう。
以下に4つ、尺度を配置する際に注意すべきポイントを解説します。
1.形容詞の対の配置
似たような形容詞の対を近くに配置すると、その前に回答した内容に影響される可能性があります。
例えば、雑貨に関するアンケートで、「大きいー小さい」の質問をした直後に「重いー軽い」の質問をすると、大きさと重さとを紐づけて回答してしまう可能性があります。
よって、似たような形容詞の対は離して配置しましょう。
2.実際に商品を扱う順序
実際に商品を扱う順序に合わせて、アンケート項目の順番を決めることで、アンケートに回答しやすくなるでしょう。
例えばレストランの食事であれば、以下の順序で質問すれば、実際に商品を扱う順序で質問できるはずです。
順序 | アンケート項目 | お客様の行動・体験 |
---|---|---|
1 | 見た目 | 料理の実物を見る |
2 | 匂い | 料理の香りを嗅ぐ |
3 | 食感 | 料理を口に運び、歯応えや舌触りなどを感じる |
4 | 味 | 料理を味わう |
5 | 食後 | 料理を食べ終わる |
3.程度を示す副詞の使い方
選択肢においては、程度を示す副詞は順序立てて等間隔に配置するよう心がけましょう。
例えば、以下のように配置すれば、回答者は違和感なく回答できるはずです。
4.総括的内容の質問を出す順番
「良いー悪い」、「好きー嫌い」など、総括的な内容の質問は最後にするとよいでしょう。
SD法に基づくアンケート結果の分析方法例
アンケートは、結果を適切に分析して初めてビジネスに活用できます。
以下では、SD法に基づくアンケート結果の分析方法を、2つ解説します。
主成分分析
主成分分析は、多量の変数を少量の変数に置き換えて要約することで、データを理解しやすくする分析手法のことです。
主成分分析を用いることで、例えば別々の商品に対して、どれだけ似たイメージがあるかを判別できます。
そこから、商品やサービスの評価分析や、顧客満足度が高い店舗の特定などに役立つでしょう。
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因子分析
因子分析は、観測変数が潜在変数(因子※)からどんな影響を受けているか明確にすることで、複数の観測変数を少数に要約できる分析手法のことです。
※因子:ある現象の原因や先行条件となる、共通的で潜在的な部分
因子分析を用いることで、因子同士の関係性を把握できます。
例えば、因子分析を用いて、安定して利益を出している商品がもつ共通点を発見できれば、今後の商品開発やマーケティング戦略に活用できるでしょう。
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まとめ
SD法は、対立する形容詞の対を用いて、多段階選択肢のアンケートを取り、回答者があるトピックへ抱く感情を測定する手法です。
製品の印象評価や消費者ニーズ、市場、トレンドなど、様々な調査に活用できます。
SD法を用いてアンケートを作成する際は、理解しやすい形容詞の対を用いて、3つの基本属性を盛り込んだ質問を作成することで、回答者は回答しやすくなるでしょう。
また、各尺度の配置もアンケートの回答のしやすさに影響を与えるため、十分に注意しましょう。
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