市場調査の調査設計とは?方法とポイントを解説
2021年08月16日
市場調査を行うときは、何を目的としてどんな内容の調査を行うのかという計画を立てることが非常に重要です。この計画や、計画を立てる過程が「調査設計」です。
この記事では、調査設計の立て方とポイントについて解説します。
調査設計とは?
市場調査などを実施するにあたって調査設計を立てる必要があります。 調査設計では、例えばこのような項目を整理します。
- なぜ調査を実施するのか(マーケティング課題)
- 調査の目的は何なのか
- 何があれば調査の目的を達成することが出来るのか(調査課題)
- どのような方法で調査を実施するか
- 調査では具体的にどんなことを聞くのか
- どのぐらいのサンプル数(回答数)を回収するのか
- 調査準備から結果分析・レポート作成までどのようなスケジュールで行うか
- 全体にかかるコスト(費用)はどのくらいか
- 調査後にどのようなアクションを行うのか
市場調査の大きな流れは、以下のようになっています。
この中で上から2つの「マーケティングと調査の課題・目的を明確化」と「調査内容の企画」の工程が調査設計にあたります。
「Garbage In Garbage Out(出力の質は入力の質次第)」と言われるように、市場調査においては粗雑な調査設計を行うと、質の悪い情報が集まり役に立たない調査結果がアウトプットされてしまいます。
せっかく他社に無いような情報を先んじて得るためにわざわざ調査を行うのですから、調査設計は特に時間をかけて丁寧に行うことを心がけましょう。
調査設計のための7つのステップ
では、調査設計はどのように行うのが良いのでしょうか?
一般的に市場調査をしようと思うと、まず「どんな方法でやろうか?」と考え始めてしまうかもしれません。 しかし、方法やスケジュールといった詳細を決める前に、まず以下の4つのポイントについて整理しておきましょう。
◆調査設計でまず明確にすべき4つのポイント
- マーケティング課題(背景)
- 目的
- 課題
- 調査後のアクション
1.マーケティング課題(背景)を明確にする
まず、調査設計を行う前に、調査を行うことで解決したい調査の背景=「マーケティング課題」を明確にしましょう。 ここで、そのマーケティング課題の解決に市場調査が効果的かどうかの判断が必要になります。これは、調査結果のデータからは解決できない 課題を排除した上で調査設計を行うための準備です。
さらに、この段階では企業が直面しているマーケティング課題を整理して解決できる課題だけに絞り込むことで、調査結果からどのような意思決定を行えばよいのかも見えてきます。
2.調査の目的を明確にする
次に、マーケティング課題を解決するために何の調査を行うのかという調査目的を明確にします。 調査目的を明確にしなければ、この後設定する調査結果の予測である仮説の設定や調査方法の選定にズレが生じ、本来取得したいやデータが集められない可能性があります。
企業にとって市場調査の目的は、基本的には次のどれかになるのではないでしょうか?
- 機会発見:新製品を企画するためのアイディアが欲しい、市場のニーズを把握したい
- 選択:企画案や商品のコンセプト案などの候補が複数あり、調査結果を元に絞り込みたい
- 手ごたえ:考えた企画案やコンセプト案に自信を持つための確証が欲しい
- 予測:具体的な数値の見積もりが欲しい
- 診断:課題を見つけたい、マーケティングがスケジュール通り進んでいるか確認したい
- 検証:製品やサービスの最終的な受容性を調査し、企業の意思決定を行いたい
他部署の担当者や役員など、現場担当者ではない人が市場調査の依頼を行う場合、調査目的がクリアになっていない場合もあります。その際は、「調査したいと思ったきっかけ」について聞いてみることで本来の調査目的が見えてくることもあります。
3.現状を把握し課題を設定する
マーケティング課題と調査の目的が整理できたら、今度は「どのようにすれば目的が達成できるのか」を考えていきます。
このとき、まず調査対象である自社の製品やサービスの現状を把握しましょう。
- 業界での自社の位置づけ
- 業界での自社(製品やサービスを含む)の具体的な強みや弱み
- 他社の類似製品やサービスと比較したときの自社製品の市場感や需要
分かっているつもりでもこういったポイントを改めて言語化すると、目的とのギャップが見えやすくなります。
現状と目的のギャップから、市場調査を実施することで解決できる課題を設定します。 例えば、「新製品を企画するためのアイディアやニーズを把握するための調査を行いたい」という目的の場合、業界での自社の位置づけや過去に販売した製品の強みや弱みの把握といったものが課題となります。
課題が複数あると判断した場合には、優先順位をつけましょう。設定した課題が調査の目的と連動していることをしっかり確かめておきます。
4.調査後のアクションを想定する
調査を実施して得た情報をもとに分析を行い、結論を出す一連の工程の最終目標は課題解決や最終的な意思決定、新しい事業計画など次のアクションにつなげることです。この最終目標を、調査設計の段階からしっかりと意識することが大切です。
時間をかけて調査設計を立てて調査を行ったとしても、課題解決や意思決定に役立つ情報が手に入らなければ調査設計の意味自体がなくなってしまいます。
このとき同時に「設定した仮説を証明するためにはどんな情報と分析軸が必要か」という視点で、どんな分析軸が必要となるか考えておきます。 属性・行動軸・意識軸など、調査実施後に取得したデータをどのような視点で分析するか、調査設計の段階で決めておくことで、調査目的を達成するために必要な情報とのズレが生じることを防げます。
◆市場調査における分析軸の例
- 年代
- 性別
- 職業
- 自社商品やサービスを使用する頻度
- 満足度
ここまでの4つのポイントが整理できたら、ようやく調査の細部を詰めていきます。
5.仮説の設定
設定した課題をもとに、仮説を立てます。
仮説とは、「〇〇がきっかけとなって✕✕といった現象が起きたのではないか」などとアタリをつけることです。
例えば、洗濯用洗剤のリピート率が悪いという課題であれば「香りが良くないのではないか」という仮説を立てます。そうすることで、調査の回答者への質問内容に製品の香りについての項目を盛り込み、仮説が事実であるかを検証できます。
仮説を設定することで、誰に何をどのように質問するべきかが判断しやすくなり、効果的な調査が実施できます。明確な仮説があることで、調査結果の分析軸にもなります。
仮説を設定せずに調査だけを行うと、課題解決の役に立たない調査結果しか取得できないケースや、調査の範囲が絞り込めず、取得設問数が多くなり広く浅い情報しか集められない可能性があります。
6.調査対象・調査手法の選定
マーケティング課題の明確化や調査目的・仮設の設定後は、調査対象者(どんな人に調査を行うか)と調査方法を選定します。
調査対象者は、属性や履歴を組み合わせ、最終的に「調査目的や仮説の検証ができる人」になるように設定します。
- 属性:性別や年齢、住んでいる地域や職業など
- 履歴:商品やサービスを認知しているか、購入したことがあるか、使用中かそうでないかなど
必要なサンプルサイズと割付(回答数)については、統計的に見て許容できる誤差の範囲内で決定します。
このとき、同時にどのような手法で調査するかも考えます。
市場調査というとWEBアンケートのような「対象が複数の単発調査」をまずイメージするかもしれません。しかし、実際には1人の対象に対して深く質問する「デプスインタビュー」や同じ質問を時間を置いて何度も行う「パネル調査」など、色々な手法があります。 まずは、定量調査か定性調査どちらで実施したいのか考えてみると良いでしょう。
定量調査は、調査結果が「数値」でアウトプットされる調査です。 アンケート形式のものが多く、一度で大量のサンプルを集めることが可能です。調査結果は定量的に計測できますが、製品に色々な不満を抱えていたとしても「不満である」という1つの回答に集約されてしまい、詳細な理由が汲み取れないというデメリットもあります。
定性調査は、調査結果が「言葉」でアウトプットされる調査です。 ユーザーの生の声や数値に現れない絶妙なニュアンスにリーチすることができますが、ひとつひとつの調査に時間がかかりやすく、調査者による解釈が必要になるという難しいポイントもあります。
調査方法の詳細については、以下の記事をご覧ください。
7.予算とスケジュール(期限)の設定
最後に、調査にかかる費用の算出と、いつまでに調査を完了しいつまでに課題解決の意思決定を行うのかという期限を含めたスケジュールを設定します。 調査にかかる費用や期間は、調査方法によってさまざまです。実施するまでの準備に日数を要する調査方法もあるため、スケジュールや予算の誤差が大きくならないよう注意しましょう。
スケジュールのズレが大きくなると、調査実施後の意思決定や事業計画の創出が完了する日も先延ばしになってしまいます。調査の準備や調査結果の分析に日数を要することを想定し、余裕をもってスケジュールを立てましょう。
調査設計を立てたら調査票の作成へ
調査設計が完了したら、今度は質問内容を設定するといった具体的な内容である調査票作成に移行します。 質問作成のコツは、調査目的を分解し調査対象者へ「何を」「どのように」質問するのかを箇条書きでリストアップして作成することです。 (箇条書きの時点では、質問形式で書き出す必要はありません。)
最後に、順番を入れ替えなるべく回答者の負担が少ないように配慮します。 最初から難しい質問を投げかけるのではなく、製品やサービスを「購入したことがあるか」や「購入した理由」などの行動や経験に関する質問から始め、そのあとに使用感や満足度・不満などの意識や態度に関する質問を行うと回答しやすくなります。
ちなみに、調査目的や仮説の検証に関連する重要な質問は、できる限り前半で行うのがポイントです。回答者は、回答を進めていくのにつれて、回答者の離脱や集中力が途切れてしまいます。的確な回答が得るために、大切な質問は前半に持っていくようにしましょう。
まとめ
調査を実施しても解決できない課題を設定していたり、解決できる課題に絞り込んだとしても優先順位が不明確な場合、調査が失敗に終わる要因の一つとなってしまいます。
調査設計がしっかりしていなければ、調査目的が同じでも結果によって取得できる情報やデータの精度が下がり、それに伴い最終的なデータ分析の精度も悪くなります。
まずは、最初に提示した「なぜ調査を行いたいのか、何を解決したいのか」というポイントを深く要素分解して、明確な調査目的と課題を見つけ出し適切な調査設計を行いましょう。
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