ターゲットマーケティングとは?顧客を絞る分析方法や事例を解説

2022年02月24日

ものが溢れる現代では類似品が世の中に溢れているため、消費者は自身に最も合いそうな商品を選び、購入しています。

このような中、消費者と商品を販売する企業の双方がメリットを享受できるよう、ターゲットマーケティングを取り入れる企業が増えています。

そこで本記事では、ターゲットマーケティングの意味、目的を明確にした上で、顧客を絞りこむ手順をわかりやすく解説します。

ターゲットマーケティングとは?

ターゲットマーケティング
細分化した市場の中から、自社リソースを割くべき「想定顧客層」を決定し、広告やプロモーションを行うこと。STP分析におけるT(ターゲティング)に注力したマーケティング手法であり、対義語はマスマーケティング。

ターゲットマーケティングは顧客を分類し、ターゲットを絞り込むため、企業側が「顧客を選ぶ」マーケティング手法とされています。

消費者にとってはニーズに近い商品が宣伝され、企業にとっては購買見込みの高い顧客とつながりやすくなるため、消費者と企業双方にメリットをもたらすマーケティング手法です。

ターゲットマーケティングに欠かせないSTP分析とは

STP分析
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つの視点に基づいた企業利益を最大化するためのマーケティング手法。マーケティング論を提唱したコトラーが作成したフレームワーク。

STP分析を考案したのは「マーケティングの神様」との異名を持つ、アメリカの経営学者フィリップ・コトラー(Philip Kotler)氏です。

STP分析では、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順に市場を定義、細分化します。ターゲットマーケティングはSTP分析の手順に則り実施します。

S:セグメンテーションの役割

セグメンテーションでは、自社が注力するターゲットの分類を行います。具体的には以下4種類のセグメンテーションで顧客を分類します。

  • デモグラフィック:年齢、職業、可処分所得、家族
  • ジオグラフィック:国、人口、最寄駅
  • サイコグラフィック:性格、ライフスタイル、価値観、趣味
  • 行動変数:利用頻度、重視するベネフィット、購買意思決定権者

上記セグメンテーションを実施することで、見込み客をある程度大別できます。

T:ターゲティングの役割

ターゲティングではセグメンテーションで分類したターゲットから、顧客とブランドの利益を双方向的に向上させる市場・消費者を選択していきます。

ターゲティングを実施することで、自社の経営資源を効率的にターゲット層に投下しやすくなります。

ただしマーケティングを行う企業の中には、ターゲティングの実施により、リーチ層が減退することを敬遠する場合があります。

確かにターゲティングによってリーチ層の母数は小さくなりますが、商品購入までの到達率やリピート率は高まる傾向があるため、ターゲティングは有効と考えられます。

とはいえあまりにも細かくターゲティングを設定すると、市場規模が狭まるあまり、目標とする売上に到達しない可能性があるため注意が必要です。

P:ポジショニングの役割

ポジショニングでは、市場における自社の立ち位置を決定します。

ポジショニングは他社との競争抜きに自社が指名買いされる市場を獲得することを目的とするため、顧客視点から提供価値を考えます。

ポジショニングマップを作成し自社の立ち位置を検討しますが、ポジショニングの軸は様々なものが考えられ、具体的には以下のような軸が挙げられます。

  • 価格
  • ブランド提供価値:高級、おしゃれ、最先端、安心、伝統、刺激、穏やか
  • 時間帯:朝、昼、夜
  • 用途:家庭用、贈答用
  • 空間:室内、室外
  • 年齢:若年層、高年層

ポジショニングは差別化戦略と混同されることがありますが、他社との比較を前提とした差別化戦略とポジショニングは本質的に異なります。

※STP関連記事
 STP分析におけるセグメンテーションとは?意味や分析方法・成功事例を解説

ターゲットマーケティングを行う3つのメリット

ターゲットマーケティングを行うメリットは以下の3つです。

  • ブランド提供価値を最大限に活かせる
  • リターンの最大化が見込める
  • 競合優位性が明確化しやすい

ブランド提供価値を最大限に活かせる

ブランド提供価値とは、その名前を見た・聞いた際、無意識に私たちが頭の中に思い浮かべる情緒的なイメージのことを指します。

例えば、あるブランド名を聞いた時に、「くつろげそう」「お洒落」などのイメージを想像できる場合、そのブランドはブランド提供価値を生み出せていることになります。

ターゲットを想定しない場合、目指すべきブランドイメージがぼやけるため、顧客はブランド提供価値を想像しづらくなります。

このため顧客のブランドへの共感性を高め、ブランド提供価値を最大に活かすためにターゲットマーケティングは有用です。

ROI(費用対効果)の最大化が見込める

企業の経営資源は限られているため、ROI(費用対効果)を高める工夫が欠かせません。

ターゲットマーケティングでは、自社の商品が選ばれやすい層に焦点を当てて商品訴求を行います。

このため、リード段階で商品購入の可能性が高い層、ブランド提供価値への共感性が高い層を絞り込んでいるため、顧客の母数は減るものの質の高い集客が見込めます。

よって少ない投資で最大の成果を見込めるため、ROIの向上が期待できます。

競合優位性が明確化しやすい

ターゲティングを実施することで、ブランド提供価値が最大限に活かされやすく、結果として競合に対し優位なポジションを確立しやすくなります。

顧客はブランド提供価値に注目するため、自社ブランドの情緒的価値で他社に対し優位性を築きやすくなります。

機能などでの差別化は容易に追随されるリスクがありますが、顧客の感情を含めた優位性は代替されづらく、競合に対する優位性が保たれます。

効果的なターゲットマーケティングを実施するための5ステップ

効果的にターゲットマーケティングを実施するためには、STP分析だけでなく、ペルソナ設定やインサイトの把握が必要です。このため以下の手順で実施することをおすすめします。

  1. 市場・顧客を細分化する
  2. ターゲットを絞る
  3. ペルソナを設定する
  4. インサイトを見抜く
  5. 自社ポジショニングを決定する

1.市場・顧客を細分化する

ターゲットマーケティングを行う際、まずは市場・顧客を細分化します。STP分析における4つのセグメンテーション軸を参考に、市場・顧客を細分化していきましょう。

市場や顧客の細分化はその後のターゲティング、ポジショニングに活かすために「自社商品へのニーズがある人」を見つけ出すことが狙いです。

そのため「なぜそのセグメンテーションで分類を行ったのか?」が明確に答えられるよう、市場・顧客を細分化しましょう。

2.ターゲットを絞る

ターゲットの絞り込みのイメージ

ターゲットを絞り込む際は、その軸で想定顧客を絞り込められるのかを確認します。

例えば20代女性を自社製品のターゲットとする場合、20代女性といっても大学生やOL、主婦などさらに細かく区分できます。

よって「20代女性」という年齢・性別軸だけではターゲティングが不十分であり、顧客の想定ニーズを深堀できるかという観点でターゲットを絞りましょう。

なお、設定したターゲティングの精度や有効性を確認するためには「6Rのフレームワーク」を活用することをおすすめします。

6Rのフレームワークを使用する

6Rのフレームワークでは、以下6つの観点からターゲティングの有効性を判断します。

  • Realistic Scale:自社ブランドの売上はいくらか
  • Rival:競合がどこになるのか
  • Ripple Effect:顧客の優先度、関心は高いか
  • Reach:顧客に自社ブランドの魅力を届けることはできそうか
  • Response:顧客の反応の測定はできそうか

ターゲティングをマーケティングに役立てるために、6Rのフレームワークでターゲット設定の精度を確認しましょう。

3.ペルソナを設定する

ペルソナ設定のイメージ

ここまで行っていたターゲティングは、あくまでも企業から顧客を分析した際の視点です。

ここから、顧客視点に立ったターゲット像をさらに深堀ることで、顧客のインサイトを発見し、他社と競合しなくてよい独自のポジショニング獲得につながります。

このインサイトの発見に役立つのが「ペルソナ設定」です。

例えばある結婚相談所サービスの場合、以下のような項目でペルソナ像を考えていきます。

  • 性別:女性
  • 年齢:30歳
  • 結婚状況:独身
  • 住まい:港区
  • 職業:IT企業の管理職
  • 生活:仕事一筋
  • 願望:恋愛も真剣にしたい

ペルソナを設定することで、想定顧客が抱える悩みやニーズをより深掘りしやすくなります。

4.インサイトを見抜く

インサイトイメージ(意識ー無意識ピラミッド図)

インサイトとは物事の本質を見抜き、顧客の無意識の本音を発見することです。

顧客の顕在ニーズは把握しやすいものの、インサイトを把握するには、本人ですら認識していない深層心理のため、ペルソナになりきって思考を巡らせる必要があります。

意識ー無意識のイメージ

例えば20代の男性にプログラミングスクールを訴求する場合「自身の市場価値を上げて転職を優位にしたい」が顕在ニーズとなります。

しかし顧客のペルソナ次第では「会社に所属しなくても生きていける、自分というブランドを確立したい」というインサイトが考えられます。

ニーズからインサイトにまで踏み込むことで、他社に対する競合優位性が向上します。

5.自社ポジショニングを決定する

ポジショニングマップの例

消費者から見て、他のブランドよりも優位に立っているポジションを獲得するのがポジショニングです。

ポジショニングマップの切り口はペルソナから想定されるニーズを軸としますが、インサイトまで踏み込むと、競合よりも優位に立ったポジショニングが取りやすくなります。

ポジショニング軸の取り方には、一例として以下の方法があります。下記の軸から自社の強みや競争優位性を考慮し、2つの軸を選び、ポジショニングマップを作成します。

  • 価格
  • ブランド提供価値:高級、おしゃれ、最先端、安心、伝統、刺激、穏やか
  • 時間帯:朝、昼、夜
  • 用途:家庭用、贈答用
  • 空間:室内、室外
  • 年齢:若年層、高年層

ターゲットマーケティングの事例

具体的なターゲットマーケティングの事例を紹介します。

飲料メーカーAの事例

飲料メーカーAは「市場細分化」によりセグメンテーションを適切に行った会社です。

A社がコーヒーを販売しようとした際、既にコーヒー市場は大手2社が家庭用、屋外用のコーヒーのシェアを獲得しており、そのまま商品を販売しても売れないリスクがありました。

そこでA社は屋外用のコーヒーをさらに2分割するセグメンテーションを実施。「屋外」の軸をさらにプライベート用、仕事用とに分類しました。

結果、「仕事用のコーヒーといったらA社」というブランドを確立することができ、飽和したかのように見えた市場に活路を見出すことができました。

顧客視点からセグメンテーションを細分化することで、新たな市場を開拓できた事例です。

まとめ

本記事では、ターゲットマーケティングについて解説しました。ターゲットマーケティングは、消費者と企業の双方がメリットを享受できる手法です。

今回紹介したターゲティング方法を活用し、自社のより効果的なマーケティングに活用いただければ幸いです。

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