ABテストでWebサイトや広告を改善|やり方や事例を解説

2023年09月05日

ABテストでWebサイトや広告を改善|やり方や事例を解説

問い合わせ数を増やしたり認知を拡大するため、多くの企業がWebサイトの運営や広告発信に取り組んでいます。これらの施策で成果を得るには、顧客ニーズに合わせ、繰り返し改善が必要です。しかし、一気にサイト構造全体を変更するなど大幅な改善をする場合、手間やコストが大きくなりやすく、見合った効果が得られる確証もありません。

そこでよく使われるのが、ABテストです。ABテストでは、広告文やWebサイト構造の異なるパターンを2つ用意し、ランダムにユーザーに表示します。より成果を得られるのはどちらか比較することで改善を進めます。

小さな変更と比較を繰り返すことで、着実に成果を得られる内容へと改善していくABテストですが、ポイントをおさえて実施しないと失敗してしまうこともあります。そこで本記事では、ABテストの概要や得られる効果、失敗しないためのポイントについて解説します。

ABテストではWebサイトや広告で2パターンを比較検証

ABテストとは、AパターンとBパターンの2つを用意し、「どちらがより良い成果を出せるのか」ユーザーの反応をもとに比較検証する手法です。「問い合わせ数を増やしたい」「より認知を獲得できる方法を選択したい」など、Webサイトや広告のコンバージョン最適化を目的に実施されます。

例えば、Webサイトを運用していて、以下のような課題を抱えている場合、ABテストの実施で課題解決の糸口を見つけ出せる可能性があります。

  • Webサイトの集客が伸び悩んでいて、リニューアルや改善を行いたい
  • サイト全体の直帰率が高い、もしくは離脱率の高いページを改善したい

ABテストのポイント

ABテストの実施には、3つのメリットがあります。

Webサイトや広告の部分改善を速やかに進められる

ユーザーの行動が多様化する中でも成果を獲得し続けるためには、顧客ニーズの変化に合わせて、繰り返し施策を改善していくことが重要です。

ABテストでは1箇所ずつ比較するのが基本のため、部分的なリニューアルを実行したい場合に適しています。短いスパンで繰り返しABテストを行うことで、施策の改善スピードを早めることができます。

少しの費用でも実施できる

Webサイト全体を一新するなど、始めから大きな改善に着手するのは費用も手間もかかります。さらに「大幅にリニューアルしたのに、思うような成果が得られなかった」という事態も起こりかねません。

ABテストは既存のWebサイトや広告の一部分だけを変えて比較検討するため、フルリニューアルに比べると低コストで実施することができます。

客観的に検証できる

Webサイトや広告の改善パターンは複数あるため、どのような改善が最適なのか選ぶことは容易ではありません。ABテストの結果は、CVRやCTRなど定量的指標に基づいて表されるため、経験や勘に頼ることなく、客観的な意思決定が可能になります。

【実践】ABテストのやり方

ABテストを効果的に行うために、以下のステップで進めます。

  1. 目的を明確化する
  2. 仮説を設定する
  3. ABテスト実施の影響を予測する
  4. ABテストを実施する
  5. 結果を分析し、次の施策につなげる

1.目的を明確化する

まずは、「ホワイトペーパーのダウンロード数を増やす」など、ABテストの実施目的を明確にします。流入数が多いページ、コンバージョンに近い要素など、改善した際に得られる効果が大きい箇所から実施すると、施策全体の成果向上に直結しやすいです。

目的設定時には、ペルソナ設定とカスタマージャーニーマップの作成も行うのがおすすめです。ユーザー像を明確にし、顧客の感情や行動を時系列に整理することで、各タイミングにおける顧客の状態を理解でき、課題となっている部分に気づきやすくなります。

なお、カスタマージャーニーについて詳しく知りたい方は、「カスタマージャーニーとは?マップの作り方やテンプレート、事例を紹介」をご覧ください。

2.仮説を設定する

何を検証するためにABテストを実施するのかといったゴールが定まったら、次は仮説を設定します。

目的(例) ホワイトペーパーのダウンロード数を増やす
仮説(例) コラムの文中に、ホワイトペーパーをダウンロードできるCTAを設置することで、ダウンロード数が増えるのではないか

WebサイトのABテストを行うのであれば、ユーザーの流入からゴールまで、どの段階での離脱が多いのか、アクセス解析ツールなどを用いてボトルネックを特定すると、根拠のある仮説を立てることができます。広告、CTAのクリック数やダウンロード数など、実際のデータに基づいて定量的な仮説を立てておくと、テスト結果の客観的な分析に役立ちます。

また、一口にABテストと言っても、検証項目は多岐にわたります。デザインの色や画像の要素を比較するのか、それとも訴求文の長さや文字の大きさを比較するのか、テストパターンも複数あります。仮説設定と同時に、何を検証するためのテストかも明確にしておくことが大切です。

3.ABテスト実施の影響を予測する

ABテストでは、仮説通りの結果が出るとは限りません。

例えば資料ダウンロードを促す訴求文の内容を変更したことで、クリック数が減少するなど悪影響が出る可能性もあります。

また、運営側が普段は気にかけていない要素が、ユーザーにとっては意外と重要だった、というケースもあります。ABテスト実施の影響を事前に予測しておき、仮説通りの結果が得られなくても慌てずに対処できるようにしておきましょう。

4.ABテストを実施する

1〜3の準備が整ったら、ABテストを実際に行います。

ランダムにユーザーに振り分けて表示し、同時期に複数パターンを検証します。また、効果検証に必要なデータが取れるよう、ABテストツールを準備しておくなど、データ計測環境の整備もしておきます。

なお、WebサイトやWeb広告改善のために行うABテストは主に以下の3パターンがあり、目的に合わせて最適なやり方を選択します。

▼Webサイト、Web広告におけるABテストの代表的な3パターン

同一URLに対する
ABテスト
  • URLを変えずに見た目だけを変える手法で、最も一般的
  • 画像やキャッチコピーなどを比較する
リダイレクトさせる
ABテスト
  • テスト対象ページに来訪したユーザーを、別URLにリダイレクトさせる手法
  • リダイレクト先では、見た目だけでなく中身も別物を使って検証を行う
  • 新たにページを設けるので、全体的な変更を行った際のテストにも有効
多変量テスト
  • 同ページ内、又はページをまたいで様々な箇所のテストを同時に行う

    【比較例】

    • ボタンの色
    • キャッチコピー
    • トップ画像

5.結果を分析し、次の施策につなげる

得られた結果を分析し、広告やWebサイトの改善に着手します。

仮説が間違っていた場合、改善方法が間違えているのか、そもそも改善すべきポイントが異なっていたのか、要因は複数考えられます。仮説が間違っていたとしても、一度元のパターンに戻して他の改善策を考えるなど、次のアクションを見つける糸口になります。

ABテストの分析方法として一般的に用いられるのが、カイ二乗検定の「独立性の検定」です。独立性の検定とは、分類基準間に関連があるか検定するもので、帰無仮説(両者に関連はないとする仮説)と対立仮説(帰無仮説を否定する仮説)の真偽を判定します。詳しく知りたい方は「カイ二乗検定とは?検定手法を解説」をご覧ください。

また、ABテストツールの中には、パターンAとパターンBのどちらがよかったか、両パターン間に有意差があったのかを判定してくれるツールもあります。このようなツールを活用すれば、より効率的にABテストの結果を分析することができます。

データ分析手法についてより詳しく知りたい方は、「【課題別】データ分析、どのように行う?全14種の手法を徹底解説!」をご覧ください。

ABテストで失敗しないための注意点

ABテストの効果を十分に引き出すには、注意しなければならないポイントがあります。以下に5つ、ABテストで失敗しないためのポイントを解説します。

テスト時期や比較要素・内容を統一する

ABテストでは、複数パターンを同時に検証したほうがよいとされています。テストの時期がずれると、ユーザーの流入経路やモチベーションが変化してしまい、検証結果が妥当ではなくなる可能性があるためです。

また、比較する要素を絞っておかないと、どの要素が結果に影響を与えたのかわからなくなってしまうため、あくまでも変更するのは1つの内容だけにします。

クリスマスなどのイベントやボーナス支給の時期など、外部要因が影響を及ぼす場合もあるため、時期も考慮したうえで検討する必要があります。

一定以上のサンプルを確保する

ABテストでは、ユーザー数やCV数が一定以上ないと、結果の信頼性を確保できません。また、必要なサンプルサイズ(対象となるユーザー数やCV数)は、元々の閲覧数やメディアによって異なります。

信頼性に関しては「信頼性と妥当性との違いとは?適切なサンプルサイズの考え方も解説」で詳しく解説しています。

テスト期間は最低2週間確保する

十分信頼できる結果を得られるサンプルサイズを得るためには、テスト期間を十分確保しなければなりません。

一般的には、最低2週間は確保する必要があると言われていますが、閲覧数やCVが少なければ2週間でも不十分なこともあります。反対に、閲覧数やCV数が多ければ、2週間に達しなくてもサンプルサイズを十分確保できる場合もあります。

望み通りの結果が得られるとは限らない

「ホームページの要素を更新した結果、成約率が下がってしまった」「広告を追加した結果、クリック数が低下してしまった」など、想定外の結果が生じることもあります。

もしマイナスの結果が出たとしても、Webサイト全体を一気にリニューアルするよりもリスクやコストは小さく済みます。また、良い結果も悪い結果も記録として蓄積していけば、今後の施策立案に役立つ知見になります。

PDCAサイクルで改善し続ける

ABテストの結果で得られる数字は、トレンドや流入データに左右されやすいものです。仮説検証の一手段として、デザインや訴求の参考、フルリニューアルのリスク排除として使うのがおすすめです。

また、Webサイトや広告を一部分でも変えると、ユーザー行動にも変化が起きます。マーケティング活動全体の最適化を図るためにも、ABテストは単発ではなく繰り返し行い、PDCAサイクルに則って改善を続けることが重要です。

ABテストでWebサイトや広告等の改善を図った事例

ABテストのやり方や効果をより深く理解するには、実際の事例を参考にすることも有効です。最後に2つ、ABテストでWebサイトや広告の改善を図った事例を紹介します。

中古車販売会社

中古車販売会社A社では、Web広告による集客が頭打ち状態だと感じていました。そこでLP改善に着手することにし、CTAボタンの文言について、以下パターンでABテストを行いました。

▼ABテストパターン

  1. 高額査定
  2. 買取実績No.1
  3. 満足度No.1
  4. 最短◯秒で査定
  5. 一括申込みスタート!

ABテストの結果、最もクリック数が多かった「一括申込みスタート!」に変更し、集客の向上を実現したそうです。

コンテンツメディア

コンテンツメディアB社では、資料ダウンロードにつなげる導線を見直すべくABテストを実施しました。以下の3パターンを用意し、CVRを比較しました。

▼ABテストパターン

  1. 「○○スタートアップガイド(無料)」と書く(従来の導線)
  2. 従来の文言にアンダーラインを引く
  3. 従来の文言を「B社のノウハウを凝縮!○○スタートアップガイド(無料)」に変更

ABテストの結果、3つ目のパターンが従来の約2倍のCVRを記録したため、3を採用することとなりました。

まとめ|ABテストで、客観的かつスピーディな施策改善を

ABテストは、Webサイトや広告を、AパターンとBパターンの2パターン用意し、「どちらがより良い成果を出せるのか」を検証するものです。同一URLに対するABテストが一般的ですが、リダイレクトさせる方法や多変量テストもあります。

ABテストを行うことで、Webサイトや広告などの部分的な改善を速やかに進めることができます。思うような結果が得られないこともありますが、仮説とは異なる結果となった場合も、次の仮説の根拠や役立つ知見になりうると前向きに捉えましょう。

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よくある質問

Q1.ABテストのやり方は?

ABテストは、以下の5ステップで行います。

  1. 目的を明確化する
  2. 仮説を設定する
  3. ABテスト実施の影響を予測する
  4. ABテストを実施する
  5. 結果を分析し、次の施策につなげる

詳しくは、「【実践】ABテストのやり方」の章をご覧ください。

Q2.ABテストに失敗しないためのポイントは?

ABテストに失敗しないためのポイントは、以下の5つです。

  • テスト時期や比較要素・内容を統一する
  • 一定以上サンプルを確保する
  • テスト期間は最低2週間確保する
  • 望み通りの結果が得られるとは限らない
  • PDCAサイクルで改善し続ける

詳しくは、「ABテストで失敗しないための注意点」の章をご覧ください。

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