効果的なアンケート集計・分析方法とは|手順や実施上のポイントを解説
2022年06月06日
アンケートは回答方法や調査目的によって、適切な集計方法や分析方法が異なります。
アンケートの実施から集計、分析の流れを把握したうえで正しい分析方法を選択し、有効性の高いデータを抽出することが重要です。
今回は代表的なアンケート集計・分析方法の概要を中心に、アンケート分析に役立つ内容をご紹介します。
アンケート分析の手順
アンケート調査を実施した後は、事前に設定した目的に適した方法でデータの集計を行い、分析を実施します。
◆主なアンケート分析の手順
- アンケート調査結果を集計する
- 集計した情報を分析する
【ステップ1】アンケート調査結果を集計する
アンケート調査結果は、回答者ごとにデータが並んでいるだけのローデータの状態のため、アンケートを集計してデータを見やすくする必要があります。
アンケート調査結果の集計方法としては、主に以下の3つがあります。
- 単純集計
- クロス集計
- 自由記述集計
最もシンプルな集計方法が「単純集計」です。
単純集計では、質問ごとに回答者の実数や割合、平均値が確認できるため、アンケート調査の全体像を把握する際に最適です。
「単純計算」より得られたデータに年齢や性別などの属性を掛け合わせて集計する「クロス集計」を行うと、より詳細なデータを確認できるので、分析時に役立ちます。
回答者が自由に記述できるアンケートの場合は「自由記述集計」で、類似した回答をカテゴライズしたり、頻出単語から関連性を見いだしたりして集計していきます。
実際に集計する際は、Excel等を活用しグラフや集計表にしてまとめるとよいでしょう。各集計方法については、アンケートデータ集計方法で詳しく解説します。
【ステップ2】集計した情報を分析する
アンケート調査結果の集計後は、抽出データの分析をします。
アンケート分析をする際に使われるのは、主に以下の分析手法です。
- クラスター分析
- アソシエーション分析
- 主成分分析
- 決定木分析
分析すると、例えば「商品に満足している」と答えた回答者に「類似した特徴があるのか」「関連性があるか」「どのような価値観を持っているのか」などがわかります。
アンケートを実施した目的に合わせ、掘り下げたい要素に合った分析手法を選びましょう。
分析手法については、アンケート分析方法で紹介しています。最適な分析手法を選ぶ際にお役立てください。
アンケート分析を実施するうえでのポイント
質の高いアンケート分析を実施するうえで重要なポイントは3つです。
- 最初は全体から捉え、細部は後から見る
- データの有意性を考慮する
- 有効回答の基準を満たしているか確認する
最初は全体から捉え、細部は後から見る
アンケート分析を行う際は、最初に全体像を把握したうえで、細部を分析します。
最初から細部に着目してしまうと、全体像と細部の比較ができないため両者の違いを読み解けず、データに偏りが生じる可能性もあります。
一般的な流れとしては、単純集計で全体像を把握してから、突出している数値などクロス集計を使って細部を見ながら分析することが多いです。
データの有意性を考慮する
アンケート分析を行う際は、事前にアンケートの集計結果が統計的に信頼できるのかデータの有意性を確認しておきましょう。
データの有意性が低く信頼性が足りなければ、分析結果に誤差が生じる可能性もあります。
有意性の見極めには、「データの回答数」「回答者の代表性」という2点の確認が必要です。
◆集計データの有意性を確かめる方法
- データの回答数:適切な回答数が集まっているか
- 回答者の代表性:抽出データに代表性はあるか
アンケートの回答数が少ない場合はデータに偏りが発生するため、分析の精度が低くなってしまいます。抽出した調査結果の一部が、全体の意向を偏りなく反映できているかを確認しましょう。
例えば、商品Aに関する顧客の要望や意見を集める場合、毎月の購入者数に対して回答数が極端に少ないと、集計した意見に偏りが発生している可能性が高いといえます。
また商品Aの購入者が1か月に掛けられる美容代を知るためのアンケートを実施した場合に、代表者の年収が平均よりも極端に高いと、全体の傾向を正確に反映しているとは言えません。
アンケート分析を実施する際は、適切な回答数を確保したうえで、代表者が全体の意向を反映できているかまで確認しましょう。
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有効回答の基準を満たしているか確認する
アンケート集計を行う前にアンケートの回答内容を確認し、有効回答と無効回答を分けておきます。
無効回答も集計してしまうと、偏りのあるデータが抽出されてしまうため、有効回答の基準を満たしているのかを集計前に確認しておく必要があります。
例えば、以下のような回答は省きます
◆無効回答の例
- 指定された質問項目に回答していない
- 他の回答と照らし合わせて明らかに異常な数値が記載されている
- 回答すらしていない
- 対象外の人物が回答している
事前に有効回答の基準を定め、アンケート分析実施前に無効回答を省いておきましょう。
アンケートデータ集計方法
アンケートデータの集計方法としては、主に以下の3つがあげられます。
- 単純集計
- クロス集計
- 自由記述集計
単純集計で概要を把握したうえでクロス集計を行い、回答結果をより細分化するのが一般的な方法です。
回答者が自由に記述できるアンケートの場合は、自由記述集計も行います。
単純集計
単純集計とは、アンケートの質問ごとに回答数や割合、平均値を集計する方法です。
単純計算は、データを以下の項目に分けて区切って集計します。
- 質問にあてはまる人の数(度数、n数)
- 質問にあてはまる人の割合(%、比率)
- 平均値
一番シンプルな集計方法であり、アンケート調査結果の全体像を把握する際に用いられます。
例えば、以下のように回答をまとめます。
◆単純集計の例
質問内容:
新製品Aに対する気持ちのなかから、もっとも近いものを1つ選んでください。
- 非常に興味がある
- やや興味がある
- どちらともいえない
- あまり興味がない
- 全く興味がない
単純集計を用いて、各項目の回答者数を算出すると以下のようになります。
回答数(n) | % | |
---|---|---|
非常に興味がある | 456 | 44.8% |
やや興味がある | 332 | 32.6% |
どちらともいえない | 150 | 14.7% |
あまり興味がない | 59 | 5.8% |
全く興味がない | 21 | 2.1% |
全体数 | 1,018 | 100.0% |
新製品Aに対して「非常に興味がある」「やや興味がある」と回答した人が合計して77.4%もいるため、新製品Aへの全体的な期待感の高さがわかる結果といえます。
回答の選択肢が多い場合は、表や円グラフで割合を項目別にまとめましょう。
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クロス集計
クロス集計とは、単純集計の調査データを2つ以上の項目と掛け合わせて集計する方法です。
単純集計後に、Excelのピボットテーブルなどで「男女別」「年代別」「回答別」というグループ分けをすることで集計できます。
例えば、単純集計の例で説明すると新製品Aのアンケート回答項目ごとの男女別や年代のデータを見たいときにクロス集計を実施します。
上記のように男女別や年代別など属性に分けることで細かい部分まで分析可能です。
クロス集計を活用し集計結果を細分化して把握することで、ターゲットに合った商品改善やサービスのコンセプト設計に役立てられます。
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自由記述集計
自由記述式のアンケート調査データは、以下のように「数値」「文章」で回答する2つに分けられます。
◆自由記述の質問および回答例
- <数値>
- 質問:1ヶ月間の平均の食費を教えてください。
- 回答:4万円
- <文章>
- 質問:新発売のフライパンを使った感想をご記入ください。
- 回答:普段使っているものより軽くて振りやすかった。しかし、焦げが洗ってもなかなか取れなくて困った。
自由記述で得たデータが数値の場合は、Excel等で平均値や中央値、標準偏差値、最小値、最大値などを集計します。
アンケートの回答が文章形式の場合は、一覧表を作成して集計を行います。
具体的には、「アフターコーディング」「テキストマイニング」という2つの方法を活用します。
- アフターコーディング
- 集計した文章の中から類似の回答をまとめて共通のカテゴリーごとで分類し、データを絞り込む手法。
- テキストマイニング
- 文章を単語や文節で区切り、テキストデータに含まれるワードの出現頻度や単語同士の関連性を解析する手法。
文章は数値と異なり意見の具体的な傾向を掴みにくいため、キーワードの絞り込みや出現頻度のチェック、単語同士の相関性チェックをしながら集計しましょう。
アンケート分析方法
集計したアンケート結果を分析してマーケティングに活用していきます。
アンケート分析方法は、4つ挙げられます。
- クラスター分析
- アソシエーション分析
- 主成分分析
- 決定木分析
クラスター分析
- クラスター分析
- データ全体を特定のグループに分けて、対象を分類する手法。集団の中から似たもの同士で分類する。
クラスター分析は、年齢や性別、居住地などのデモグラフィックデータではなく、個人の考えや価値観、意志などの抽象度が高い指標を分類できます。
例えば、自由記述式の回答を分析する際に活用できます。また、巨大データの解析や特徴を理解したいときにも役立ちます。
クラスター分析は2つの手法があり、サンプル数などにより分析方法を選択します。サンプル数によっては両手法を併用する場合もあります。
- 階層クラスター分析
- 非階層クラスター分析
手法によってデータを分類するときの方法に違いがあります。
クラスター分析の詳しい解説は、以下の記事をご覧ください。
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アソシエーション分析
- アソシエーション分析
- 調査結果を元に「If(もしこうだったら)」と「Then(こうなる)」というデータ間の相関関係を発見する手法。
アソシエーション分析は、購買行動の予測や、マーケティング施策の策定にも役立ちます。
アンケート調査結果からアソシエーション分析を実施することで、例えば商品に対する感想を抽出し「◯◯という感想を持つ人は□□を好む傾向にある」といった仮説を立てられます。
また、過去の分析結果があれば比較することで、どのように消費行動が変化しているかも分析可能です。
主成分分析
- 主成分分析
- たくさんある変数を少ない変数に置き換え要約し理解しやすくする手法。
大量の変数を「1~3つの変数(=主成分)」に置き換えて分析するのが一般的です。
主成分分析は、主に顧客満足度や消費者の購買動機、商品評価などを調査する際に役立ちます。少ない変数に置き換えて分析するため、アンケートデータを理解しやすくなり全体像も掴めるようになります。
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主成分分析とは?因子分析との違いや事例を初心者にも分かりやすく解説
決定木分析
- 決定木分析
- 観測変数の中から目的変数に影響を及ぼしている説明変数を明らかにするために、ツリー(樹形図)を用いて分析する手法。
アンケート調査結果から決定木分析を行うと、商品のターゲット層や消費者の行動分析などが把握できます。
ツリーを用いて分析していくことで、消費者を商品に「関心がある・ない」などセグメントごとに優先順位を付けて把握できます。
また特定の商品を購入する顧客の分析に活用できます。
例えば上図の例では、商品Aを購入した顧客の中で一番高い購入率だったのは、首都圏在住の男性であることがわかります。
このように決定木分析では、今回で言えば「商品Aが誰に購入されているのか知りたい」などの目的変数に対し、どの説明変数が影響を及ぼしているのかを分析していきます。
クロス集計をかけて一つひとつの項目を算出できますが、決定木分析によってさまざまなパターンを視覚的に把握できます。
決定木分析では、回答者の予測したい行動を目的変数に、自社にある顧客情報を説明変数に設定することで顧客データを元に消費者の行動予測が可能です。
まとめ
アンケート分析を実施する際は、調査の目的に合わせて適切な分析方法を選択することが大切です。
データを分析する前に単純集計で全体像を把握し、クロス集計を実施して属性ごとなどで細かく分析する流れが一般的です。
アンケート分析には、主に4つの手法があります。
- クラスター分析
- アソシエーション分析
- 主成分分析
- 決定木分析
分析手法の特徴を押さえておくと最適な手法を選べます。
アンケートの結果を適切に分析して、マーケティングに活用しましょう。
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