ファネル分析とは?ファネルの種類やメリットなどを解説
2022年09月16日
ファネル分析とは、消費者の認知〜購買までの行動をファネル(ろうと)に見立てて、プロセスごとに分析する手法です。各プロセスの現状を定量的に評価することで、特に改善すべきポイント(ボトルネック)の特定や効率的なCVR向上に役立ちます。
この記事では、ファネル分析の意味やマーケティングに活用するメリット、注意点などを解説します。
ファネル分析とは?ファネルの種類とともに解説
- ファネル分析
- 消費者の行動プロセスをファネル(ろうと)に見立てて、プロセスごとに残った人数を分析する手法。
ファネル分析とは、ユーザーがサービスを認知し購入や契約に至るまでの意識変化の流れをファネル(ろうと)に見立てて分析する手法です。
消費者の行動プロセスを、「認知」「初回購入」「リピート」などの段階ごとに分析することで、各プロセスの現状を定量的に評価できます。
ファネル分析を用いて各プロセスの現状を把握することで、消費者がサービスを認知してから購買に至るまでの間で改善すべきポイント(ボトルネック)がわかりやすくなるため、効果的なマーケティング活動の改善につながります。
ファネルの種類は主に以下の3つです。
パーチェスファネル
パーチェスファネルではプロセスをにおけるプロセスは、以下のようにとおり分類されます。
パーチェスファネルは、ユーザーが商品を購入するまでの行動や意識変化を図式化したものです。
ユーザーの行動が購買まで一直線に向かっており、購入に近づくほど人数も絞り込まれていきます。
例えば、ECサイトであれば、以下のとおりの流れで購買行動が進みます。
AIDMA※を軸に考案された、最も一般的なファネル分析の形です。AIDMAもパーチェスファネルも、消費者の購買までのプロセスを図で表現できます。
※ユーザーの購買行動プロセスを体系化したフレームワーク。ユーザーの購買行動プロセスを以下の5段階に分類して、プロセスに応じたマーケティング施策の立案などに役立てる。
- A(Attention:注目)
- I(Interest:興味)
- D(Desire:欲求)
- M(Memory:記憶)
- A(Action:行動)
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インフルエンスファネル
インフルエンスファネルは、ユーザーが自社サービスに対してコンバージョンした後の行動や意識変化を、以下の流れで図式化したものです。
パーチェスファネルでは「購買まで」を図式化していましたが、インフルエンスファネルでは「購買後」のユーザー行動に重きを置いています。
スマートフォンやSNSの普及によりユーザーが商品レビューなどを手軽に発信できるようになったことで、コンバージョン後のユーザー行動を無視できない場面が増加しました。
例えば特定の商品を購入したユーザーが、商品に対して肯定的な感想を発信したと仮定します。
肯定的な感想やレビューが集まると、他のユーザーも商品に興味を持つ可能性が高まり、さらなる見込み客の獲得につながるでしょう。
顧客ロイヤリティ(商品に対する愛着や信頼感)が向上し、クチコミにより結果的に商品の販売を促進してくれるのです。
一方で商品に対する否定的なレビューが発信された場合、評判を見た他のユーザーが商品を敬遠するおそれもあります。
インターネットによる拡散を考慮している点は、AISAS※に似ていると言えるでしょう。
※ユーザーの購買行動プロセスを体系化したフレームワーク。ユーザーの購買行動プロセスを以下の5段階に分類している。AIDMAと比較すると、インターネットによる検索と共有があることが異なる。
- A(Attention:注目)
- I(Interest:興味)
- S(Search:検索)
- A(Action:行動)
- S(Share:共有)
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ダブルファネル
ダブルファネルは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせた図式です。
近年、ユーザーはSNSでレビューを手軽に発信できるようになりました。投稿されたレビューは、他のユーザーが商品を購入前に比較・検討する材料として影響力を持っています。肯定的なレビューを増やし他のユーザーからの印象を改善するためには、商品購入後も含めて満足度を高めることが重要です。
購入後のフォローなど顧客ロイヤリティを高める施策を実施することで、積極的に情報発信をしてくれるファンを獲得できます。
ダブルファネルを用いて「商品の認知?ユーザーのファン化」というプロセスを分析することで、ファンを効果的に獲得する施策を立案できるでしょう。
獲得したファンが積極的に情報発信を行えば、コストを割かず効果的に自社サービスをアピールできるため新規ユーザーの獲得がより容易になります。
ファネル分析をマーケティングに活用するメリット
ファネル分析をマーケティング活用するメリットを3つ解説します。ファネル分析のメリットを活かすことで、マーケティングの効率性を向上できるでしょう。
優先して改善すべきポイントを特定できる
ファネル分析を活用することで、マーケティング活動において優先して改善すべきポイントを特定できます。
ファネル分析では、コンバージョン(あるいは情報発信)に至るまでの各プロセスにおけるユーザー数の推移がわかるため、「どの段階で離脱者が多いか」を把握できます。
離脱者の割合が多いプロセスを把握できれば、課題がある箇所を正しく判断し優先的に改善施策を検討することが可能です。
ファネル分析によって、優先して改善すべきポイントを特定した例は、以下の表のとおりです。
事象 | 商品の購入ボタンが存在するLPまで到達するユーザーは多いが、実際にボタンを押してCVするユーザーは少ない |
---|---|
改善ポイント | LPに問題があると考えられる |
考えられる改善策 | ・購買を促進する訴求を見直す(初回限定特典や送料無料など) ・購入ボタンを押してもらえるよう、ボタンの色やサイズ、ボタンの文言などを見直す |
解像度の高いペルソナを設定できる
ファネル分析を用いると、解像度の高いペルソナを設定できます。
ペルソナとは、「商品を買ってくれる人の多くは、「どちらの性別で」、「どこに住んでいるか」」など、ターゲットよりも詳細に人物像を設定しているものです。
昨今、ニーズが多様化して、ユーザーの特性を考慮して細やかな商品開発やマーケティングを行うことが、より求められています。
そのため、ペルソナを的確に設定することは、マーケティング活動において重要性が高まっているのです。
また、ファネル分析で消費者行動を分析することで、ユーザー心理の移り変わりを分析できます。
商品の認知から購入までのストーリーを、ファネル分析の各プロセスにあてはめ、ユーザー心理の移り変わりとすることで、より解像度の高いペルソナ設定が可能になるでしょう。
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結果的にCVRの改善につながる
ファネル分析を用いることで、結果的にCVRの改善にもつながります。
ファネル分析では、CVまでの各プロセスにおけるユーザー数の推移を可視化して把握できます。ユーザー数の推移を把握できるため、離脱者の多いボトルネックを特定し適切に改善施策を実行することが可能です。
例えば、下記のECサイトの事例において、各プロセスで残った人数をそれぞれ以下のとおりとします。
- サイト流入:1000人
- 商品ページ:800人(20%離脱)
- 商品カート:150人(81%離脱)
- 決済画面:120人(20%離脱)
- 注文完了:100人(16%離脱)
この場合、商品ページから商品カートで離脱するユーザーが多いため、興味・関心のプロセスに大きな課題があると思われます。
商品ページのコピーや、商品カートに進むボタンのデザインなどに問題ないか確認しましょう。
また、ペルソナ設定を的確に行うことで、消費者のニーズを正しく把握して適切なマーケティング施策を講じることが期待できます。
ファネル分析をマーケティングで活用する際の注意点
ファネル分析は、適切に行わないと十分な効果を得られません。ファネル分析をマーケティングで活用する際の注意点を3つ解説します。
ファネル分析では正確な分析が難しい商品も存在する
ファネル分析で仮定したユーザーの行動が、実際の流れとは大きく異なるケースもあります。実際の流れと大きく異なる場合、正確な分析は難しいかもしれません。
ファネル分析では、ユーザーの行動を購買(もしくは情報発信)まで一直線に向かうものと仮定しています。
しかし、実際の購買行動はキレイに一直線になるとは限らず、複雑になることも珍しくありません。
特にBtoCビジネスでは、SNSやスマートフォンの普及でさまざまな情報をユーザーが手に入れられるため、消費者の興味が移り変わりやすく購買行動が複雑になりがちです。
例えば、BtoCにおける以下の商品では、購入までに慎重にクチコミなどで情報収集を行う可能性が高いため、さまざまな商品をみて回った結果、CV直前に乗り換えることも多いでしょう。
- 自動車などの高額商品
- ダイエットジムなどSNSなどで数多く情報が出回って、購入前に慎重に比較検討されることが多いサービス
このような商品・サービスはファネル分析が不向きである可能性が高いと考えられます。
BtoBビジネスではまだまだファネル分析が有効な場面が多いとされています。
BtoBビジネスでは社内で稟議を行い規定のプロセスを踏んで購買まで至ることが基本です。担当者による即決ではないため時間はかかりますが、検討を重ねたうえで購入するため、一度決定すれば他社に興味が移る可能性はほとんどありません。
ユーザーの行動が購買まで一直線に向かう傾向が強く、ファネル分析が有効な場面が多いと考えられます。
そもそも商品のニーズがないと効果を発揮しない
ファネル分析は、そもそも商品のニーズがないと効果を発揮しません。商品のニーズ自体がないと、ファネル分析を行うまでもなく商品が売れないからです。
まずは、市場ニーズの調査を行い、そもそも商品に市場のニーズがあるか確認しましょう。
市場ニーズがなさそうであれば、必要に応じて商品を再定義して、市場のニーズを作り出しましょう。
例えば、これまでは観光客向けに高級タオルを販売していたものの、地元の方々向けに再定義したことで市場のニーズを開拓できた事例があります。
また、ニーズに合った商品やサービスを企画することも有効です。
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商品の購買プロセスに最も合致したファネルを使用する
ファネル分析においては、商品の購買プロセスに最も合致したファネルを使用しましょう。
なぜなら、マーケティングのフレームワークは、AIDMAやAISASなど、さまざまなものが存在する上に、商品によって分析に最適なプロセスも異なるからです。
よって、商品に応じたモデルを適用することが必要になります。
向いているファネル | 商品の例 |
---|---|
AIDMAを元にしたファネル | ・認知から購買まであまり時間をかけないと思われる商品(一般消費材など) ・慎重に情報収集して購入まで検討を重ねるケースが、あまりない商品(廉価な食品など) |
AISASを元にしたファネル | ・高額で類似商品も複数存在している商品(自動車など) ・SNSやインターネット上で情報が多数存在しており、比較が容易な商品(ダイエットジムなど) |
ファネル分析に役立つツール
ファネル分析に役立つツールを、3つ解説します。
エクセル
エクセルを用いた分析テンプレートや教材は多数存在しますが、ファネル分析のエクセルテンプレートやエクセル教材も多数存在しますので、探してみましょう。
アクセス解析ツール
アクセス解析ツールを用いるとサイトの訪問者数や閲覧数などを集計できるため、消費者の行動追跡や消費者心理の分析に有効です。
Googleアナリティクスなどが、代表的なアクセス解析ツールです。
MAツール
ファネル分析では膨大な量のデータ抽出や入力を行う必要があるため、マーケティング担当者へ大きな負担が発生します。
データの抽出や入力に手間がかかるうえに、入力間違いが発生すると正確なデータ分析もできません。
MAツールでは、データ抽出や入力を自動で実行できます。
手間をかけず早く正確にデータ分析をできるため、ファネル分析の精度向上が期待できるでしょう。
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ファネル分析の成功事例
ファッションブランドA社では、動画広告を通じて、今まで以上に幅広い層のユーザーを獲得したいと考えていました。
動画広告の成果を改善するためにファネル分析を取り入れ、消費者の行動プロセスを、「トップファネル」、「ミドルファネル」、「ロワーファネル」の3段階に分類して分析しました。
3段階の目的と、目的を達成するための動画の内容は、以下のとおりです。
ファネルの種類 | 動画の目的 | 動画の内容と種類 |
---|---|---|
トップファネル | ・ブランド認知度向上 ・リーチ拡大 |
【動画の内容】イメージ訴求 【動画の種類】短尺動画中心 |
ミドルファネル | ・ブランドの利点強調 ・より興味もってもらう |
【動画の内容】利用メリットの解説 【動画の種類】長尺動画と短尺動画併用 |
ロワーファネル | ・コンバージョン獲得 ・CTA配信 |
【動画の内容】無料送付や価格訴求などをアピール 【動画の種類】商品の静止画 |
ファネル分析を行って動画広告を改善した結果は、以下のとおりです。
<結果>
ROAS※1 | ファネル分析前の5倍向上 |
---|---|
1回の購入当たりコスト※2 | ファネル分析前の76.6%削減 |
CVR | ファネル分析前の2.2倍向上 |
※1:広告費1円あたりの売上額。広告の回収率を計算できる。
※2:商品が1回購入されるまでに費やされた、ネット広告などの費用
まとめ
ファネル分析とは、消費者の行動プロセスをファネル(ろうと)に見立てて、プロセスごとに分析する手法です。
パーチェスファネル、インフルエンスファネル、ダブルファネルの主に3種類があり、マーケティング活動における各プロセスの現状把握や改善に役立てられます。
ただ、商品ごとに分析に最適なファネルが存在することや、場合によってはファネル分析が効果を発揮しないこともあることには留意しなければなりません。
ファネル分析に役立つツールやファネル分析の成功例も、本記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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