パネル調査で対象者の変化を時系列で把握する|活用方法や問題点も解説

2023年11月24日

パネル調査で対象者の変化を時系列で把握する|活用方法や問題点も解説

パネル調査とは、同一の対象者に対し、同じ質問を一定期間内に何度も行う調査方法です。アンケート調査にはさまざまな手法がありますが、パネル調査は時系列で消費動向や販売推移などの変化を捉えるのに適しています。

本記事では、パネル調査の概要やメリット・デメリット、調査を成功させるためのヒントを解説します。

パネル調査とは一定期間に同じ対象に何度も同じ質問をする調査手法

パネル調査:同じ対象に同じ質問を定期的に何回も

パネル調査とは、同じ対象に対して、同じ質問を一定期間内に何度も行う調査方法です。調査のたびに回答対象者を募集するのではなく、調査対象を固定化(パネル化)することに大きな特徴があります。

同じ対象に同じ質問を何度も行うことから、消費動向や販売推移、消費者のメディア接触の傾向など、時系列で対象の変化を捉えることができます。パネル調査は時系列で分析を行うため、数ヶ月~数年間にわたって継続的に調査を行います。

パネル調査の目的

パネル調査の目的は、調査結果をもとにマーケティング戦略を練ることです。

設問によって収集できる情報は変わりますが、例えば購入頻度やブランドなどを質問すれば、買い替える際のスパンやブランドスイッチする人の割合など、市場動向を客観的に把握できます。そのため、裏付けのあるマーケティング戦略を立てることができます。

アドホック調査との違い

アドホック調査(単発調査)、パネル調査(継続調査)

アドホック調査とは、特定の目的のために、都度対象者を選定して実施する単発の調査です。調査の設計、実施、集計、分析が一度で完結します。

時系列での調査はできませんが、柔軟に調査設計ができるのが特徴で、パネル調査の過程で出た仮説をより深く検証したい場合などに有効です。調査設計について詳しく知りたい方は「市場調査の調査設計とは?方法とポイントを解説」をご覧ください。

トラッキング調査との違い

トラッキング調査:違う対象に同じ質問を定期的に何度も

トラッキング調査(ベンチマーク調査、追跡型調査)は、特定の条件を満たす同一の母集団から人数を選抜し、同一の調査内容を一定の間隔で繰り返す調査方法です。

トラッキング調査では、パネル調査同様、時系列に沿って変化を捉えることができますが、調査ごとに対象者を変える点で異なります。トラッキング調査の詳細は「トラッキング調査とは?調査の意味と目的をわかりやすく解説」で解説しています。

パネル調査のメリット

パネル調査を実施するメリットは2つあります。

  1. 時系列で対象者の変化を調査できる
  2. 対象者募集にかける手間や費用が少なく済む

1.時系列で対象者の変化を調査できる

単発の調査:曖昧な回答になる可能性も|パネル調査:精度の高い回答ができる!

パネル調査では、数ヶ月~数年の長い期間にわたって、継続的に調査を行います。そのため、単発調査では得られない、精度の高い時系列データを取得できます。

例えば、商品の購入頻度を知りたい場合、単発調査でも「前回同様の商品を購入したのはいつですか?」といったアンケートで回答を集めることができます。しかし、過去になればなるほど記憶が曖昧になったり覚えていなかったりするため、正確なデータを取るのが難しくなります。

その反面、パネル調査では「現在」にフォーカスした精度の高い情報を得ながら、時系列で比較することができます。

時系列データについて詳しく知りたい方は「時系列分析で将来を予測する|時系列データを意思決定に活かす方法」をご覧ください。

2.対象者募集にかける手間や費用が少なく済む

単発の調査:調査のたびに募集が必要|パネル調査:募集は最初の1回のみ

調査を実施するときに大変なポイントの一つが、調査対象者を集めることです。

単発調査を実施する場合、調査のたびに対象者の募集や、基本情報の取得が必要になります。しかしパネル調査では、原則同じ対象者に調査を行うため、対象者の募集は調査開始時だけです。何度も募集をかけずに済むため、手間や費用を抑えられます。

パネル調査のデメリット

パネル調査にはデメリットもあります。

  1. 回収数を多めに確保する必要がある
  2. 単発調査よりも時間やコストが必要になる

1.回収数を多めに確保する必要がある

単発調査:離脱は少ないので予備は最小限でよい|パネル調査:調査期間の離脱に備えて回答者を多めに確保する必要あり

パネル調査は性質上、調査期間が数ヶ月~数年の長期に及びます。アンケートに協力する回答者の負担が大きく、単発調査と比べると途中離脱者が多く発生しがちです。あらかじめ途中離脱を見越して必要数よりも多くの対象者を確保しておかなければならず、そのためのコストが増えてしまうデメリットがあります。

2.単発調査よりも時間やコストが必要になる

単発調査:1度で調査完了|パネル調査:時間とコストがかかる

単発調査の場合、1回の調査ごとに完結します。しかしパネル調査は対象者の動向を継続して調査するため、時間とコストがかかります。短いトレンドに左右されないような中長期的な示唆を得ようとするほど、時間もコストも増える点には注意が必要です。

パネル調査のマーケティング活用方法

パネル調査の調査結果はどのように活用できるのか、本章では具体的な活用方法をご紹介します。

マーケティング戦略立案に活かす

マーケティングで重要なのは、ターゲットにどのような商品・サービスを、どのような価格で、どのように提供するのかを明確にすることです。

パネル調査では継続的な調査を行うため、一定期間内のデータの推移を見ることができます。ターゲットの行動や性質の変化を知ることが可能なため、特定時期に合わせたマーケティング戦略の立案に有効活用できます。

マーケティングについて、「マーケティングとは?定義や戦略のコツ、活用できる分析手法を解説」でも詳しく解説していますのでご覧ください。

開発計画の立案に活かす

商品開発でも、パネル調査の結果は有用です。

パネル調査で、消費者が商品を買い替えるタイミングやスパンを把握できれば、新製品やモデルチェンジを発表すべきタイミングを知ることができます。また、消費者が買い替えを検討するであろうタイミングから逆算して開発の計画を立てれば、より効果的な売出しや訴求に合わせた製品開発も実現します。

商品開発について詳しく知りたい方は「商品開発の流れとは?成功事例や分析手法を詳しく解説」も参考にしてください。

広報活動に活かす

パネル調査で自社商品への評価を把握することで、商品の広報活動を行う際のセールスポイントが明確になります。パネル調査結果によっては、自社が思う強みと、市場が考える強みの違いが明らかになることもあるかもしれません。

パネル調査を成功させるためのヒント

マーケティング戦略の立案から広報活動まで、ビジネスの多くの場面で有効なパネル調査について、最後に、調査を成功させるためのヒントを2つ解説します。

回答者の途中離脱を防ぐ工夫をする

デメリットでも挙げた通り、パネル調査は長期間にわたって同じ対象者に調査を行う性質上、回答者の負担が大きくなりがちです。そのため、あらかじめ回答者の途中離脱が生じることを想定したうえで、対象者を募集することが必要です。また、調査設計を行う際には、可能な限り回答者負担が減るように設問内容や設問数を調整したり、謝礼の支払い方を工夫したりするなど、離脱の抑止対策を考えることが重要です。

回答者の質を見きわめる

パネル調査は、同じ対象に同じ質問を何度も行います。そのため、最初に選んだ対象者の中にいい加減な回答をする人や虚偽の回答をする人がいると、調査結果の質が低下する可能性があります。

とはいえ、調査対象者の質の見きわめは非常に難しく、大きな企業でも調査設計は内製化して、リクルーティングは調査会社に依頼する場合があります。

まとめ|パネル調査はさまざまなマーケティング施策に活用できる

パネル調査は、同じ対象に同じ質問を、一定期間のあいだに何回も行う調査方法です。単発調査では得られない、時系列で精度の高いデータを取得できることが、パネル調査の大きなメリットです。

回答者の負担が増えるため、調査期間内の離脱に備えて調査対象者を多めに確保しておく必要がありますが、調査で得られた結果は、マーケティング戦略立案や商品開発、広報活動など、幅広い場面に役立てることができます。

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よくある質問

Q1.パネル調査のメリットは?

パネル調査のメリットは、以下の2つです。

  • 時系列で対象者の変化を調査できる
  • 対象者募集にかける手間や費用が少なく済む

詳しくは「パネル調査のメリット」をご覧ください。

Q2.パネル調査の結果は、マーケティングでどう活用できる?

パネル調査は、ビジネスのさまざまなシーンで活用できます。

  • マーケティング戦略立案に活かす
  • 開発計画の立案に活かす
  • 広報活動に活かす

詳しくは「パネル調査のマーケティング活用方法」をご覧ください。

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