マーケティングとは?定義や戦略のコツ、活用できる分析手法を解説
2022年08月05日
マーケティングは企業の利益を生み出すために欠かせない活動で、商品やサービスが売れる仕組みを作るための施策を指します。
マーケティングの流れを理解し、市場調査や広告宣伝、効果検証を適切に実施することが重要です。タイミングに合わせ最適な戦略を実施することで、高い効果を期待できます。
本記事ではマーケティングの定義や目的、活用できる分析手法、マーケティング戦略を成功させるポイントを解説します。
マーケティングとは
まずはマーケティングの定義と目的について確認しましょう。
マーケティングの定義
マーケティングとは、サービスが自然と売れる仕組みを作る活動を指します。マーケティングでは、広告や販売促進、顧客リサーチなど、サービスを売るための活動を包括して示すことが一般的です。
例えば、市場調査から商品開発、戦略策定、広告宣伝効果検証など、一連の活動をマーケティングと表現します。一連の流れをマーケティングとして捉え、リサーチをもとにターゲットが欲している商品やサービスを開発し、求める人へ適切に届くよう設計することが重要です。
マーケティングを実施する目的
自社サービスの効果的な販売には「どのような価値を市場のターゲットに販売するか」を定めることが重要です。顧客のニーズを把握したうえで、ターゲットにサービスの価値を理解してもらい、自然と売れる状態を作り上げることがマーケティングの目的と言えます。
顧客ニーズを把握する際には、マーケティングリサーチが必要です。マーケティングリサーチでは市場調査を通じて情報を収集し分析できるため、具体的な戦略の策定に役立ちます。
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マーケティング戦略のプロセス
「市場の分析~施策の効果検証」における一連の流れを、マーケティング戦略と呼びます。マーケティング戦略には、大別して以下3つのプロセスがあります。
- 環境分析の実施
- 基本戦略の策定
- 施策の立案・実施
自社サービスが効果的に売れる仕組みを作るには、営業戦略だけでなくコンセプト設計やアフターフォローも含め、顧客への一貫したサービス提供が重要です。
【プロセス1】環境分析の実施
マーケティングを実施するうえでは環境分析が欠かせません。環境分析を実施することで、ターゲット層のボリュームや市場の将来性、競合の脅威、自社の強み・弱みを判断し、マーケティング戦略の立案に役立てられます。
プロセス1では、外部環境・内部環境の両方を分析することが重要です。以下の分析手法を活用することで、外部環境・内部環境を把握できます。
◆環境分析で活用できる分析手法
- PEST分析
- 3C分析
- 5F分析
- SWOT分析
PEST分析
PEST分析とは、外部環境を「政治・経済・社会・技術」の4つの要因に分類し、自社に与える影響を読み解く分析手法です。
◆PEST分析の要素
- 政治的要因
- 税制の変化や法改正、規制緩和などの政治的動向
- 経済的要因
- 株価や金利、賃金動向などの経済的動向
- 社会的要因
- 流行やライフスタイルの変化や人口動態、少子高齢化などの社会的動向
- 技術的要因
- AIや機械学習、ブロックチェーン技術などの技術的動向
PEST分析では、社会の変化や技術革新など、自社での制御が難しいマクロ環境を分析します。マクロ環境を把握することで、市場の将来性など大きな視点を考慮したうえで、具体的なマーケティング戦略の立案に活用できます。
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3C分析
3C分析とは、「Customer(顧客・市場)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」という3つの観点から、自社を取り巻く環境を分析する手法です。
◆3C分析の要素
- 顧客・市場
- 顧客のニーズや具体的なターゲットの特徴などを分析する
- 競合
- 競合の強み・弱みや市場のシェア、売上高、世間からの評価などを分析する
- 自社
- 自社の強み・弱みや世間からの評価などを分析する
各指標を分析し3C同士の関係性を明確にすることで、成功要因(Key Success Factor:KSF)を見つけ、自社の事業が取り組むべきマーケティング施策の方向性を発見できます。
5F分析
5F分析とは、外部環境を以下5つの競争要因ごとに分析する手法です。
◆5F分析の要素
- 競合他社の脅威
- 競合他社との間に発生している競争
- 代替品の脅威
- 自社製品やサービスのニーズを満たせる代替品の存在
- 新規参入者の脅威
- 参入ハードルの低さによる障壁
- 買い手の交渉力
- 自社商品の買い手が持つ交渉力の強さ
- 売り手の交渉力
- 自社の仕入れ先が持つ交渉力の強さ
自社の脅威を把握することで、市場の収益構造や自社の収益性、競合優位性を分析し、対処するための具体的なマーケティング戦略を策定できます。5F分析では、自社にとっての脅威だけでなく「市場におけるチャンス(機会)」も把握可能です。
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SWOT分析
SWOT分析とは、以下4つの要素について市場を分析し、マーケティング戦略の立案に役立てる手法です。
◆SWOT分析の要素
- Strength(強み)
- 自社の技術力やノウハウ、ブランド認知度など、利益向上にプラスの影響を与える経営資源や武器
- Weakness(弱み)
- 設備不足やクレームの多い項目など、利益に対してマイナスの影響を与える経営資源等
- Opportunity(機会)
- 市場拡大や競合優位性の確保など、外部環境の中で自社の利益向上にプラスの影響を与える要素
- Threat(脅威)
- 市場や政治、流通の状態など、外部環境において自社が制御できないマイナスの要素
SWOT分析では、上記4要素を「縦軸:内部環境・外部環境」「横軸:プラス要因・マイナス要因」として分析します。
SWOT分析は、環境分析に活用できるその他の手法(PEST分析や3C分析、5F分析など)と比較してシンプルなため、具体的な施策に落とし込んで取り組みやすいです。
SWOT分析の派生である「クロスSWOT分析」では、4要素をそれぞれかけ合わせ4つの戦略を検討する際に役立ちます。
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【プロセス2】基本戦略の策定
環境分析を活用して自社が狙う市場を定めた後は、基本戦略を策定します。基本戦略の策定では、市場内における自社の立ち位置(ポジショニング)を決定したうえで、アプローチするターゲットを選定することが重要です。
ポジショニングやターゲット選定には、以下の分析手法が活用できます。
◆基本戦略の策定に活用できる分析手法
- STP分析
- 6R
- クラスター分析
STP分析
STP分析とは、市場を特定の属性に分類しアプローチするターゲットを決定したうえで、市場における自社の立ち位置を定める手法です。
SWOT分析の派生である「クロスSWOT分析」では、4要素をそれぞれかけ合わせ4つの戦略を検討する際に役立ちます。
市場を特定の属性に分類する際の軸としては、「心理的属性・人口統計的属性・行動的属性・地理的属性」があります。セグメンテーションの際は、性別・年齢・住所などのデモグラフィック特性だけでなく、顧客の価値観や購買意欲などのサイコグラフィック特性も活用することが重要です。
セグメンテーションによって市場を細分化したら、自社がアプローチするターゲットを策定します。ターゲティングの際は、消費者インサイト(顧客自身も言語化できていない欲求)を突き詰めることが大切です。消費者インサイトまで思いを巡らせることで、顧客が本当に求めるサービスの開発に役立ちます。
設定したターゲットをもとに、自社のポジショニングを決定します。ポジショニングを確立する際は、市場内外の競合分析結果をもとにサービスの差別化を図り、ターゲット認知から購入につながる流れを構築することが重要です。
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6R
6Rとは、ターゲティングを実施する際の留意点を指しており、STP分析においてターゲット選定を行う際に活用されています。
◆6Rの要素
- 成長性(Rate of Growth):成長の見込める市場か
- 有効な市場規模(Realistic Scale):市場規模はどのくらいか
- 競合の状態(Rival):競合他社の状況はどうか
- 到達可能性(Reach):ターゲットにサービスを届けられるか
- 顧客の優先順位・波及効果(Rank/Ripple Effect):市場の優先度は高いか
- 反応の測定(Response):ターゲットの反応を測定できるか
6つのRを考慮してターゲットを選定することで、市場の状態やボリューム、成長性などを加味して適切なマーケティング戦略を立案できます。
クラスター分析
クラスター分析とは、集計したデータ全体の中から、似たもの同士をグループ分けする手法です。年齢・性別・地域などのデモグラフィックデータだけでなく、企業イメージやターゲットの価値観などサイコグラフィックデータにも活用できます。
データから似た傾向を持つ要素同士で分類できるため、顧客やターゲット、商圏のセグメンテーション、ポジショニング分析に活かすことができます。
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【プロセス3】施策の立案・実施
ターゲット選定後は、具体的なマーケティング施策を立案します。マーケティング戦略立案においては、複数施策の要素を組み合わせた「4P」を活用することが多いです。ただし近年では、4Pを顧客視点に再定義した「4C」が主流になりつつあります。
4P・4C
4Pとは、商品開発や販売に関わる要素を「商品・価格・流通・販促」の4つに分類したマーケティング理論です。
◆4Pの要素
- 商品(Product):何を売るのか、どのように他社と差別化するのか
- 価格(Price):いくらで売るか
- 流通(Place):どのチャネルで提供するか
- 販促(Promotion):どのように商品を販促するか
4Pでは、売り手側の視点でマーケティング施策を実行することが主流でした。
しかし、市場に競合他社が増え顧客の選択肢も広まったことで、より顧客のニーズや購買行動に沿ったマーケティング施策を実施する重要性が増しています。
上記の状況を踏まえ、顧客視点で再定義された手法が「4C」です。
◆4C(顧客視点)の要素
- 商品→顧客価値
- 価格→顧客から見た適正価格
- 流通→利便性
- 販促→コミュニケーション
4Cを活用することで、顧客視点に立ったうえで新商品開発や競合分析を実施できます。
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マーケティングリサーチの活用
上記マーケティング戦略のプロセスを辿るうえで、実際の分析に活用できるリサーチ方法としては以下が挙げられます。
- ネットリサーチ
- パネル調査
- グループインタビュー
- デプスインタビュー
- エスノグラフィー調査
- ホームユーステスト
- 会場調査
ネットリサーチ
ネットリサーチとは、ウェブ上で条件の合う対象者にアンケートに回答してもらいデータを収集する方法です。ネットリサーチは、他の定量調査と比較して費用が安く準備の手間も少ないため、マーケティングリサーチ方法として主流になっています。
ネットリサーチでは、調査目的を明確にすることが重要です。調査目的を明確にすることで、自社の課題に対して「誰に何を聞くと解決できるか」がわかります。
調査票の精度もネットリサーチの成果に影響を与えます。「漏れなくダブりなく質問を設定している」「曖昧な表現をなくす」「回答者の前提知識が考慮されている」などを意識して調査票を作成しましょう。
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パネル調査
パネル調査とは、同じ対象者に対して同じ質問を一定期間内に何度も実施する手法です。調査対象を固定化(パネル化)して同じ調査を繰り返すことで、消費動向や販売推移、消費者のメディア接触の傾向といった、時系列による変化を正確に捉えられます。
パネル調査では複数の項目を質問できるため、マーケティング戦略の立案に関わる項目を聞き取ることが重要です。例えば「冷蔵庫に関する消費動向」を調査した場合、家電の買い替えスパンやブランドを変える顧客の割合などの情報がマーケティング戦略に直結します。
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グループインタビュー
グループインタビューとは、調査対象者に座談会形式で特定のテーマについて話し合ってもらい、意見やアイデアを収集する方法です。
自由に発言してもらえるため、ネットリサーチではわからなかった顧客の本音や価値観を深掘りできます。複数人で話し合うことで、参加者自身も気付かなかった潜在的なアイデアを発見できることもあるでしょう。
グループインタビューで活発な議論を促すためには、ひとつのグループ内を同じ属性同士の対象者でまとめることが大切です。グループ内の属性を揃えることで、近い前提知識を持つ対象者同士で深い議論に発展することが期待できます。
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デプスインタビュー
デプスインタビューとは、1対1の面談形式で長時間にわたりじっくり意見を聞き取る調査方法です。
デプスインタビューは1対1で質問できるため、既存商品の改善点や他者には聞かれたくないデリケートなテーマについても深掘りできます。グループインタビューよりも、消費者の深層心理に迫れるというのが大きなメリットです。
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エスノグラフィー調査
エスノグラフィー調査(行動観察調査)とは、対象と一定期間生活を共にし、顧客の普段の行動や価値観を観察する定性調査の手法です。
アンケートやインタビューとは異なり普段の行動を観察できるため、顧客の深層心理や言語化されていない潜在ニーズを把握する際に役立ちます。顧客の本音を引き出せるため、サービス開発やコンセプト設計時に有用です。
商品のリアルな活用方法も知れるので、自社では想定していなかった利用シーンを把握したうえでサービス改善にも役立ちます。
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ホームユーステスト
ホームユーステスト(HUT)とは、対象者の自宅にテスト製品を郵送し実際に利用してもらい、リアルな感想や意見を聞き取る調査方法です。自宅で使用してもらうため、実生活での感覚に近づけた対象者のリアルな感想を集計できます。
実生活に近い環境で製品を使用するので、結果を分析して製品開発・改良に役立つだけでなく、商品の魅力を知ってもらい顧客獲得にもつながるでしょう。
化粧品や家電製品の使い勝手など、一定の使用期間を設けることで正確なデータを集計したい商品に対しても有効的です。
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会場調査
会場調査とは、一定の人数を特定の場所(自社オフィスや特設会場など)に集めて実施する調査手法です。HUTと同じように試供品やプロトタイプを使用してもらい感想を集計したり、広告を見た際の反応を確認したりすることでデータを収集します。
すべての対象者に同一条件で商品を試用してもらえるため、想定外の使い方によるバイアスを排除できます。
ただし、実生活の環境とは異なる条件で調査するため、対象者がリラックスできずリアルな状況下でのリサーチとは違うデータが集計される可能性もあるため要注意です。
マーケティング戦略を成功させるポイント
マーケティング戦略を成功に導くには、以下の点を意識してマーケティングリサーチを実施することが重要です。
- 全社で連携して施策を実施する
- 実行した施策の比較検証を行う
- 顧客ロイヤリティを高めることを意識する
全社で連携して施策を実施する
マーケティング施策を実施する際は「調査~戦略実施後の効果検証」までを一貫した戦略として捉えることが重要です。
一貫した戦略として扱うためには、調査から効果検証までの一連の流れに対して、マーケティング以外の営業や開発といった他部署の関わりも必要になります。
例えば、マーケティングリサーチの結果を正しく商品に反映させるには、開発部署と連携して調査結果を正確に共有し、認識のズレを排除することが必須です。
マーケティング部署の働きだけでは戦略を正しく実行できないため、効果的な施策を実施するためにも、全社で調査データを共有し「コンセプトの打ち出し方」「開発部署への改善要求」などを考えましょう。
実行した施策の比較検証を行う
効果的に売り上げを作る施策を見極めるためにも、定期的なマーケティング戦略の見直しが大切です。特定の戦略だけを実施すると別施策との比較検討ができないため、高い効果を持つ施策を見逃すかもしれません。
実行したマーケティング戦略で効果が出なかったとしても、施策の集計データを自社内に蓄積できるため、別戦略の策定に活かせる可能性があります。
売上などをもとにマーケティング戦略の効果を比較検証する際は、ギャップ分析の活用が有効的です。ギャップ分析では、理想と現実の間にある差異を分析することで、課題の解消に必要な項目を洗い出して自社が取るべき方針を抽出できます。
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顧客ロイヤリティを高めることを意識する
顧客との関係を強化して継続的なサービス利用を促すには、顧客ロイヤリティの向上が重要です。顧客ロイヤリティを高め自社サービスのファンにすることでLTV(ライフタイムバリュー)向上につながり、新規顧客の獲得よりも低コストで次の購入を促せます。
顧客ロイヤリティを高めるには、以下のような施策を実施して満足度を改善することが重要です。
◆顧客ロイヤリティを高める施策の例
- 問い合わせ窓口の設置
- メールや電話サポート
- 自社メディアでの情報発信
- メルマガ配信
- クーポンの配信
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LTV(ライフタイムバリュー)とは?計算方法やLTVの向上方法を解説
まとめ
マーケティング活動においては、商品が自然と売れる仕組みを作ることが重要です。市場のリサーチから施策の効果検証までを一貫した流れとして捉えることで、自社のターゲットが求めるサービスを提供できるようになります。
今回紹介した戦略の流れやリサーチ方法を駆使し、自社の売り上げを最大限伸ばすためのマーケティング活動に取り組みましょう。
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